■パラサイト 殺人寄生虫■ 人格変容を伴わないただの腹中生育タイプってことで、パラサイト要素はさほど効いちゃいないんだけど、襲撃逃れてああ一安心、搬送先の病院ベッドでグワワーッ、バリバリバリ、ってパラサイトならではの恐怖感が正攻法で生かされちゃぁいます。てかこの作品、十分合格点行ってますわ。狂牛病ブームに乗っかった町民間の醜い争いごとなんぞに時間かけるんじゃあるまいなと心配しかけたらさほどでもなくパラサイト定位で終始してくれたし。マ、そりゃビジュアル的にいまいち決め手の無さが物足りなくはあるものの、ポイントは押さえてて、なにしろ影の使い方が全般うまいというか、ホラーをしっかり名乗れる仕上がりになっておる。モンスターがあんなウヨウヨ大量発生しちゃっちゃあ、いくら食肉の町の利益を守れ(お約束)つっても警察はおろか軍隊が出動しないのは不自然っちゃあ不自然なんですけどね。保安官含めて個人単位で対処しちゃってるし。さっき決め手がどうって言ったのはたとえば半裸のおねーちゃんが彼氏見捨てて逃げてくのを追いすがるパラサイトをせっかくほら、地べた目線良アングルで撮っときながら追いつく前に場面切り替わりじゃんよ。ありゃないよ。ずっと後になって死体の一部だけ見せられてもねえ。でもまあ、パラサイトたちったら銃弾一発ではじけ飛ぶ脆さのかわりコウモリなのかナメクジなのかカブトガニなのかはっきりしてよ的に造形曖昧におっかないナイスぶり(なにしろ方向不定に飛ぶし!)で基本的にゃ嬉しかったですよ。主人公らの警戒をかいくぐって天井を這うシーンとか、そもそも始めの血のしずく吸ってチョイでかくなるとことか、人体内でもっかいでかくなるとことか、一つ一つの画像が丁寧に作られてましたわ。このくらいいってたら俺満足っす。ラストもお約束のチラリズムあえてやらんでそれっぽい音楽盛り上げだけで抑えたのもニクイしね。
■アナザヘヴン■ ああいう犯罪マニアの盗聴小僧ってほんとにいるんですか? でそれ上がりの刑事なんてのも? 終盤になって、そ、あのストーカーねーちゃんの頬っぺたにポタッと垂れたあたりから、ようやく本格モンスター映画っぽくなってくれました。けどいかんせんその時間が短し。なんでわざわざ女医さんの豪邸に行ったのかわかんないけど、あすこでの大団円でぴゅひゅっと水鉄砲になってくれたあたり、キタか~と乗り出したんだけど、モンスター姿お目見えにはほど遠し……。あそこもうちょい発展させてくれてたらなァ。なんかメロドラマに持ってかれちゃって、それならそれで説得力あればいいけど、ねーちゃんが人格変容逃れたのもなんか刑事さん二人してしみじみ同意しちゃってたように本人の人徳ってわけじゃ全然ないっぽくて、単にパラサイトのパワーが徐々に弱ってたっぽいのがあるわけでねぇ。女医の正体割れるや否やのあすこも自制できたのもそのせいって言ってたでしょ? で、未来から来ただの現在の人の心がどうだのわかんないことほざきかけてたけど、現代人の心がみんなアデナくて面白いってならただ一人マナブにこだわる必然性なかったよね? メインキャラクター作りたいからって無理してそういうクローズアップは解せんですよ。全体どーも中途半端なモンスターホラー仕立てだったな。バスタオルでばさっ、間一髪セーフはそりゃないでしょう。あそうそう、この映画に限ったこっちゃないけど、刑事コンビの紋切り型がどーショーもないレベルだし、なによりかにより死体見て一々刑事が派手にゲエゲエやるのいい加減にしといてや。たかが脳みそグツグツ煮てたくらいで何十人もまろび出て吐きまくるか? 類型表現もほどほどに。しつこかったし。