帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百三十〕細殿の遣戸を

2011-11-17 00:14:32 | 古典

    



                                   帯とけの枕草子〔二百三十〕細殿の遣戸を


 

言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。



 清少納言枕草子〔二百三十〕ほそどのゝやりどを

 

 ほそどのゝやりどを、とうをしあけたれば(細殿の遣戸を急に開けたところ…細どののやり門を早くもおが厭きたので)、御湯殿に、めだう(馬道…めのみち)より下りてくる殿上人、なへたるなをし、さしぬきの、いみじうほころびたれば(萎えた直衣、指貫がたいそう綻びているので…萎えた直だったおし、差し抜き、とっても顕わになっているので)、色々のきぬどものこぼれいでたるを、をしいれてなどして(色々の衣どもがこぼれ出たのを押し入れなどして・とり繕って…色いろ来たもの零れ出たのを、おし入れたりして・隠して)、北の陣(兵衛の詰所)の方へ歩み行くときに、あきたるとのまへをすぐとて、ゑいをひきこして、かほにふたぎていぬるもおかし(開いている戸の前を過ぎるということで、冠の・纓を前に引き越して顔に塞ぎかけて去るのもすばらしい…飽きたる門の前を過ぎるということで、急に・酔いひき起こして、彼おふさいで去るもおかしい)。

 

言の戯れと言の心

 「細殿…女房の局…よき女」「ほそ…細…細小…ささ」「殿…家…女」「と…戸…門…おんな」「をし…押し…おし…おとこ」「あけ…開け…明け…終り…厭き」「ゑい…纓…もとは冠の紐で飾りとなった平たい薄絹…ゑひ…酔い」「かほ…顔…彼お…彼のおとこ」「ふたぐ…ふさぐ…塞ぐ…隠す」「おかし…をかし…(局を見ないためで礼に適って)すばらしい…(恥ずかしいのか、彼お塞いで去るのが)滑稽だ」。



  殊にこの章などは、おとなの女による、おとなの女のための読み物。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)

 
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。