三浦俊彦@goo@anthropicworld

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オトイアワセ:
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2005/1/17

2000-01-29 03:12:40 | 映示作品データ

■THE WORLD AT WAR  ヒストリー・チャンネル 1973年:イギリス
 第22話(全26話中):JAPAN   一億玉砕・日本銃後の記録

 第二次世界大戦の主要参戦国5ヵ国(アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、ソ連)の関係者へのインタビューと、ドキュメンタリーフィルムを組み合わせた傑作。
 10/18に観たアメリカの『汝の敵、日本を知れ』(1945)と比べると興味深い。

 ナレーションに述べられていたように、太平洋戦争は、日本が、それまで10年間も続いていた日中戦争の泥沼を打開するための賭けだったと言える。ちょうどヨーロッパで、対イギリス戦に難航していたドイツが対ソ戦争を始めたのに似ている。
 日中戦争は、第二次世界大戦の開始前から漫然と続いていたので、真珠湾攻撃後に第二次大戦に組み込まれたあとも、往々にして無視されやすい。THE WORLD AT WARでは、日中戦争と太平洋戦争の接点であるビルマ戦線(中国軍・イギリス軍・インド軍・アメリカ軍が日本軍と戦った)について第14話まるまる1回を費やして報道しており、貴重である。その他にも、緒戦の日本軍によるオーストラリア爆撃や、戦後の東南アジアで、連合軍の命令により日本軍戦車が警察代わりに治安維持を行っている光景など、珍しい映像を見ることができる。

 日中戦争については、中国の映画やドラマは概して、芸術表現よりも反日的な定型表現による政治的制作を続けてきたと言えるが、近年、かなり様子が変わってきている。
 ■『鬼が来た!』は、日中戦争を題材としながらも実質はナンセンス映画と言える作品で、政治性よりも芸術性が濃い。しかしコメディタッチがいつのまにかシリアスな惨劇へ落ち込んでゆく流れは紛れもなく戦争映画。日本軍降伏後のラストシーン(中国軍司令官の演説シーン)には、戦争の不条理を社会風刺まじえて描写したかなり戦略的な手法が使われている。

2005/1/10

2000-01-28 03:09:30 | 映示作品データ
■『鬼が来た!』   2000年 中国
           監督:姜文
           2000年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞

 ★この映画については、主演の香川照之著のこの本がおすすめ。

香川照之『中国魅録――「鬼が来た!」撮影日記』キネマ旬報社


 ★日中戦争についての基礎知識を得るには、次の2冊がおすすめです。

森山康平『ふくろうの本 図説 日中戦争』河出書房新社
三野正洋『わかりやすい日中戦争――祖父や父たちが戦った隣国との戦争』光人社

 ★周辺事情(満州、日ソ関係を含む日中関係)については以下の3冊がおすすめ。

太平洋戦争研究会『ふくろうの本 図説 満州帝国』河出書房新社
ボリス・スラヴィンスキー『日ソ戦争への道――ノモンハンから千島占領まで』共同通信社
徐焔『一九四五年 満州進軍――日ソ戦と毛沢東の戦略』三五館


なお、この映画のプチレビューは、(ふざけた文体のように見えたら申し訳ないが)すでにここに書いておきました↓。
http://green.ap.teacup.com/miurat/536.html

2005/12/20

2000-01-27 22:48:30 | 映示作品データ

 ■ローザス ファーズ・ザ・フィルム
     ROSAS FASE THE FILM

ベルギーのダンス集団、ローザスによる「アート・ドキュメンタリー」フィルム。

2002年 ベルギー
監督:ティエリー・ドゥ・メイ Thierry De Mey
振付、ダンス:アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル
ダンス:ミシェル・アンヌ・ドゥ・メイ Michele Anee De Mey(監督の妹)
音楽:スティーブ・ライヒ Steve Reich

Piano Phase (1967)
Come Out (1966)
Violin Phase (1967)
Clapping Music  (1972)

 音楽の構造をそのまま形に表わした、肉体と影のシンクロに注意。ズレと反復。
 舞台公演では不可能な、視点(カメラ位置)の絶妙な移動。

 Piano Phaseは、ミニマル・ミュージック史上最初期に位置する、しかも最も有名な曲ですが、馴染みのない人のために、まずはじめに、マリンバでのスローテンポ・アレンジ版を聴いてもらい、続いて、アップテンポのオリジナル版で映像を観ていただきましょう。

  ★レポートの提出要領については、↓「コメント」をクリックしてください。
  質問等があれば、コメントに投稿してください。

2005/12/13

2000-01-26 01:46:02 | 映示作品データ
■『ミート・ザ・フィーブルズ 怒りのヒポポタマス』
 Meet the Feebles
 ニュージーランド 1989年
 監督:Peter Jackson ピーター・ジャクソン

 ショーがTV生放送されることになったフィーブルズ劇団は、いよいよビッグなメジャーデビューの予感。(このあたり、後に『さまよう魂たち』1996でハリウッドデビューし、『ロード・オブ・ザ・リング』でブレイク、今『キング・コング』ですっかり人気監督となったピーター・ジャクソン自身のメジャー化と重なる)。しかし劇団のメンバーはみな問題を抱えている。スター歌手のカバは過食症で太り、ステージに上がれなくなる寸前。恋人で劇団のオーナーであるセイウチがシャム猫と浮気していることを知ってカバ嬢は逆上。彼女の怒りが頂点に達するまでを描く。
 その他の劇団メンバーとその周辺も問題だらけ。セイウチは暗黒街ギャングのイノシシとドラッグ取引でもめており、SMポルノ映画制作もやっている。ディレクターのキツネは神経がイカれ、ゾウは別れた恋人であるニワトリに子どもの認知を迫られて逃げ回っている(赤ん坊の姿に注目!)。人気男優のウサギは性病に冒され、新聞記者(パパラッチ)のハエが劇団内のスキャンダルを嗅ぎまわる。座長のイモムシが揉め事を収めようと奮闘。その他いろいろなドラマが同時進行するが、メインはカバ/セイウチのカップルを襲うトラブル。準メインとしてハリネズミとプードルの純愛も最後まで描かれる。
 なお、わかりづらいかもしれないのは、ナイフ投げのカエルか。カエルはベトナム帰還兵で、戦争体験の精神的トラウマから薬物中毒になっている。確かにベトナム戦争にはニュージーランドからの兵士が送り込まれた。アメリカにとって第二次大戦後最大のトラウマになっているベトナム戦争をテーマに採り入れているあたり、ハリウッド進出を狙うピーター・ジャクソンの野心が見える気がする。北ベトナム兵のネズミ(?)たちにつかまってロシアン・ルーレットをさせられる場面は、ベトナム戦争体験を描いた1978年のアメリカ映画『ディア・ハンター』をもじっている。ピストルを使ったロシアン・ルーレットというゲーム(賭け)については見ての通りですが、興味のある人はネットなどで調べてください。
 いずれにしても、エログロの極致のように評されているこの映画、商業化する前のピーター・ジャクソン初期の傑作という点で歴史的にも興味深い。また、見かけは子ども向け番組(セサミ・ストリート?)のようなかわいい着ぐるみやマペットたちが、内容的には大人も顔をそむけたくなるエロとグロをやり放題。このギャップが、不思議な芸術的効果を醸し出す。しかしここまでやられるとグロもかえって爽やかでしょう。生身の人間は不在だし。ラストの独唱へつづく展開はなかなかドラマチックで感動的、ラストのドキュメンタリータッチな後日談とエンディングロール但し書きにも注目。真面目にふざけるにもほどがある!
 映倫の15R、18R指定などはありませんが、子どもには見せられない映画ですね。スカトロ的な場面は子どもは喜ぶでしょうが。ともあれ、芸術的に高度なスプラッター人形劇。

2005/12/6

2000-01-25 02:51:18 | 映示作品データ
 ★これからの予定★

 ●12/6 ヤン・シュヴァンクマイエル短編
      「部屋」(1968)
      「対話の可能性」三部作(1982)
      「フード」三部作(1992)
      「スターリン主義の死」(1990)

 ●12/13 『ミート・ザ・フィーブルズ 怒りのヒポポタマス』Meet the Feebles(1989)
      『ロード・オブ・ザ・リング』『キング・コング』で、ハリウッドの最もメジャーな映画監督になったピーター・ジャクソンが、ニュージーランド時代にどんな映画を撮っていたか、その代表的傑作。

 ●12/20 『ローザス ファーズ・ザ・フィルム』(2002)
   ベルギーのダンス集団、ローザスによる「アート・ドキュメンタリー」フィルム。音楽に注目。ミニマルミュージックの大御所、スティーブ・ライヒの初期傑作4曲に合わせて女性二人が踊る。カメラワークにも注目。

 ●1/10 『鬼が来た!』(2000)監督 姜文 チアン・ウェンJian Wen
 中国映画。日中戦争末期の悲劇を描く。戦闘場面はナシ。日本によって中国人が被った災難と、日本軍の実態がよく描写されている。

 ●1/17 『鬼が来た!』(2000)後半上映

 ●1/24 まとめ