[東京 20日] - 欧州連合(EU)離脱・残留を問う英国民投票を23日に控えて、世界経済の不透明感が強まっている。
それと同時にリスクオフ相場では、円高と金利低下が止まらない。
目先の不確定要因を前に、6月の米連邦準備理事会(FRB)と日銀は予想通り政策変更を見送った。
仮に英国で離脱派優勢の結果となれば、主要中銀が連携してドル資金供給策を講じるだろう。
日銀は臨時会合で協調策決定となろうが、これは日銀単独の三次元の緩和策とは異なる。
4月分の経済協力開発機構(OECD)景気先行指数を見ると、米中の水準はまだ100割れながらもようやく下げ止まりつつある。
一方で資源価格の持ち直しに伴い、ブラジルが循環的にも最悪期を脱して持ち直す姿は頼もしい。
しかし、中国ではL字型成長になる可能性を完全には払拭できないこと、先進国で長期平均100を上回っているユーロ圏が英国に絡んで弱くなるシナリオも捨て切れないことなどから、下振れリスクは意識されやすい。
国際通貨基金(IMF)によれば、中国の債務総額は対国内総生産(GDP)比225%、企業債務は同145%。
債務が膨張する一方で景気減速が続き、中国でのミンスキー・モーメント(資産価格のバブル崩壊)は避けられず、ハードランディングを懸念する声は根強くある。7月下旬発表予定のIMF経済見通しが再び市場に弱気風を吹かせないか、注意する必要がありそうだ。
<FRBの見えざる手>
14―15日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げ見送りを全員一致で決定した。
イエレンFRB議長はその理由として「英国のEU離脱問題も要因の1つだ」と指摘。「単一の雇用指標に過剰反応すべきではない」とも語り、慎重ながらも利上げ路線は維持した。
一時的な弱さを打ち消すには2―3カ月の新たなデータが必要と考えれば、利上げは焦る必要はない。
それでも「毎回の会合で行動を起こす可能性がある」と改めて繰り返し、7月の可能性も否定はしなかった。
7月に利上げするには、23日の英国民投票で残留派優勢、6月指標が上向くことが必要条件だが、現時点ではナローパスだ。
しかし、7月8日発表の6月雇用統計を見る前に、7月利上げなしを完全に織り込むのは早すぎる。筆者は雇用者数の伸びについて、自然失業率に近づく局面で避けては通れない、ペースダウンの時間帯に入ったと見ている。
リーマンショック後の景気の谷(2009年6月)からすでに7年近い回復局面(過去平均は6年程度)は成熟期にあり、減速リスクは常につきまとう。イエレン議長は昨年12月3日の議会証言で、「毎月10万人弱の雇用ペースを確保できれば、労働力への新規参入者を吸収できる」との認識を示していた。3カ月平均で10万人を超えれば、まずは必要条件が満たされよう。
その後は4―6月期成長率の持ち直しを点検しつつ、市場が利上げを織り込んでいけるかどうかだ。
7月後半の共和党、民主党大会から本格的な大統領選挙モードに突入する。8月は予想外の市場混乱が起きる可能性があり(07年パリバショック、15年人民元切り下げ)、9月FOMCでは利上げは難しくなる可能性が高いと筆者は見ている。
7月にできなければ、12月まで利上げ時期は後ずれしよう。
とはいえ、経済見通しは本質的に不確実性との闘いだ。イエレン議長は中立金利の低さを正当化する3つの逆風として、1)海外情勢、2)世帯形成の低迷、3)生産性の伸び悩み、を挙げた。
ボードメンバーの中には、中立金利を2%程度と推計する向きもあり、利上げの最終地点についてさらなる修正の可能性も含めて、今後も議論が繰り広げられそうだ。度重なる中立金利の下方修正は、市場のFRBに対する信認低下になりかねない。
コミュニケーションでの大きな課題と言えよう。
<日銀の終わりなき旅>
次に日本に話を移そう。筆者は足元の日本経済は腰折れするほど弱くなく、潜在成長率を少し上回る成長持続は可能と見ている。
今は歳出削減や成長戦略を地道に推進する方が重要であり、金融政策に依存し過ぎるのは良くない。
2%の物価安定目標は遠いが、そもそも日本の実力と物価統計(ウェイトの高い帰属家賃が足を引っ張る)から考えると、2%は中長期的な目標として、柔軟な物価目標(例えば2%から上下1%)に修正していくべきだろう。佐藤審議委員は同じ意見だが、残念ながらボードで議論されている雰囲気は全く感じられない。
一方で、プライマリー・ディーラー資格返上の検討に象徴される、マイナス金利政策による国債離れは、副作用と言わざるを得ない。
黒田総裁は国債買い入れの量的限界はないと言い切るが、マイナス金利と量の併存はいつまでも可能ではない。
技術的にマイナス金利拡大は可能でも、その影響を軽微にとどめる(マクロ加算0%適用を増やす)なら、何のためにするのかわからない。
また、質的緩和の上場投資信託(ETF)増額には、組成が進捗しておらず、一部銘柄への偏りが懸念され始めている。
遠くない将来、現在の政策枠組みを見直すのが出口戦略の一歩と考えるが、その検討に向けて取り組む気配はまだない。
黒田総裁は16日の定例会見で、「マイナス金利の政策効果が徐々に波及」「企業は設備投資に前向きなスタンスを維持している」と語った。日銀はマイナス金利の効果が設備投資と住宅投資に出てくると見ており、住宅投資では貸家の強い伸びを指摘。
7月1日発表の日銀短観・6月調査の設備投資計画でも、上方修正する自信があるのかもしれない。
加えて、足元で急激に進む円高に関連して、「為替の動きに金融政策はリンクしていない」「為替動向を注視する」と語るだけで、円高進行を抑制するためのリップサービスはなかった。何が何でも2%との意気込みは感じられず、今はマイナス金利の効果を見極める時間と割り切る余裕がある。
16日のドル円は結果発表前に105円台後半で推移も、追加緩和なしの政策手詰まり感に一時103円台半ばまで円高進行。
5月末の110円台後半から2週間強で7円幅も動いている。
2月に上海で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議の声明文には、「最近の市場変動の規模は、その根底にある世界経済の現在のファンダメンタルズを反映したものではないと判断している」と盛り込まれた。当時は1カ月で約11円の円高が進行した。筆者はドル円が100円割れとなれば、為替介入はありと見ている。日銀よりも財務省が動くのが筋だろう。
市場では日銀の追加緩和について7月予想が優勢だが、決め打ちすべきでないと考える。経済・物価見通しを下方修正し、2%の物価目標達成時期を先送りしても昨年4月、10月時には追加緩和は見送られた。消費税の2年半先送り決定で7月展望レポートでは16年度、17年度の成長率見通しは修正されようが、物価見通しで足元の円高を考慮し、一気に下方修正するとは想定し難い。16年度は下方修正しても、17年度はまだ先だからだ。筆者は17年度の予想中央値を1%台前半に下方修正する時が、目標達成時期を後ずれさせるリミットと見ている。
また、8月26日に消費者物価指数(CPI)の基準改定を控え、その前に物価見通しを大きく修正するとは考え難い。
市場の一部には、6月短観が追加緩和の材料と見る向きもあるが、まずは短観がそこまで悪いものなのか、点検すべきだろう。
以上、ロイター記事
100円切ったら、為替介入する? 紙切れのドルを多量に買う?
この行為は売国行為である。
噂では、今追加金融緩和するなとアメリカから圧力があるようだ。
目的は、為替介入させて数十兆円の円を貢がせるためのシナリオかも知れない。
もし、ドルを購入してゴールドを買えれば問題ないが、日本は金を買えないらしい。そういう立場なのだ。