コラム(107):米大統領選、共和党候補の行方
アメリカ大統領候補のドナルド・トランプ氏は共和党支持層の間では28%の支持で、24%のテッド・クルーズ上院議員を押さえて首位に立っています。
トランプ氏の人気の背景
オバマ氏は、黒人初の大統領として、人種、文化、宗教に対する偏見のない社会の実現を目指しました。しかし、オバマ氏の政策実行力は中途半端で、「強いアメリカ」を背負っている大統領としての権威を失いつつあります。
そこに、強烈な個性のトランプ氏が登場し、移民やイスラム教徒の排斥を掲げる過激な発言で急激な支持を集めています。
トランプ氏人気の背景には、アメリカ人の気持ちの中にある「優位性」があります。白人は有色人種より優れているとか、キリスト教は他の宗教より優れているという気持ちです。その気持ちが排他的な攻撃性として内在しているのです。
トランプ氏はこうした白人の優位性と排他性をあからさまにアピールすることで、ふだん隠れている国民の感情を引き出したのです。
懸念の声も
このような世論に、ワシントン・ポスト紙は「憎悪をあおり、恐怖につけ込むことで政治的な成功を得ようとしている」「トランプ氏の選挙戦の本質は、自分たちと異質な人たちを卑しむべき人間以下の存在であるかのように扱い、傷つけても構わないとみなす点にある」と指摘しています。彼らが本心で言っているのであればアメリカのジャーナリズムは健全だと思います。
アメリカの精神の本質
一方、アメリカ国民には、多様性を受け入れる寛容性、変化を恐れない精神、政治への強い関心という高い精神性があります。その精神が今日のアメリカの繁栄を築いたと言っても過言ではありません。それは、人種や宗教的優位性の感情を超える、人間としての奥深い精神です。実は、それこそがアメリカンスピリッツです。
かのドラッカー氏は「アメリカの政党は、あらゆる階層のあらゆる人びとの共感を得ることなしに存在を続けることはできない」と述べています。つまり唯一、「アメリカンスピリッツ」が国民共通の共感となるのです。
アメリカ国民はトランプ氏の主張する人種的優位性に流れるのか、それとも寛容なアメリカの精神を取り戻すのか、その選択の時期が迫っているようです。
共和党大統領候補の本命は
ドラマチックに登場したトランプ氏はドラマチックに退場するかもしれません。すでにその兆候は現れています。
当ブログでは、現在2位のテッド・クルーズ上院議員に注目しています。(ご参考 current topics(127):「アメリカ大統領選挙の行方」)
米大統領選挙は国際社会に大きな影響を与えるものです。今後もしっかりと観察してきたいと思います。
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