①トランプ次期大統領の人事——国防長官
日本メディアでは報じられることが少ないトランプ政権の布陣について、米政治に精通する専門家に、人隣を含めた詳しい解説をお願いしました。これほどまでに詳しい解説はないと思いますので特別に公開させていただきます。
トランプ氏が明言し、正式に指名された人事について、その概要をお伝えします。
国防長官に指名されたピート・ヘグセス氏
まず、国防長官にはピート・ヘグセス氏が指名されました。彼は40代という若さながら、その能力が高く評価されています。
ピート・ヘグセス氏は1980年生まれの44歳で、プリンストン大学を卒業後、陸軍に入隊。イラクやアフガニスタンで実戦経験を積んだ人物です。トランプ政権の第1期において、退役軍人省の長官候補に挙がりましたが、反対の声が多く実現には至りませんでした。
ヘグセス氏は、現在の米軍の「ウォーク化」に対する強い批判で知られています。ウォーク化とは、リベラル左派の影響を受け、軍が本来の戦闘力を損ない、解体に近い状態に陥っている状況を指します。彼は、この現状を打破し、軍を再び戦える組織へと立て直すべきだと主張しています。
最近では、軍での経験を活かし、FOXニュースで司会を務めるなど、メディアでも活躍していました。ヘグセス氏によると、米軍はオバマ政権の8年間とバイデン政権の4年間、計12年にわたり劣化が進んだといいます。その要因には、LGBTQ政策やCO2削減といった優先事項が挙げられています。これらは軍の使命である国防とは無関係であり、戦争遂行能力を低下させるものだという批判です。
こうした弱体化は偶然ではなく、民主党内の極左勢力やグローバリストによる意図的な政策だと、ヘグセス氏は指摘します。国家の中枢を担う軍を解体することは、国家そのものの解体に繋がる重要な一手段だという考えです。この現状を逆転し、軍を再建する必要があるとヘグセス氏は主張しています。
彼は新たな役割を担うこととなるでしょう。陸軍では少佐の階級で退役しており、いわゆるエリート軍人というわけではありません。しかし、今回の長官級人事では珍しくプリンストン大学出身であり、アメリカの名門アイビーリーグに属する大学の卒業生です。それでも、今回のトランプ政権における長官級の人事では、ハーバードやイェールといった他のアイビーリーグ出身者はほとんど見られません。
トランプ政権の大臣級ポストに就く人々には、いわゆる叩き上げタイプが多いのが特徴です。エリートといっても、大都市の学閥に属するタイプではなく、地方で知事として活躍してきた人やビジネスマンとして成功を収めてきた人物が中心です。軍のエリートと言えば、陸軍士官学校(ウエストポイント)や海軍・空軍の士官学校を卒業し、その後、少将・中将・大将へと進むキャリアを持つ人々が思い浮かびますが、ヘグセス氏はそうした経歴ではありません。
彼は実際に戦場を経験し、現場を深く理解している人物です。そして、米軍を本当に改革し、戦える軍隊へと再建するという強い使命感を持っています。こうした背景から、ヘグセス氏は国防長官に指名されました。彼が新たな役割を通じて米軍の再生に取り組む姿勢に大いに期待が寄せられています。
(追加情報)ピート・ヘグセス国防長官候補 vs 嘘つきメディア
ピート・ヘグセス氏、国防長官として大変優秀な方なんですが、それだけに米軍を徹底的に作り直そうとしているため、マスコミがバッシングしています。
これは大きく言えば保守の側からの批判ではありますが、保守でありながら反トランプのウォールストリートジャーナルが、ヘグセス氏のことをスキャンダルや悪口を書き立てて、「トランプも考え直しているんじゃないか」といった内容を報じています。
さらには「トランプがフロリダ州のデサンティス知事を代わりに考えている」ということまで勝手に書いています。これに対してヘグセス氏は、トランプと直接会って話をし「勇気づけられた」と言っています。「全面的に支持すると言われた」とも語っています。
実際のところ、ウォールストリートジャーナルは12月3日に「トランプ氏がヘグセス氏を撤回し、新国防長官としてデサンティス・フロリダ州知事を検討している」という記事を掲載しましたが、これは全く根拠のない飛ばし記事に過ぎません。同様に、ニューヨークタイムズも12月4日に類似の記事を発表しました。
これに対し、ヘグセス氏はCBSの記者に対して次のように語っています。「今朝、トランプ大統領と話をし、私を支持しているので前進し続けるようにと激励を受けた」と述べ、「自身はあくまで戦い続ける」との姿勢を強調しました。
ヘグセス氏を巡っては、女性暴行疑惑などが取り沙汰されていますが、これらは大手メディアによる誹謗中傷に過ぎないとされています。ヘグセス氏側はこれらの疑惑を全面的に否定しています。実際、この「暴行疑惑」というのも、被害者の名前が一切明らかにされておらず、それを追及している関係者の名前も公開されていません。このような曖昧な情報は噂話の域を出ません。
こうした手法は、アメリカのメインストリームメディアが特定の人物を失脚させようとするときによく用いる手段です。匿名の情報を利用して噂を流し、その噂を根拠に批判することで、共和党の支持を揺さぶることが狙いだと考えられます。
現在、共和党は上院で100議席中54議席を確保しています。しかし、4人以上の議員が反対に回ると困難な状況となります。仮に50対50の同数となれば、副大統領の1票で可決可能ですが、ギリギリの状況が続いています。
これに対してヘグセス氏は、自身を批判する記事を掲載したウォールストリートジャーナルに直接投稿し、次のような声明を発表しました。
「I’ve Faced Fire Before. I Won’t Back Down.(これまでも困難に立ち向かってきた。決して引き下がらない)」
彼は、戦場での経験を引き合いに出し、「匿名の中傷に基づくメディアの見せしめ裁判には断固として戦う」との決意を示しました。
さらに、彼の言葉を日本語に訳すと、以下のような内容になります。
「軍での戦闘、転職、離婚、家庭の問題など、これまで多くの試練を経験してきた。私は母をとても愛しており、母もまた私を愛してくれている。これまで常に正直であり、誠実であり、情熱を持って歩んできた。
しかし、多くの退役軍人が次の人生に目的を見出せず、酒に溺れ、うつ病を患い、最悪の場合は自殺に至る状況を理解している。なぜなら、自分もそのような状況を経験したことがあるからだ。
だが、神の恵みによって私は別の道を歩むことができた。我が主であり救い主であるイエス・キリストによって人生を立て直すことができた。私は神の恵みによって救われたのだ。
メディアは匿名の情報に基づいて私を中傷する記事を次々と掲載しているが、これらは典型的な誹謗中傷の手法だ。彼らは証拠も名前も明かさず、私を支持する多くの人々の声は完全に無視している。
彼らはブギーマン(子供を攫う悪魔)のような存在を作り上げる必要がある。それは、私が彼らの組織的愚行に対する脅威であると彼らが認識しているからだ。唯一、この点については、彼らの認識は正しい。」
ヘグセス氏の主張は、メディアが行う一方的な報道や偏見に満ちた攻撃に対して、毅然とした態度を取るものです。彼は、自身が敵対勢力にとって脅威であるという事実を認めつつ、それに屈しない覚悟を示しています。
「グアンタナモ基地やイラク、アフガニスタンで、あるいは州兵として、私と一緒に従軍した人々に話を聞いてみるといいだろう。彼らは私を支持してくれており、私はそれを大変光栄に思っている。どんな戦いにおいても、私は後に引き下がることはしなかった。
今回の戦いでも決して引き下がることはしない。トランプ次期大統領が国防総省を率いる立場に私を選んでくれたことに感謝している。そして、私が期待しているのは、名高い立派な上院議員による公正な指名承認の公聴会である。メディアによる見せしめ裁判ではない。」
と、堂々と反論しています。こうした手法は、以前から繰り返されてきたものです。たとえ清廉潔白な人物であっても、メインストリームメディアが根拠のない噂を立て、その人を引きずり下ろそうとする行為が平然と行われてきました。これに対し、ヘグセス氏は「最後まで戦う」と決意を示しています。
しかし、問題はこれだけにとどまりません。共和党内にも、「RINO(Republican In Name Only)」、つまり「名ばかりの共和党員」と呼ばれる勢力が存在しています。彼らがメインストリームメディアと連携して動くような事態になれば、さらなる困難が予想されます。
こうした背景の中で、この闘いは単にヘグセス氏個人をめぐるものではなく、トランプ政権全体の戦いの始まりを象徴するものでもあるのです。
(つづく)