斎藤秀俊の眼

科学技術分野と水難救助、あるいは社会全般に関する様々な事象を一個人の眼で吟味していきます。

緊急提言

2013年05月26日 11時51分53秒 | 水難・ういてまて
ルージングライフ××なんでしょうか。

あるクイズ番組で、「川に流された人を発見したら、川に入って救助する」と解説があったようです。ホームページに明確に出ています。そういった出鱈目が検証されないで、報道されること自体が怖いことです。この出鱈目を信じて実行した人が亡くなったら、解説者あるいは報道機関はどう責任をとるのでしょうか。責任の取り方などないですね。

まさかとは思いますが、放映が5月24日夜で、岡山での川で小学3年の女の子が亡くなり弟が助かった水難がおきたのが5月25日。

これまで、人を救助しようとして入水して、たくさんの方が命を落としています。
http://hts.nagaokaut.ac.jp/survival/propose9.htm

河川等では、多くの子どもたちが大切な兄弟や友達を助けようとして亡くなっています。
原因は、沈水です。一人目の溺水原因で、二人目も溺れます。三人目の犠牲者すらいます。
木曽川水難
明石ため池水難

いつもの通り、水難を見たらすぐに119番通報。浮いて救助を待っていたら、浮き具になるものを陸上から渡す。
釣具救助が効果的です。

番組に助言した方は研究者のようですが、ほんとうに、「川に流された人を発見したら、川に入って救助する」と助言したのでしょうか?本人とディレクターとの間で行き違いがなかったか心配です。他に正しい解答があったので、テレビの前でびっくりした人がいたようです。テレビの前で、どれくらいの数の人がどのように非難したか、想像すると恐ろしいと思うので、研究者はいつも慎重に慎重を期して発言するものです。

研究者であれば自分で検証して、社会の出来事を詳細に調べて、多くの人と議論して、それから解説するのが筋です。研究者とはそういうものです。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

岡山の水難に関連して

2013年05月26日 07時43分17秒 | 水難・ういてまて
昨日、午後3時40分ごろ、岡山市北区の旭川で子どもが2人おぼれた、と通報があり、結果的にそのうち小学3年の女児が亡くなったようです。たいへんお気の毒です。

子どもが複数犠牲になる水難の原因に沈水があります。沈水とは、背が届く水底を歩いていたときに、急に深くなっている場所に落ちこみ溺れる現象です。水に陸から転落する落水とあわせて、溺水の2大原因のひとつです。

http://hts.nagaokaut.ac.jp/survival/river.htm

の、下方のビデオ「ライフジャケットなし篇」の冒頭がそれにあたります。人間は急な深みにはまると、体を垂直にして、スッと沈み、着衣泳ができないと、そのまま浮いてきません。近くの人が「どうしたんだろう」と近づくと同じようにして次々に沈みます。そして、複数の人がほぼ同時に溺れます。

沈水の初期を注意してみてください。反動で両手が上がっています。こうなると人間は腕の重みで沈み、水中で最後の呼気をしてさらに沈み、吸気をしようとした瞬間に窒息して、意識障害に至ります。この状態では肺に空気が残っていないので、体のかさ比重は1を超えて、浮いてきません。

水難学会ではこのような検証を繰り返し、根拠のあるデータで水難の真実に迫り、それを「浮いて待て」という技術にまとめています。かなしい水難がくり返されないよう、報道各社の番組・記事編成に期待します。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする