帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの枕草子〔二百三十三〕日は入日

2011-11-21 00:07:35 | 古典

  



                      帯とけの枕草子〔二百三十三〕日は入日



 言の戯れを知らず「言の心」を心得ないで読んでいたのは、枕草子の文の「清げな姿」のみ。「心におかしきところ」を紐解きましょう。帯はおのずから解ける。

 

 清少納言枕草子〔二百三十三〕日は入日


 文の清げな姿

日は入日、入り果てた山の端に、光がなお留まって赤く見えるとき、薄く黄ばんでいる雲が細くたなびき広がっている、しみじみとした風情である。


 原文 

日は入日、いりはてぬる山のはに、ひかり猶とまりて、あかうみゆるに、うすきばみたる雲の、たなびきわたりたる、いとあはれなり。


 心におかしきところ

緋(燃える赤色)は消え方、暮れ果ててしまった山ばの端に、照り輝き(光)、汝お、留まって、元気色に(赤う)見えるとき、ややお疲れ色(薄黄ばみ)の心雲が、細くたなびきひろがっている、とってもあわれである。


 言の戯れと言の心

 「日…緋(燃えるような赤色)…火…情熱の炎」「入る…日が落ちる…火が消える…気が滅入る」「山…山ば」「光…威光…男の魅力…光源氏の光るはこれか…照り輝き」「猶…尚…直…汝お…君がおとこ」「赤…元気色」「黄…疲労色」「雲…空の雲…心の雲…煩わしいほどの心のもやもや…情欲など…広くは煩悩」。



 あわれと言える景色(気色)を詠んだ歌は色々ある。秋の夕暮れ(飽きの果て)の歌を一首聞きましょう。

古今和歌集 巻第四、秋歌上 よみ人しらず

 ひぐらしのなく山ざとのゆふぐれは 風よりほかにとふ人もなし

 (ひぐらしの鳴く山里の夕暮れは、風より他に訪う人もいない……日暮らしの泣く、山ばのふもとの女の果ては、飽き風よりほかに、門よぎる人もなし)。


  「ひぐらし…蝉の名…日暮らし…一日中」「なく…鳴く…泣く」「ゆふぐれ…夕暮れ…日の果て…ものの果て」「山さと…山里…山ばのふもと…山ばの女」「さと…里…女…さ門」「風…心に吹く風…あき風」「とふ…訪う…と経…門経る…門を通り過ぎる」「と…門…女」「人も…男も…おとこも」。


 伝授 清原のおうな

 聞書 かき人知らず (2015・10月、改定しました)


 原文は、岩波書店 新 日本古典文学大系 枕草子による。