赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

中国の経済の真相――中国幻想(1)   コラム(104)

2015-12-24 00:00:00 | 政治見解



コラム(104):
中国の経済の真相――中国幻想(1)



今年のはじめAIIB(アジアインフラ投資銀行)の発足に対して、「バスに乗り遅れるな」と参加を強く勧めていた言論人がいました。また、現在も経済学者の中には「中国政府は対策を打つから深刻に捉えるべきではない」と言う人がいます。

彼らは今でも中国の巨大市場幻想に浸っているようです。


粉飾されたGDPと国民の不満


しかし、目をこらして見ると中国のGDP統計は、政府目標を達成したと見せかけているだけです。産業統計を分析する能力の無い中国では正確な数字は出せません。

ここ数年、中国は不動産価格が下落し、今年に入ってからは株価の下落し、世界経済に悪影響を与えました。

そうした状況下、中国政府は大幅な賃上げ政策をとり、これが中国の輸出製品の値上がりにつながり、製造業の競争力が低下しました。そのため一億人の失業者を生み出すことになり、中国国民の不満は頂点に達しています。


IMF決定と米利上げの影響

本年11月末にIMF が中国の人民元を国際通貨に加える措置を発表しました。これにより、中国は金融面で国際的なルールに従わなければならなくなりました。今までのような意図的な為替操作で自国のみの利益確保が出来なくなっています。

12月半ばにはFRB(米連邦準備理事会)が7年ぶりとなる利上げを決定しました。実は、このアメリカの措置は米国内の事情だけではなく、中国に対する牽制を含んでいます。金融市場ではドルの価値が上がれば、安全なドル建て資産を買うために、世界中の企業や投資家は中国からの資金回収を加速させるからです。

現在の人民元はドルと緩やかに連動しているため、ドル高につられて人民元相場も上昇し、輸出産業に打撃を与えます。それに対して中国当局は、輸出増のために為替操作で通貨安を狙いたいところですが、IMFの縛り(国際通貨化の条件)があり、簡単には出来ない状態になります。


しぼむ巨大市場幻想

今年の一月に習近平主席の意向に応じて中国の国有企業に1兆円の共同投資を行った伊藤忠商事は最近のインタビューで「中国は経済状況が厳しいので、今後の大型案件への投資は慎重にしたい」と述べています。

実は伊藤忠では大問題になっています。投資額のほとんどが予定通りに使われず、返却しようにも全く戻るめどが立たない状況です。投資決定時の交渉や契約責任者の進退問題や、その金の補填方法などの検討に入っているようです。

中国市場への過剰な期待や欲望が招いた典型的な出来事だと思います。

(つづく)


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