コラム(486):
カリスマ願望の習近平―現代中国皇帝論②
(『情報統制と共同富裕――現代中国皇帝論①』のつづき)
国際政治学者が語る習近平氏の三つの奇行
(奇行①は昨日のブログに掲載)
奇行② 思想教科書の配布
これは、北京市の小学校。塀の隙間にへばりつき、教室の中をじっと見つめる大人たち。彼らはこの小学校に通う子供の親。新学期から始まる授業の内容を心配し、様子を見に来ていた。9月から始まった新たな事業、それは「習近平思想」を学ぶというもの。小学校から大学まで、習近平の考え方や価値観を学ぶ授業が必修化されることとなった。授業で使われているのは習近平の思想だけをまとめた一冊の教科書。その内容は――
議長「国家主席に選ばれたときの心境は?」
習氏「これほど大きな国の責任は非常に思い。『無我』の状態で、中国の発展に身を捧げたいと思った」
など習近平個人を持ち上げる内容が多く見受けられる
また小学生用のテキストには
「習おじいさんは忙しい時間を割いて、私たちの成長を見守ってくれている」
などと書かれており、単なる国のリーダーではなく、まるで「国民の父」とでも言うような振る舞いが描かれている。
さらには「習氏の金言」として自分の語録も掲載、習近平個人をあがめさせるような内容のは、もはや一種の新興宗教。
中国の歴史において、各時代の指導者が政治理念を国民に浸透させる、そんな政策は確かにこれまでもあった しかし、今回のように、個人崇拝を促すような教科書は歴代の中国の指導者たちですら作っていない。ただ、ある一人の人物を除いては。
奇行③ 経済破綻
習近平の奇行、その極め付きはこれだろう。「中国政府の制裁によりアリババグループの時価総額が39兆円減少」。
中国最大手のEC企業、アリババグループに突如、中国金融当局から制裁が下された。アリババといえば、20年以上もの間、中国のインターネット業界を支え続けてきた、IT系企業のトップ。時価総額においても、アップルやマイクロソフトに追随し、世界9位にランクされるほどだった。
そんなアリババの傘下企業であるアントグループが上場を控えた中、アリババの経営陣は中国政府に呼び出された。そして、話し合いの末に、なんと上場予定日の二日前にして、急遽、取り止めになったのだ。さらに、その一か月後から厳しい捜査が始まり、中国当局から3000億円の罰金が課され、一年間で、アリババの時価総額の内、39兆円が簡単に吹き飛んでしまった。
政府の規制によって失速しているのはアリババだけではない。一連の取り締まり強化で、中国のネット大手5社の時価総額は、今年、すでに計15兆円も減少している。
さらに、政府の制裁を恐れてか、中国のIT大手たちはゴマすりの「1兆円越え」の寄付に走る始末。簡単に言ってしまえば、習近平はわざわざ自分の国のトップ企業に言いがかりをつけて、次々と叩き潰す行動をとっているということ。
なぜ、このように自国で最前線を走る企業に足かせをつけるのか。習近平の狙いは一体何なのか。中国発展のためというなら、今までの行動はすべてその逆を行くもの。何故、わざわざ自分の首を絞めるようなことをするのか、実は、制裁を受けていたIT企業にはある共通点があった。
(つづく)
お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com【コピペしてください】
FBは https://www.facebook.com/akaminekaz