コラム(502):
Ⅱ.中国の未来――ゼロコロナ vs 白紙革命
(昨日の『Ⅰ.中国の未来――江沢民氏の死がもたらすもの』のつづき)
今までは、市場経済化。国営企業を市場経済に耐える私企業として、どんどん転換していく。国営企業から私営企業にして、国際競争力のある企業をつくっていくという方向も逆転する。国営企業をまた増やしていく。民間企業を潰して国営企業をふやしていく。再社会主義化ですね。
ジャックマーのようなできる人間は邪魔だから、江沢民派でバンバン仕事を伸ばしてきたような実力者は邪魔だから政治的圧力で失脚させる。ちなみにジャックマーさんは、今東京にいるそうです。多分孫正義さんあたりが面倒を見ているんだと思いますが、そういった人間は無用だということになってきています。
そうすると、イギリスの力も要らないよということになるわけです。そもそもイギリスは毛沢東が天下を取る前、井崗山という山にこもって、共産ゲリラを始めたときからずっと毛沢東に目をつけて応援してきているわけです。共産化しても、自分たちとパイプのある人間が権力中枢にいるようにというイギリス独特の二枚舌外交といいますか、表向きは蒋介石を応援していても、実は裏で蒋介石と対立している毛沢東にも紐をつけておく。毛沢東が天下を取ったときには、自分たちにパイプがあるという形にしておきたい。
同じことをやったわけです。これはロシア革命の時にもやっています。ソ連共産党と裏でつるんでいたわけです。イギリスは中華人民共和国が誕生するや否やで、先進国の中では非常に早いタイミングで中華人民共和国を外交承認しているわけですね。ずっと裏のパイプがあったということです。
そういうこともあって、江沢民の時代になって、江沢民とすればアメリカと対抗するためにはイギリスという、ある意味でアメリカのことを一番よく知っているし、アメリカの弱点もよく知っているし、外交の裏の裏まで知っている。そして、世界の金融を中心とした情報をつかんでいる。私が言うところのイギリスの守旧派。その人たちと組んで、アメリカを崩していくということを考えた。
イギリスの方としても自分たちの権力を維持していくためには、どんどん力を伸ばしてきている中国を自分たちがうまく使って、自分たちが上手をとって、むしろ自分たちの言う通りに中国を動かして、そしてアメリカもコントロールしていくと。アメリカとは表向きでは握手をしながら、一方で中国とも握手をして、ライバル同士を両方うまく操っていくというイギリス独特の外交、金儲けをやろうと考えていた。
ですから、江沢民時代はイギリスの守旧派と中国は非常に仲がよかった。習近平は完全方向転換したわけです。もうイギリスの力は要らないよと。イギリスの下請けはもうやんないよということ。それで蹴っ飛ばしたわけですから、スナクさんが「もう黄金時代が終わった」というのは当然ですね。
同時に中国共産党の党大会で習近平が異例の3期目に入った。独裁権力を確立した。これでは当面中国とはおいしい関係、甘い汁を吸うことはできないということで、中国との黄金時代は終わったとはっきり言ったということ。スナク首相の背後にある事情ということになります。
しかし、3期目に入って習近平は地獄を見るということを申し上げたい。ここから完全な独裁権力を手に入れて、さまざまな経済問題、全て彼に責任がありますから、経済問題も出てくる。外交上の行き詰まりの問題も出てくる。社会的な問題も出てくる。これでもう問題は山積みになっております。
そして、自分のイエスマンしか周りに置いていませんから、一種の裸の王様状態。正しい民意が伝わらない。社会の現実の姿というものが彼には見えていない。当然、それに対する対処法も誤るということで、地方レベルではゼロコロナ政策に対する反乱が起きてきたということです。
これに対しては、習近平は今のところうまく対処していると思います。一方では厳しいゼロコロナ政策を緩めています。地下鉄に乗るとか、バスに乗るとか、そういうのはPCR検査が要らない、そういう形になってきている。一方で、白紙革命とかをやった、学生とか若い人たちに対する陰での弾圧は着実にやっているということです。
なぜゼロコロナ政策、ものすごく厳しく、教条主義的に絶対妥協しないとやっていたのを緩めたのかというと、簡単ですね。それはライバルがいなくなったからです。党大会で完全に中国共産党トップレベルを掌握してしまったと。7人いる政治局常務委員は全部習近平派。本人とあと6人。
ですから、今まではゼロコロナ政策が失敗したとなると、政治権力を失う危険性がありました。それはもうありません。党のトップが完全に掌握したわけです。軍も公安部門も完全に掌握しました。怖いものがありません。ですから、妥協していいんです。
しかし、白紙革命は反権力、反中国共産党の運動ですから許せないということで、陰で徹底的に弾圧している。この二重作戦でやっています。一方で妥協しながら、そして陰では目に見えない形で弾圧を個人的にやっているということ。そういう硬軟両用の作戦で相対峙しているということです。
これに対して白紙革命をやっている側は反習近平ですから、その分江沢民の追悼という大義がありますので、白紙革命の方が急に消えてしまった。これはある意味で白紙革命をバックアップしていたのが、江沢民派だったということもあるわけですね。亡き江沢民派といいますか、反習近平派のシンボルとして、江沢民派の人たちが応援していたわけでしょう。
江沢民が死んじゃったんで、追悼しますよということになって、白紙革命が同時に消えたということは、白紙革命のバックにいたのは江沢民派だったということも言えます。
しかし、これは白紙革命をやっていた人たちは根強く、といいますか、当局が汚い形で弾圧してくるわけですから、それに対して寝技を用いています。例えば、弾圧に来た警察官の本名、住所、その他の情報を晒してしまう。公開してしまうとかですね。かなりいやらしい寝技的なやり方で白紙革命の参加者たちも抵抗はしているということです。
こういう問題が今後、どんどん純粋な経済問題以外にも出てきます。前途多難の習近平さんということになると思います。
(明日は『中国はコロナで滅びる!?』です)
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