[東京 22日 ロイター] - 安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」は「経済の好循環」をスローガンの1つとして掲げてきた。この3年間のデータを点検すると、株高・円安の進展、企業収益や雇用者の増加などプラス面と、経済成長率の伸び悩みや物価目標の未達などが混在している。
全体としてどのように評価すべきか、マクロ政策の「プロ」に聞いた。
質問に回答した2人の大学教授の見方が一致したのは、デフレ脱却が実現できておらず、経済の好循環も当初の想定通りには進んでいない点だ。
ただ、その要因について、専修大学の野口旭教授は「2014年4月の消費増税によって、もたもたしている」と指摘しているのに対し、立正大学の吉川洋教授は「社会保障の将来像をはっきりと示せていない」点を指摘。
将来不安などで消費が振るわないことなどを挙げている。
今後のマクロ政策の展開に関しては、吉川教授が「日銀の金融緩和がヘリコプターマネーの色彩を帯びてきている」と警鐘を鳴らしているのに対し、野口教授は赤字財政政策と日銀の量的緩和の組み合わせがヘリコプターマネーであると定義。今の状況では「必ず必要になってくる政策」と強調している。
主な論点は以下の通り。
<吉川洋・立正大学教授>
●アベノミクス評価点:採点せず
●好循環実現とデフレ脱却:2015年からは経済の好循環が実現できていない。デフレ脱却は2年で2%との目標を掲げていたのに、足元の物価はマイナス。そもそも2%物価目標には反対。物価が2%上昇しても国民は幸せではない。重要なことは物価安定のもとで、実体経済が好調に推移することだ。
●好循環に至らなかった要因:社会保障の将来像をはっきり示せていないこと。決して14年の消費増税が原因ではない。
●財政政策と金融政策の組み合わせについて:日銀の金融緩和がヘリコプターマネーの色彩を帯びてきている。
日銀の高値での国債購入により、国庫納付金は誰も気づかぬうちに減り、財政民主主義から外れることになる。
<野口旭・専修大学教授>
●アベノミクス評価点:総合評価80点。デフレ脱却60点。財政再建100点。
●好循環実現とデフレ脱却:雇用や失業率は民主党時代より大きく改善している。成長率は民主党政権下の方が高かったが、リーマンショックの後なのだから当たり前だ。デフレ脱却は14年4月の消費増税により非常にもたもたしている。
●好循環に至らなかった要因:増税をしつつ、デフレ脱却できるとの見通しが甘すぎた。まずは2年、3年でデフレ脱却をやりぬくべきだった。
●財政政策と金融政策の組み合わせについて:ヘリコプターマネーは、今の状況では必ず必要になってくる政策。
もうすでにやっているとも言える。赤字財政政策と日銀の量的緩和の組み合わせがヘリコプターマネー。
この政策で物価が上がるには、増税しないとコミットする必要がある。その意味で安倍首相が増税を2年半延期したのは正しい。本当は凍結が望ましいが、来年と2年半先では全く消費への影響が違う。インフレ目標があれば、ハイパーインフレは起こらない。ただ、2%の物価を安定的に達成するには、一時的に物価が3%程度まで上昇するのを許容する必要がある。
以上、ロイター記事
>今後のマクロ政策の展開に関しては、吉川教授が「日銀の金融緩和がヘリコプターマネーの色彩を帯びてきている」と警鐘を鳴らしているのに対し、野口教授は赤字財政政策と日銀の量的緩和の組み合わせがヘリコプターマネーであると定義。今の状況では「必ず必要になってくる政策」と強調している。
*ヘリコプターマネー(helicopter money)とは、さもヘリコプターから市中に現金をばらまくように、政府や中央銀行が国民に現金を直接供給する、要するにマネーストックを増やす政策のことです。米国の経済学者、マネタリストであるミルトン・フリードマンが著書で用いた比喩で、バーナンキ元FRB議長が強く支持したことで有名となりました。
両教授の見方が違います。
増税したことが、デフレ脱却をもたもたさせていることは、間違いない。
そうだったら、5%に減税することが正解に思えます。
そういうことでアベノミクスは道半ば、ということですね。