赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

習近平側近の失脚と安定しない人民解放軍

2024-12-30 00:00:00 | 政治見解
習近平側近の失脚と安定しない人民解放軍




中国共産党軍の動向に関する情報です。苗華(びょうか)氏が失脚しました。苗華氏は、習近平主席の側近中の側近として知られ、かつて中国共産党軍の政治部長という要職を務めていました。

この状況は、習近平主席が軍を完全に掌握しきれていないことの表れとも考えられます。さらに、中国人民解放軍の制服組トップである張又侠氏との間に対立があるのではないかとの憶測も浮上しています。

中国の政治事情に詳しい専門家にご意見を伺いました。許可を得て掲載しています。


12月5日の報道によると、董軍氏は上海で開催されたアフリカ・ギニア湾安全保障会議に国防大臣として出席しており、現段階ではその地位を維持していることが明らかになりました。ただし、今後の動向によっては失脚の可能性も否定できません。

一方で、董軍氏の上司にあたる苗華(びょうか)氏は、すでに失脚が確認されています。苗華氏は「苗(苗字)と華(中華の華)」という字を名前に持ち、習近平主席の側近中の側近として知られていました。習主席が福建省の省長(県知事に相当)を務めていた時代からの知人であり、その信頼は厚いとされていました。

苗華氏はかつて陸軍の政治部長を務めていましたが、その後、海軍に異動となり、習近平主席の敵対派閥を一掃する役割を果たしました。習主席から大きく引き立てられた苗華氏は、軍全体の政治部長という要職に就任しました。

軍の政治部長とは、軍人の出世に関わる重要なポストです。たとえば、ある将官を少将から中将に昇進させる場合、その人物の思想信条や忠誠心を調査し、報告する役割を担います。政治部長の承認がなければ、軍内での昇進は不可能であり、そのため賄賂が集中しやすく極めて強大な権力を持つ立場といえます。

習主席は福建省時代からの腹心である苗華氏を、この強力な政治部長の座に据えました。しかし現在、苗華氏は失脚したことが確認されています。一方、苗華氏の引き立てを受けてきた国防大臣の董軍氏は、現時点ではその地位を維持しているものの、今後の動向が注視されています。

現在、中国人民解放軍の制服組(軍人)のトップは張又侠氏です。70代のベテランであり、かつて中越戦争(ベトナムと中国の戦争)にも従軍した経験を持つ、数少ない実戦経験者とされています。しかし、この張又侠氏と習近平主席との間には対立関係があるのではないか、という見方も存在します。

12月4日、習主席は張又侠氏を含む中央軍事委員会のメンバーを引き連れ、情報支援部隊を視察しました。この様子は中国中央テレビ(CCTV)で報じられ、あたかも団結を強調するかのような演出がなされていました。

現在、中国では五つの戦区に軍が再編されています。以前は七つの戦区に分かれていましたが、改革により五つに統合されました。しかし、その五つの戦区のうち、なんと三つの戦区のトップがすでに失脚している状況です。残る二つの戦区については、張又侠氏の影響力が強いとされています。

この状況は、習近平主席自身が信頼して任命した人物でさえ、首を切らざるを得なくなっていることを示しております。

これでは中国軍内部は非常に不安定な状況にあります。国防大臣は2代続けて解任されており、その理由は汚職問題、すなわち賄賂の受け取りや腐敗が原因とされています。さらに、ロケット軍においては、そのトップ層が一掃される事態に陥っています。

興味深いのは、これらの解任や粛清の対象者は、習近平主席自身が任命した人物であるという点です。習主席は反腐敗運動を掲げ、粛清を徹底していますが、自ら任命した人物でさえ首を切らざるを得ない状況にあるのです。これは「子分を守れないのか、それとも守らないのか」という疑問を生じさせます。

こうした粛清が過剰に行われることは、軍内部にとって歓迎すべきことではありません。



中国において軍人になる理由の多くは「金儲け」と言われています。軍内部では上官に賄賂を贈り、昇進の道を確保し、自分が上の立場に立った際には部下や業者から賄賂を受け取る――このような仕組みが存在してきました。しかし、この慣習が習近平主席による反腐敗運動によって脅かされているのです。

問題は複雑です。習近平主席が解任した軍人は、張又侠派による攻撃から守れなかったのか、それとも別の派閥の攻撃ではなく、「任命したものの信頼に足らない」と判断し、自ら解任したのか――その真相は明確ではありません。しかし、腐敗の程度があまりにひどくなり、軍隊としての機能が失われていると見なされたことが背景にあるのでしょう。例えば、ロケット軍では幹部層の汚職が表面化し、「戦える軍隊ではない」とまで言われています。

習近平主席の視点からすれば、「賄賂もある程度までは容認するが、限度を超えてはならない」という考え方でしょう。しかし、現実には軍内部の腐敗が止まらず、粛清を繰り返すしかない状況に追い込まれています。その結果、軍人たちは「安定した金儲けができない」という不満を抱くようになります。

さらに、習近平主席の子分たちにとっても問題は深刻です。「自分たちが守ってもらえないのであれば、忠誠を尽くす意味がない」と考える者も増えつつあるでしょう。この状況から、習近平主席の軍に対する統制力が徐々に弱まっているのではないかと考えられます。

中国は台湾周辺で頻繁に軍事演習を行っていますが、これにより軍内部に疲労が蓄積していると指摘されています。特に東部戦区は台湾への軍事行動を主導する部隊であり、度重なる動員によって兵士たちの負担が大きくなっています。

本来、中国人民解放軍としても、こうした大規模な軍事演習は負担であり、望ましいものではないでしょう。特に東部戦区は、台湾を対象とした演習を頻繁に行う地域ですが、頻繁な動員が続き、兵士や指揮官の疲労が蓄積しています。

このような状況では、彼らは安心してお金儲けができません。その結果、習近平主席への不満や反発が軍内部で高まっているのではないかと指摘されています。現在の中国軍は、軍事力としての整備を進めながらも、内部の疲弊と不満が大きな課題となっているのです。
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