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帯とけの枕草子〔二百三十〕細殿の遣戸を
言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。
清少納言枕草子〔二百三十〕ほそどのゝやりどを
ほそどのゝやりどを、とうをしあけたれば(細殿の遣戸を急に開けたところ…細どののやり門を早くもおが厭きたので)、御湯殿に、めだう(馬道…めのみち)より下りてくる殿上人、なへたるなをし、さしぬきの、いみじうほころびたれば(萎えた直衣、指貫がたいそう綻びているので…萎えた直だったおし、差し抜き、とっても顕わになっているので)、色々のきぬどものこぼれいでたるを、をしいれてなどして(色々の衣どもがこぼれ出たのを押し入れなどして・とり繕って…色いろ来たもの零れ出たのを、おし入れたりして・隠して)、北の陣(兵衛の詰所)の方へ歩み行くときに、あきたるとのまへをすぐとて、ゑいをひきこして、かほにふたぎていぬるもおかし(開いている戸の前を過ぎるということで、冠の・纓を前に引き越して顔に塞ぎかけて去るのもすばらしい…飽きたる門の前を過ぎるということで、急に・酔いひき起こして、彼おふさいで去るもおかしい)。
言の戯れと言の心
「細殿…女房の局…よき女」「ほそ…細…細小…ささ」「殿…家…女」「と…戸…門…おんな」「をし…押し…おし…おとこ」「あけ…開け…明け…終り…厭き」「ゑい…纓…もとは冠の紐で飾りとなった平たい薄絹…ゑひ…酔い」「かほ…顔…彼お…彼のおとこ」「ふたぐ…ふさぐ…塞ぐ…隠す」「おかし…をかし…(局を見ないためで礼に適って)すばらしい…(恥ずかしいのか、彼お塞いで去るのが)滑稽だ」。
殊にこの章などは、おとなの女による、おとなの女のための読み物。
伝授 清原のおうな
聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)
原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。