■光る眼■ 妊娠・出産が絡んだパラサイトものってどーも不気味でいかん。こわいや。しかも見かけは髪工夫しただけで全く人間の子だからなあ。パニックに応じようにも抜本策に踏み切れぬままズルズル進んじゃうモドカシ系恐怖がなんとも言えん。ウン。つまり傑作だってことです。オリジナル版(『未知空間の恐怖 光る眼』)をほぼ忠実に踏襲しながらデイヴィドひとりを異端に設定して複雑化したのも成功しましたね。やつらの中にも人間性が。ウムふくらみが出た。ただなんというか、ラストのもたつきはいただけないねェ。さらにラストのラスト、車ん中でデイヴィドの眼が光るんじゃぁと期待したんだけどなあ。しかしそれじゃあまりといえばあまりに救いが無さすぎますか。オッサンせっかく自爆して食い止めたのに。
■未知空間の恐怖 光る眼■ リメイク版(『光る眼』)みたいな、「あの日」の村上空を影が掠める的特殊効果はこの1960年、期待すべくもなかったかもしれないけど、わりと早いうちに「これ全世界的脅威です」のアナウンスあったがために普通に緊迫感増してました。しかし調査段階でのあの飛行機は無謀すぎると思うよ、いくら何でも。結果わかってたでしょうに。それとそう、脇役にせっかくのイヌなんで、いっしょに妊娠してミュータント犬産みゃあよかったのになと。納得はラスト。あっさりしてて、リメイク版よりよろしかったような。ただ、リメイク版ではラストの不器用なもつれと引き替えにデイヴィドの異端化がメリットになってたんですよね。こっちはその逆。痛し痒しですな。
■続・光る眼 宇宙空間の恐怖■ ――これはたぶんパラサイト系ではなく(つまり侵略ものではなく)純粋ミュータントものに属する気配だが、かたち上続編ってことなのでここに。……って、なんだぁー、ス、素ッ晴らしい映画じゃないですか! ただでさえ高レベルの『光る眼』ブランドの中でひときわ輝いてる! ビジュアル地味でも脚本がしっかりしてれば映画も傑作になる、って模範ですな。いつもモンスターものっつうとビジュアルばかりに注目してる私は反省したよ、この映画観て。いゃ何が凄いって、60年版とは違って明瞭な意思がないんですね、どうもこの6人の子たちには。そこがなんか文学的というか不条理で。(もともと「個」はないんですけどね、彼らには)。人類と共存できるんだかできないんだか、それを試すためにわざわざああいう中途半端な疑似敵対行動に及ぶようプログラムされた遺伝子、ってか。共存か排除かって人類側のまっぷたつの反応は定型どおりだが、リアリティ抜群だし。子どもらが国際色豊かなのも楽しいね。それだけに中国人の女の子は英語喋らない方がよかったけどな。いや、6人の知識が全部即時共有される仕組みだからいいのか。マそんな細部はともかく重ねがさね素晴らしい出来だ。最後、防衛隊のポカで攻撃が始まっちゃったというなんとも後味悪いフィナーレも、突然変異体が生き延びられるかどうかは適応主義だけでなく偶然のカタストロフィも考慮に入れなきゃという自然選択説の難しさを思わされました。(あの子らの自殺的遠隔操作かとも思ったけどそう解釈しない方がいいよね)。いゃ進化論にはワタクシ哲学研究上大いに関心寄せてるので、大いに考えさせられた次第で。特撮ほぼゼロのモンスターホラーでこんなにゾクゾクさせられちまうとは。この映画、イチオシ。ケチつけるとしたらサブタイトルだけ。教室で学生に観せよっと。
■ALIVE■ でゅわ~~、こんっな恥かしー映画だとァ思ってなかったです。ダ、ダサイ。ダサすぎる……。百遍でも言おう、みなさん科白ダサすぎ。音声は外国語の方がいいなあと思うのはこういうとき。誰だい脚本書いたの。それとも原作がボロなのか? もーひとりの死刑囚なんかやたら舞台っぽい発声で白けさせてくれるし。異次物だかなんだか、軍事利用だかなんだか、ムダにカッコつけすぎ思わせぶりすぎて、リアリティ皆無にもほどがあるよ。コントロール室での無意味な干渉に殺害に緊張感ない仕切り直しに、フンイキ搾り出そうとみんなしてリキんでるだけ。やめなよ、もう。なけなしの期待背負った閉鎖空間設定にしても……ああも中途半端に外の者が出入りしたんじゃタルみまくりでしょうに、ったく。さぞ『マトリックス』にすり寄ったつもりのバトルアクション、それだけがかろうじて見られる要素だったか。ただねえ。その有効ポイントにしてからが女二人いつまでも邪魔だったなあ。いちいち撃つ前に口上はいいから。