いつか英国日記

英国を中心とした靴、鞄、時計、その他ファッションに関するブログ

魔法の傘

2010-10-30 07:12:58 | 
魔法の傘
いきなり大仰ですが
正にそんな表現がピッタリの傘です。

ミッドナイトブルーのこの傘
実は先日仕上がった
パーソナルテーラーにビスポークしてた物です。

魔法たる所以は
その素材にあります。

贅沢にも1960年代のイギリスの
ビンテージシルクコットンを使い
この傘は仕立てられています。
恐らくレインウェア用に織られたこの生地
完璧なまでの撥水性というより
防水性を備えています。

下の写真は傘に雨が降った状態のもの。
雨水が白く見えるのは
傘と雨水の間に空気の膜が出来ている為です。


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この傘を一振りするとこうなります。


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正に魔法です。
このビンテージシルクコットンですが
表面を加工してあるのではなく
緻密な織りだけでこの撥水性を実現しています。
素晴らしいですね~。

そして、もうひとつの美点。
シルクコットンはナイロンと違い趣があります。
何とも言えない、美しい明かりの透過。


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そして最大の良さは雨が降った時の音です。
今日などはかなりの雨脚ですが
最初はバタバタ大きな音がするのかなと
思っていましたがまったく逆でした。
とても優しく、角が取れた音です。
繊細な音、雨音にこの表現が適切かはさておき
心優しく癒されるような響きです。

これなら雨の日の外出も
少しは愉しくなるというものですね。

さて、傘のディテイールですが
傘骨は1960年代、イギリスのブリッグで購入された物。
これを非常に丁寧にレストアしています。
受骨は奇麗に磨かれ
そしてこの下ろくろなど芸術的な出来上がりです。


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実はこの傘、日本で作られていますが
張地の先端のステッチ以外はほとんど手縫いです。

そして胴ネーム。
この部分はわざわざスカーフを製作してもらってる職人さんに
持ちこんで手縫されています。


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胴ネームの留め具は
紳士の傘に拘り
ヴィクトリアンの黒いブーツボタンというのが
パーソナルテーラーH氏の選択です。


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この胴ネームの位置が既製品とは違い
正統な紳士傘のフォルムである
かなり上部の位置に取り付けられています。


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こういった細かいところも
既製品とは異なるところですね。

そしてハンドル。


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とても美しいですね。
素材は葡萄のようにも見えますが
エニシダという節もあります。
今となっては不明です(笑。

当時は今と違い
もの凄い種類のハンドルがあったとの事。

そしてブリッグの刻印。


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時代を感じさせますね。

傘のフォルムですが素材がシルクコットンであることを考えれば
かなり細く巻けます。
そしてクラシックな独特のフォルム。


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外出時の傘の置き場所には
気を使いますが
こういった紳士の傘
1本あるといいですね。