赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

⑥日本が取るべき経済安全保障政策——「中国製造2049」で技術だけを盗まれる日本企業

2025-01-14 00:00:00 | 政治見解
⑥日本が取るべき経済安全保障政策
——「中国製造2049」で技術だけを盗まれる日本企業




昨日からの続きです

(本ブログは著者の特別の許可を得て掲載しています。なお、収録時は対中宥和の岸田政権下です。)


失速する中国経済、もはやジリ貧

これからの中国がどうなっていくのか、こういったようなことをまとめ編みたいなことをお話ししていきたいと思います。

まず、この中国の経済がどうなるかという前に、これまでの流れというのをお話ししていきたいと思います。中国が本性を現したね、というところから話をしていきますね。

まず背景としては、我々一般消費者が使う製品の技術というのが、どんどん進歩して、いわゆる民生 技術と、そういう技術を呼ぶんですけれども、今度は民生技術と軍事技術の差がすごく縮まっちゃったんです。民生技術を軍事技術に転用するような動き、これがはっきり中国で起こり始めた。これは2017 年頃から顕著になってきていて、彼らは軍民融合政策というふうに言っているわけです。

そして2015年、中国政府は中国製造2025、2035、2049というのを発表し、2049年 には世界最強の製造強国になるよということを公言し始めた。

そして、こういった流れの中で、2019年12月、武漢ウィルスの患者が発見されて、世界中にパンデミックを引き起こしたわけです。そのパンデミック禍で何が行われたかというと、生産拠点が中国に集中していたわけですね。これはグローバルサプライチェーンということで、人・物・金・情報は自由に国境を越えて行き来するから、14億人の中国にみんな工場を持っていきましょうという流れがあって、生産拠点が集中していた。

今度は生産拠点が中国に集中していたので、中国政府は中国の意見に同調しない国に対して、マスクや消毒液の輸出を止めるということをやったわけですね。マスク外交とか戦狼外貨と言われました。こういう行為をエコノミック・ステート・クラフトと言います。

例えば、武漢ウィルスの責任を追及したオーストラリアのモリソン首相に対して、中国はものすごく反発し、小麦とか牛肉とか石炭、鉄鉱石、こういったものの輸出をしない、こんな動きをした。それから台湾とかリトアニアに対しても、同じような行動を取った。最近では、これはウィルスとは関係ありませんけれども、日本の福島原発から処理水を流すということに反発して、ホタテなどの海産物の輸入を禁止した。ですから、これが中国の本性なわけですね。

この軍民融合を進めたと言いますが、これも令和5年の『防衛白書』に書いていますが、ポイントは、 中国は軍も民もないのだということなんです。つまり、緊急事態に限られない平素からの民間資源の軍事利用や、軍事技術の民間転用などを推進していると。そして、海洋・宇宙・サイバー・人工知能、これはこういった新興領域で軍民融合を重点的に行っている。平素からの民間資源の軍事利用って何だろうと思う人がいるでしょうけど、例えば中国には民間というか、海運会社というのがありますね。

ところが台湾有事を想定して、こういった企業の船も人民解放軍と一緒になって、ロジスティックの演習をやっているような例があるわけです。つまり、もうこれは民間の船が軍用の運搬船なんかに使う、動員とか、こういうようなことをやっているわけです。こういう演習をやっている。これが民間資源の軍事利用ということなんですね。

米中の対立激化というところのおさらいをすると、今言った軍民融合政策とか、中国製造2049に対 して、アメリカは当時のトランプ政権が2019年度の国防権限法を皮切りに、対中制裁を強化する法案を どんどん作って、今でも執行しているわけです。バイデン政権によって。そして2020年に民主党のバイ デン政権へ政権交代したわけですけれども、アメリカの議会は超党派で対中規制の法案を審議・成立、そして審査中ということで、アメリカ議会の流れは変わっていないわけです。 



これに対して、中国は双循環戦略というものを打ち出しています。この双循環戦略を理解することが、中国の動きを理解する上で大事です。

2020年、米国は対中半導体規制を実施して、中国の兵器近代化の阻止に動いている。さらにTikTokに代表されるような中国製アプリとか、国家安全保障の脅威とする5社、これは具体的にはHUAWEI、ZT、ハイクビジョン、ダーファテクノロジー、ハイテラという無線会社、この5社ですけれども、こういったものをアメリカで使えなくするために、新規の認可を停止するとか。こういった工作員用のソフトとか機器の締め出しに着手しているわけです。

では、中国の国内はどうかというと、今年の3月の全人代で習近平主席の第3期目に入ったわけです ね。そして人事面では習近平の古くからの側近が抜擢された。

そして公安省とか新旧の国家安全省も異例の重用をされているとか。それから習近平氏が重視する総体国家安全官というのは、経済・貿易・ 外交の優先度合いは低くて、共産党独裁の維持が根幹なわけです。そして人事を見ると、中国政府とか共産党の中枢から、改革開放派は一掃されていて、そして先ほどのセクションで言いましたが反スパイ 法が施行されている。

そうすると、西側諸国と独裁国家の価値観対立ということなんですね。つまり、独裁者を個人崇拝する社会と、民主主義社会の価値観が、もう安全保障とか経済に至るまで、あらゆる側面でもう対立して先鋭化している。

では、この独裁者を崇拝する価値観と民主主義の価値観が、手を打つ落とし所があるのかというと、落とし所はないよね、ということなんです。つまり、この問題は、価値観対立は落とし所がないということを、頭の中で理解していくこと。

具体的に言うと、アメリカなどの自由・資本主義の価値観と、中国の王朝、今の王朝は共産党ですね。王朝と奴款を容認するような価値観とは、相容れない。水と油なわけです。


双循環戦略

脱中国の話に入っていきます。その前に、まず双循環戦略とは何か、お話ししますと、2020年当時と いうのは武漢ウィルスがパンデミックを引き起こして、世界経済は低迷し、中国は戦狼外交を行い、そ して中国によるエコノミクス・ステート・クラフトなんかがいろいろ起きていて、じゃあや、っぱりこの グローバルサプライチェーンを見直そうと。脱中国の動きが始まったわけです。

それで中国政府は、こうした西側諸国の脱中国の動きに対応するために、まず中国には14億人の国内市場がある、というエサをちらつかせました。そして、この14億人の国内市場に物を売るためには、 技術を持ち込みなさい、そして生産は中国でしなさいと。

つまり、中国に生産拠点を置くサプライチェーンを拡大させる。そして技術を持ち込ませることによって、西側の技術を移転させて、そして西側に対する技術の依存度を減らしていくということをしたわけです。これで西側諸国の生殺与奪の権を握る、これを双循環戦略というわけですね。

具体的には三本柱ということで、国内の巨大市場を形成すると言っているわけですが、とにかく双循環に外国企業を呼び込む大事なエサなわけです。そして、中国の内需拡大を投資から消費にした。それから今言いましたように、サプライチェーンの海外依存度を下げましょうということをやった。そのために、外国企業による投資を呼びかけをしている。

これを見てお分かりのように、中国の商務部が反スパイ 法が施行されたにもかかわらず;必死に中国への投資をしてくださいと言っているのは、この双循環戦略を達成することが、商務部とか外交部のミッションだからなのです。彼らは彼らで、自分たちのノルマを果たさなければいけない。

だから反外国制裁法で国家安全部門が「お前はスパイだ」と言えばスパイとして不当拘束することができるけれども、それは心配しなくていいですよと。今までと変わりませんと。中国にどんどんいらっしやいと言っている。これはこの双循環戦略というものが背景にあるからなのです。この存在と目的を知っていれば、だまされることはないわけですね。 

ですから、注意点は、西側の対中強硬政策に対する切り崩しの一つなんですね。そして国内の市場を海外企業へのエサとして活用しつつ、口先だけの対外開放を通じて、世界経済への貢献性を示そうとする姿勢を取っているんですけど、これには注意が必要だと。

そして双循環戦略というのは中国政府に とって、中国製造2049を実現するために必要なのです。とにかく西側からどんどん技術を盗んで軍事転用しつつ、自分たちの技術改良に使い、そして2049年に世界最強の製造強国になると言っているわけで すから、西側との遮断が起きると甚だうまくない。

(つづく)

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