赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

2025年のトランプ戦略——ウクライナ停戦、米露関係修復、イスラエル和平

2025-01-02 00:00:00 | 政治見解
2025年のトランプ戦略
——ウクライナ停戦、米露関係修復、イスラエル和平


2025年.トランプ氏の大統領復帰は国際情勢に大きな変化をもたらすことと思われます。国際政治学者の許可を得て掲載いたします。


国際情勢の大きな流れについて考察していきましょう。まず、トランプ氏が和平に向けて動き出している点が注目されます。ウクライナ戦争における和平の実現、中東紛争の解決、特にイスラエルとイランの間の緊張緩和を図り、第3次世界大戦を防ぐための取り組みが強調されています。

トランプ氏の勝利スピーチを聞いた際、私自身非常に感銘を受けました。その言葉から伝わってきたのは、トランプ氏が大統領に就任することで、世界が大規模な戦争を回避できるという安心感でした。1月20日の大統領就任式までは公的な行動は制限されますが、それにもかかわらず、トランプ氏はすでに外交活動を開始しています。

興味深いエピソードとして、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談の際、イーロン・マスク氏が同席し、電話越しに議論が行われたという出来事があります。

さて、トランプ氏の和平戦略について、大まかに説明すると以下のような内容になると思います。

まず、ウクライナの停戦を実現し、これを通じて米露関係を修復するということです。かつて、トランプ氏の第1次政権時代に、米露が協力してイスラム国(IS)を叩き、壊滅させることに成功した実績があります。この背景には、イスラム過激派テロリストが両国にとって共通の敵だったという事情があります。

もしこの戦略がうまく進展すれば、ロシアと中国の間に亀裂を生じさせ、中国を孤立化させるというトランプ氏の狙いが見えてきます。また、ロシアはイランと非常に深い関係を持っています。そのため、ロシアがイランに対して和平に向けた働きかけを行い、同時にアメリカはイスラエルに働きかけることで、イスラエルとイランの和解を目指す構図が見えてきます。

現在、中東地域における最大の懸念は、イスラエルとイランの間で大規模な戦争が勃発するかどうかという問題です。この紛争を抑えることができれば、中東全体が和平に向けて大きく進展する可能性があります。イランはこれまで、ハマスやヒズボラに資金を提供し、反イスラエルの活動を支援してきましたが、和平実現のためには、この方針を転換させ、共存共栄を進めていく必要があります。

トランプ氏はアメリカ側からイスラエルに、プーチン大統領はイランにそれぞれ働きかけ、中東における大規模な和平の枠組みを構築しようとしています。また、トランプ氏と親しい関係にあるサウジアラビアの皇太子も、この計画に協力する可能性が高いでしょう。サウジの皇太子はプーチン大統領とも良好な関係にあるため、サウジアラビアが仲介者として重要な役割を果たし、妥協を促進する陰の力となることが期待されます。

中東地域において、サウジアラビア、イラン、イスラエルが共存共栄できる未来を目指すことは重要です。この目標は非常に難しいものですが、長い時間をかけて取り組むべき課題です。中東和平は非常に複雑であり、実現には多くの時間を要するでしょう。


終焉に向かうGreen Scam・自由貿易主義・国際機関

それからCOP29が11月11日からアゼルバイジャンのバクーで開催されました。このバクーは大油田のある都市として知られ、会議は22日まで行われる予定です。私はこのCOP29について、「CO2カルトの終焉」の象徴であると考えています。これは、いわゆる「グリーンレボリューション」や「グリーンスキャン」(グリーン詐欺)が終わりを迎える兆しではないかと思われます。

今回のCOP29は非常に低調で、以前のような熱気が感じられません。そして今後、会議の重要なテーマである資金集めもますます困難になると予想されます。これまでは、先進国から発展途上国へ資金を渡し、それを基にグリーンレボリューションを進めようとしていました。しかし、この仕組みの限界が露呈してきています。先進国からの資金が十分に集まらなくなりつつあるのです。

イーロン・マスクのような立場から見れば、このような第三世界への補助金政策はもはや機能していないと言えるでしょう。提供された補助金が適切に利用されず、何に使われているのかが不明なケースが多いのが現実です。これらの資金が地球温暖化を防止することにはならないだろうという事です。

ウクライナ戦争の終結と和平は、比較的スムーズに進む可能性が高いと考えられます。しかし、懸念すべき動きも報じられています。最新のニュースによれば、バイデン政権がウクライナのゼレンスキー大統領に対し、アメリカ製ミサイルを使用してロシアを攻撃する許可を与えたとのことです。

このような行動がエスカレートすれば、アメリカとロシアの直接的な軍事衝突、さらには戦争に発展する可能性があります。これを防ぐことが、トランプ氏に期待される重要な役割です。現在の状況を鑑みると、バイデン政権が第3次世界大戦を引き起こそうとしても、その実現は難しいと言えるでしょう。というのも、2024年1月20日にはトランプ氏が正式に大統領に就任することが確定的だからです。

現時点では、バイデン政権に残された抵抗勢力が、最後の悪あがきとしてこのような挑発的な行動を起こしているように見受けられます。アメリカ製ミサイルを使用してロシア領を攻撃するという決定は、無謀であり非常に危険です。

もう一つ触れておきたいのは、いわゆる「グリーン詐欺」と呼ばれるものについてです。私がよく例に挙げるのは、洋上風力発電です。地上型の風力発電は一定の効果がありますが、洋上風力は効率やコスト面で大きな問題を抱えています。また、太陽光発電についても、中国から輸入された粗悪なパネルを利用し、それを並べて政府の補助金を受けることを前提にしたビジネスモデルは持続可能とは言えません。

発電方法として本当に価値があるのは、消費者から正当にお金を得られる経済効率の良いものです。それ以外の手法では、いずれ行き詰まるでしょう。例えば水素エネルギーもありますが、現状では非効率性が大きすぎます。

さらに、新型の大型原子力発電所も議論の的となっています。運転中に二酸化炭素を排出しないという理由で推進されていますが、ウラン燃料の製造プロセスや施設の建設、最終的な廃棄物処理や廃炉作業などを考慮すると、多大なコストがかかります。本来、原発は40年程度の運転を目安として廃止することが基本でしたが、近年ではコスト削減のために修復して寿命を延ばす方法が取られています。

電力会社にとっては、せっかく建設した設備をできるだけ長く活用したいというのが本音です。そのため、「まだ使えるので、40年を過ぎてもあと20年の延長を許可してほしい」という要望が出ています。しかし、老朽化した設備を維持し、メンテナンスを行うには多額の費用がかかります。

以前お話ししたアメリカのジョージア州で稼働を開始したボーグル原発では、建設に膨大な費用と時間がかかりました。同様に、フランスの国営電力会社EDFも国内外で原発を建設していますが、アメリカやイギリスでのプロジェクトでは予算の大幅な超過が続いています。建設費用が膨れ上がると、そのコストは最終的に電力料金に上乗せされるため、電力価格が高騰してしまいます。

こうした大規模な原発建設は、国家全体の経済効率を考えれば避けるべきです。ここに、いわゆる「グリーンスキャム」の問題が含まれています。それは、洋上風力発電や水素発電、水素関連ビジネス、さらには新型の大型原発などです。

もう一つの大きな流れとして、国際機関の重要性がさらに薄れていくという現象が挙げられます。国際機関が果たす役割が縮小し、その影響力が減少しているのです。トランプ氏の二国間主義的なアプローチはこの流れを象徴していますが、これはトランプ政権特有の現象というよりも、これまでのグローバリズムが限界に達しつつあることの表れと言えるでしょう。

国際機関とは、そもそもグローバリズムを推進するために設立されたグローバルエリートの組織であり、現在では「もう必要ない」とみなされるようになっています。これからの国際政治は、国民国家や主権国家の利益、いわゆる国益を中心に展開されていくと考えられます。こうした背景を受けて、WTO(世界貿易機関)は自由貿易主義の終焉を象徴する存在になりつつあります。

具体的な動きとして、11月8日にWTO次期事務局長選挙の立候補受付が締め切られました。この選挙では、立候補者が現職のンゴジ・オコンジョ=イウェアラ氏ただ一人しかおらず、彼女が再任される見込みです。オコンジョ=イウェアラ氏はナイジェリアの元財務大臣であり、トランプ政権のライトハイザー通商代表からは、「ジュネーブにおけるチャイナの同盟者」と見なされていました。つまり、中国寄りの立場でWTOの運営に関わってきた人物とされています。

立候補者が一人しかいないという事実自体、WTO事務局長というポジションの魅力が失われていることを物語っています。この動きは、国連をはじめとする国際機関全体の権威失墜の象徴でもあります。今後、トランプ政権はこうした国際機関を無視し、より独自の方針で外交を進めていくことが予想されます。

この流れが進むと、他の国々も同様の政策を取る可能性が高いでしょう。あるいは、国連がどのような決議を採択しても「従わない」というのがトランプ氏の基本的な姿勢です。これを考えると、初めから国連に関与しない方が首尾一貫した態度とも言えます。

こうした状況の中で、国際的な自由貿易主義を推進してきた世界貿易機関(WTO)はすでに衰退の兆しを見せています。同様に、国際通貨基金(IMF)や世界銀行(World Bank)、さらには国連そのものも、役割を終えつつあると言えるでしょう。これらの機関は、グローバリズムを推進するためのグローバリストの組織でしたが、その時代は終焉を迎えようとしています。

これは単に自由貿易主義の終わりを意味するだけでなく、グローバリズム自体が転換期を迎え、反グローバリズム的な動きが加速していく兆しでもあります。この流れが、国際政治と経済の新たな方向性を形成していくでしょう。

これらの変化をまとめると、トランプ政権の政策には次の3つの大きな方向性が見えてきます。

1.世界の平和構築への取り組み
2.CO2削減カルト、いわゆる「グリーンスキャン(環境詐欺)」の終焉
3.国際的なグローバリスト組織の衰退

トランプ政権の誕生により、国際政治と経済の構図はこれら3つの視点から大きく変化していくと考えられます。


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