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帯とけの枕草子〔二百十九〕ものへいく路に
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔二百十九〕ものへいく路に
どこかへ行く路で、身なりのよい男の細身なのが立文(公式の書状)持って急いで行くのを、何処へでしょうと見ている。また、身なりのよい童子などが、袙など真新しいのではなくて、萎えかけているのに、屐子(下駄のような履物)の、漆塗り・艶やかだが歯には土が多く付いているのを履いて、白い紙で大きく包んだ物、もしくは箱の蓋に草子など入れて持って行くのは、ぜひとも呼び寄せて見たくなることよ。
かどちかなる所のまへわたりをよびいるゝに、あひぎやうなく、いらへもせでいくものは、つかふらむ人こそをしはからるれ
(門に近い所の前通るのを、呼び入れているのに、愛嬌もなく応えもしないで行く者は、使っている人こそ、人柄が・推し量られる……門ちかいところの前あたり、お、好い、入れているのに、合い京なく、応えもしないで逝くものは、そんな物を・使っている男の人物こそ推し量られる)。
言の戯れと言の心
「かど…門…女」「よびいるゝ…呼び入れる…よひいるゝ…宵に入れる…好い入れる」「宵…たそがれ…おとこの訪れるころ」「あいぎやう…愛敬…愛嬌…あひきやう…合い京」「合…和合」「京…山ばの頂上」「いらへ…答え…応え…応答」「いく…行く…逝く」「もの…者…物…おとこ」「つかふらむ人…童子を使いに行かせた主人…おとこを使う男」。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・9月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。