9月8日に、ミュンヘンにある
レーンバッハ美術館The Städtische Galerie im Lenbachhausをはじめて訪れた。建物自体は、the former villa of the "painter prince" Franz von Lenbachというだけあって中庭含めて趣がある美術館。The Blue Rider派の作品を多く所蔵し、特にカンディンスキーWassily Kandinsky(1866-1912)のミュンヘン時代の作品を所蔵することで世界的に有名な美術館だ。画家であり、カンディンスキーの2人目の妻であったGabriele Muenterが、1956年に80歳の誕生日に、所蔵していた(というよりも2つの世界大戦の戦火から守り抜いた)コレクションをミュンヘンに寄贈したのが元になっている。90以上のカンディンスキーの油彩。さらに多くの水彩、テンペラ、などの他、多くの資料、彼女自身の作品25点などが寄贈された。
1896年にモネを見て、ミュンヘンに出てきて、画家の道を目指しはじめてから、1901年のファーランクスPhalanx結成、1908年のMurnau滞在、1911年のThe Blue Rider(青騎士派)展開催、1912年「芸術における精神的なもの」出版、1914年11月に戦争のためミュンターと分かれて、ロシアに帰国。この時代のカンディンスキーの作品が4室に渡って展示されていた。、
カンディンスキーは好きで、今まで多くのカンディンスキー展を見てきている。少なくとも、1987年に東京国立近代美術館で、このレーンバッハ美術館、グッゲンハイム美術館、パリポンドセンターなどから多くの作品を集めて開催されたカンディンスキー展。(これは大規模な展覧会でカタログが手元に珍しくある。)2002年に東京国立近代美術館にて開催された、レーンバッハ美術館やトレチャコフ美術館などの大作を展示したカンディンスキー展。そして、昨年9月にはパリポンピドセンターで、またあのSkyblueを鑑賞したのを覚えている。(ポンピドーセンターの作品は、3番目の妻ニーナにより寄贈されたものが元になっている。)
Murnau滞在でカンディンスキーが「色彩固有の表現力を発見した」ときの作品がいくつか。小品、たとえばNature Study from Murnau I (1909)(32.9x 44.6cm)などと Murnau With Church I (1910)が。(Murnau滞在は、2002年のカンディンスキー展でも強調されていた。)
即興Improvisaition IV(African)(1909), Impression 3 (Concert)(1911)、衛兵を描いたImpression 4(1911)、Improvisation26(Rowing) (1912)など、まだまだ主題が判別できるが、どこか色彩が深く悲しげである。
(また、Improvisation 12(Rider)(1910)、Impression VI(Sunday)(1911)は、同じく9日訪れたModerne Kunstに展示されていた。)
でも、こんなカンディンスキーもあるんだと今回発見したのは、1908年にMurnauに落ち着く前の「ロシア・モチーフ」と呼ばれる詩的なテンペラの作品。The Bride(Russian Beatuy in Landscape)(1903), The Night(Walkng Lady)(1903), Riding Couple(1906-07), Colorful Life(1907)。印象派ともいえる、点描画に近い技法で、絵筆のはけのタッチで画面が構成されている。ただ、ベースはテンペラという質感と、また褐色の背景の上に描かれているので、とてもロマティック。画題も、ロシアの女性や風景を描いてそれも詩的でロマンチックだ。Kandinskyというサインも印象的だ。
The Brideは、乳白色の青や緑をベースとした作品。草原で椅子に腰掛ける横顔の花嫁と遠くに宮殿。
The Nightは、落ち着いた赤紫色を背景に、すらっとした歩く女性が、ベールを上げ、顔を横にしてこちらを見る姿。白い雲の筆遣い、女性のベールの白が印象的。
Riding Coupleはロシア風の衣装をまとったカップルが寄り添って騎乗している姿。モスクワかと思われる風景(夜景)を背景描かれている。
Colorful Lifeは、130x162.5cmの大作で、山の上の宮殿を背景に、いろいろな肌の様々な民族衣装をまとった老若男女が描かれている。画面左下の正面を向いた少女の表情が何故か印象的。
(1987年のカンディンスキー展のカタログには、この時期の作品として、「夕暮れ(1904年)」(グワッシュ、紙)(宮城県美術館蔵)が掲載されている。)
なお、レーンバッハ美術館では、このBlue Riderというコーナーのみ鑑賞。カンディンスキーの仲間のFranz Marc, MunterやPaul Kleeの作品が展示されていた。Paul Kleeについては別稿を後日起こしたい。
参考
-カンディンスキー展 May1987 (東京、京都)
-The Blue Rider in the Lenbachhaus, Munchen, Prestel, 2000, ISBN 3-7913-2216-8
-
Olga's Galleryには、上記の可也のクリップがあります。
Related article: Three Wives of Wassily Kandinskyの話も今回初めて知りました。