北方ルネッサンス初期のフランドル絵画の巨匠ヤン・ファン・アイクJan Van Eyckの《聖母子、聖人と寄進者》Virgin and Child, with Saints and Donor(ca.1441-43)(画像 画像をさらにクリックすると拡大)がフリック・コレクション The Frick Collectionにある。正確には、ヤン・ファン・アイクが描き始め、工房の弟子たちが彼の死後完成させたと推定されている絵だ。はじめて、まじまじとヤン・ファン・アイクの絵画を鑑賞した。
15世紀のブリュゴーニュ公フィリップPhilip the Good of Burgundyに宮廷画家兼侍従として使えたヤン・ファン・アイク(1390?-1441)は、油彩画の技法を生み出したフランドル地方で、その技法を完成させた画家とされる。
西洋美術史のいくつかの書籍によれば、(フーベルトとヤンの)ファン・エイク兄弟の《神秘の仔羊の礼拝》(ゲント、サン・バヴォン教会St.Baafskathedraal, Gent)(1432)(画像)とヤン・ファン・アイクの《ニコラ・ロランの聖母》The Virgin of the Chancellor Rolin. (c.1435)(ルーブル美術館)(画像)は必ず紹介されている金字塔。後者は室内と室外の統合に成功した傑作。
たとえば、《ニコラ・ロランの聖母》の室内と室外を統合したスタイルを継承した作品はアルテ・ピナコテークにもあった。ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデンRogier van der Weyden (1399 - 1464)の《聖母を描くルカ》(ca.1450)である。(ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデンの傑作のひとつは《東方の三賢王の礼拝祭壇》(ケルンのコルンバ祭壇St. Columba Altarpiece)(ca.1455)。両者とも1827年に国王ルードヴィヒ1世が購入した作品。)
《ジョヴァンニ・アルノニフィニと花嫁》Giovanni Arnolfini and His Wife Giovanna Cenami (The Arnolfini Marriage) (1434)(ロンドン ナショナル・ギャラリー)(画像)も西洋絵画の金字塔的傑作である。画家自身が鏡の中に描かれており、「Johannes de Eyck fuit hic 1434(ヤン・ファン・アイクがここにいた)」と鏡の上の銘文にあり、絵画が個人的なできことを証言する新しい価値を担ったことを理解していたに違いないという。(*1)
この《聖母子、聖人と寄進者》は、非常に透明感のあるの画面と聖母子の背景の天蓋に先ず目がいく。天蓋は、当時のフランドルの織物の水準の高さを想像させるすばらしい色彩で描かれており、油彩画の技法が存分に生かされている。描かれている人物は、実際に出会うことなかった聖母子と聖エリザベート、聖バルバラと修道士という架空の物語。屋外と室内(柱廊)を統合した構図になっており、背景に聖バルバラが投獄されていた塔も描かれてる。
弟子が完成させたとはいえ、ヤン・ファン・アイクによって描かれたという作品が、フリックコレクションにはあり、METには1点(The Crucifixion; The Last Judgment, ca. 1430)があったようだが(みそびれました)、アルテ・ピナコテークにもなく、フリック・コレクションの質の高さを感じさせる。ともあれ、今度パリ、ロンドンを訪れたときには、上記の作品を鑑賞したい。
*1 ケンブリッジ 西洋美術の流れ 3 ルネサンスの美術(ローザ・マリア・レッツ著)(岩波書店)(ISBN4-00-008443-7)(1989)
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15世紀のブリュゴーニュ公フィリップPhilip the Good of Burgundyに宮廷画家兼侍従として使えたヤン・ファン・アイク(1390?-1441)は、油彩画の技法を生み出したフランドル地方で、その技法を完成させた画家とされる。
西洋美術史のいくつかの書籍によれば、(フーベルトとヤンの)ファン・エイク兄弟の《神秘の仔羊の礼拝》(ゲント、サン・バヴォン教会St.Baafskathedraal, Gent)(1432)(画像)とヤン・ファン・アイクの《ニコラ・ロランの聖母》The Virgin of the Chancellor Rolin. (c.1435)(ルーブル美術館)(画像)は必ず紹介されている金字塔。後者は室内と室外の統合に成功した傑作。
たとえば、《ニコラ・ロランの聖母》の室内と室外を統合したスタイルを継承した作品はアルテ・ピナコテークにもあった。ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデンRogier van der Weyden (1399 - 1464)の《聖母を描くルカ》(ca.1450)である。(ロヒール・ヴァン・デル・ウェイデンの傑作のひとつは《東方の三賢王の礼拝祭壇》(ケルンのコルンバ祭壇St. Columba Altarpiece)(ca.1455)。両者とも1827年に国王ルードヴィヒ1世が購入した作品。)
《ジョヴァンニ・アルノニフィニと花嫁》Giovanni Arnolfini and His Wife Giovanna Cenami (The Arnolfini Marriage) (1434)(ロンドン ナショナル・ギャラリー)(画像)も西洋絵画の金字塔的傑作である。画家自身が鏡の中に描かれており、「Johannes de Eyck fuit hic 1434(ヤン・ファン・アイクがここにいた)」と鏡の上の銘文にあり、絵画が個人的なできことを証言する新しい価値を担ったことを理解していたに違いないという。(*1)
この《聖母子、聖人と寄進者》は、非常に透明感のあるの画面と聖母子の背景の天蓋に先ず目がいく。天蓋は、当時のフランドルの織物の水準の高さを想像させるすばらしい色彩で描かれており、油彩画の技法が存分に生かされている。描かれている人物は、実際に出会うことなかった聖母子と聖エリザベート、聖バルバラと修道士という架空の物語。屋外と室内(柱廊)を統合した構図になっており、背景に聖バルバラが投獄されていた塔も描かれてる。
弟子が完成させたとはいえ、ヤン・ファン・アイクによって描かれたという作品が、フリックコレクションにはあり、METには1点(The Crucifixion; The Last Judgment, ca. 1430)があったようだが(みそびれました)、アルテ・ピナコテークにもなく、フリック・コレクションの質の高さを感じさせる。ともあれ、今度パリ、ロンドンを訪れたときには、上記の作品を鑑賞したい。
*1 ケンブリッジ 西洋美術の流れ 3 ルネサンスの美術(ローザ・マリア・レッツ著)(岩波書店)(ISBN4-00-008443-7)(1989)