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帯とけの新撰和歌集
歌言葉の戯れを知らず、紀貫之の云う「言の心」を心得ないで、和歌の清げな姿のみ解き明かされて来た。藤原公任は、歌には心と、清げな姿と、心におかしきところがあるという。言の心を紐解きましょう。帯はおのずから解け人の心根が顕れる。
紀貫之 新撰和歌集 巻第一 春秋 百二十首(九十一と九十二)
としふればよはひは老いぬしかはあれど 花をし見ればもの思ひもなし
(九十一)
(年経れば、齢は老いる、しかしながら、この花を見れば、まだもの思いもない……疾し過ぎれば、夜這いは極まってしまうしかし、このお花、愛し、見ればもの思いもしていない)。
言の戯れと言の心
「とし…年…疾し…早過ぎ…おとこのさがの性急な性癖」「よはひ…年齢…夜這い…まぐあい」「おい…老い…年齢の極まり…ものの極まり…感の極まり」「しかはあれど…そうではあっても…そういう肢下はあるけれど」「花…木の花(桜)…おとこ花」「をし…をだ(強調)…愛し…惜しい…愛執着がある」「し…強意を表す…肢…子…おとこ」「見…覯…まぐあい」「もの思ひもなし…感の極みに至る思いもなし…いまだ平常心、すばらしい、ご立派」。
をり人のこずのまにまに藤ばかま うべも色濃くほころびにけり
(九十二)
(織り人の来ない間に、その間に、藤袴、なるほど名が草花だけに、色濃いまま綻んだことよ……逝き人の山ば越す間に、その間に、草花のひと、もっともなことだな、色濃くほころんだそうだ)
言の戯れと言の心
「をり…織り…折り…逝く」「ひと…人々…女…男」「こす…来ず…来ない…越す…通過する」「まにまに…間に間に…間が空いた間に」「ふぢばかま…藤袴…草花…秋の七草の一つ…女花…名は戯れる、腰に着ける衣、藤衣、粗末ながら強いはかま」「うべ…もっともだ…なるほどそれで」「いろこく…色濃く…色彩濃く…色情濃く」「ほころび…衣が綻びる…花が開き始める…盛りになり始める」「けり…気付き、詠嘆、伝聞などの意を表す」。
春歌の桜花礼讃は清げな姿。男花礼賛は我褒め、地位自慢と聞いて、山の頂上にのぼりつめて未だ何とも思っていないという。わがおとこ花の自慢と聞いて、心におかしい。
秋歌は袴の綻びを草花のほころぶ景色に寄せて詠んだ、清げな姿をしている。おとこのさがと、おんなのさがの違いを伝聞として述べたと聞けば、心におかしい。
伝授 清原のおうな
鶴の齢を賜ったという媼の秘儀伝授を書き記している。
聞書 かき人しらず
新撰和歌集の原文は、『群書類従』巻第百五十九 新撰和歌による。漢字かな混じりの表記など、必ずしもそのままではない。又、歌番はないが附した。