今、外食業界ではファミレスが好調だ。
5月末に日本フードサービス協会から発表された、今年4月の外食売上高を見てみると、前月に比べファミリーレストラン業態は約5%の売り上げ増となっている。
消費増税が実施されたばかりにもかかわらず、なぜファミレスは売り上げを伸ばしているのか? 外食産業に詳しいフード流通ジャーナリストの齋藤訓之氏はこう分析する。
「ファミレスが売上高を伸ばした理由のひとつとして、最近打ち出している高級路線へのメニュー変更が挙げられます。増税のタイミングだったとはいえ景気は上昇傾向ですので、市場動向などを見極めたマーケティング戦略が当たったのでしょう」
一方で、居酒屋業態は約2%の売り上げ減。この理由は?
「いろいろありますが理由のひとつに、わざわざ居酒屋に入って呑まず、ファミレスでサクッと呑む人が増えたことが考えられます」
つまり、今まで居酒屋で呑んでいた人たちがファミレスへ流れていると考えられるのだ。こうした“ファミレス呑み”は、いったいなぜ増えているのか。
「まず、(1)100円ワインなど破格のアルコール提供があることや、(2)ここ数年でお酒のつまみになるファミレスの小皿料理の質が格段に向上したことが大きな理由です。値段だけでなく素材や味にこだわる取り組みが功を奏し、居酒屋で呑むよりファミレスで呑むほうがトクだと考える人が増えたといわれています」
“ファミレス呑み”の火付け役が、イタリアンレストランの「サイゼリヤ」だ。イタリア産グラスワインを一杯100円、500mlのデカンタでも399円という破格の値段で提供しており、おつまみも「エスカルゴのオーブン焼き」が399円、「真イカのパプリカソース」が199円、「辛味チキン」が299円など、格安の本格的メニューが充実。もちろんお通し代やチャージ料もかからないので、気軽にイタリアンバル気分を味わうことができる。
このサイゼリヤの成功がほかのファミレスに飛び火し、現在は中華の「バーミャン」、老舗の「ジョナサン」なども“ファミレス呑み”にピッタリのメニューを充実させている。
齋藤氏が、さらに人気の理由を挙げる。
「(3)大人数で食事をする際、ファミレスだと呑めない人への配慮ができることも大きいです。居酒屋でお酒を頼まないのは気が引けますからね。さらに、(4)ひとりで呑みたいときに居酒屋より入店のハードルが低いことも“ファミレス呑み”が増加している原因と考えられます」
今はまだ、“呑み”に力を入れているファミレスは一部だが、今後ますますファミレス業界は「呑みの場」としてのクオリティ競争が激化しそうだ。