独仏各政権の弱体化について
早速、国際政治学者の解説をご覧ください。
概要:独仏の弱体化とアメリカ1強
12月4日、フランスのバルニエ内閣が崩壊しました。大統領は引き続きマクロン氏ですが、新たな首相を任命し、内閣を再編しなければならず、マクロン氏にとっても非常に大変な状況です。
一方、ドイツでも連立政権がすでに解体されています。そして来年2月23日には総選挙が予定されています。イギリスに目を向けると、EU離脱後の経済状況は依然として厳しく、総選挙で労働党内閣が成立しましたが、その後、再選挙を求める署名が300万人以上集まり、政府に突きつけられています。このように、英独仏ともに経済が行き詰まり、それに伴って政治的にも混乱が続いている状況です。
これらの根本的な原因の一つとして挙げられるのが、CO2削減政策です。「絶対的にCO2を削減する」という目標のもと、全ての車を電気自動車に移行させる動きが進んでいます。また、ウクライナ戦争への支援に多額の資金が投入されている点も、英独仏をはじめとする多くのEU諸国に共通しています。しかし、イタリアやハンガリーはこれらの方針と距離を置いています。それでも、特に英独仏においてはこれらの政策が経済の停滞を招いているのは明らかです。
さらに、右派にしても左派にしても、政権を担うのはグローバリスト的な立場の政党が主流であり、こうした体制が結果として政治の行き詰まりを招いています。現在、イギリスでは内閣が継続していますが、ドイツとフランスでは内閣崩壊が起きています。これらは構造的な問題によるものと考えられます。ヨーロッパ経済が完全に行き詰まっているのです。
一方、アメリカではトランプ政権が誕生し、経済的には「アメリカ1強」の体制がますます強まっています。投資先としても、これまで経済の優等生とされていたドイツですらその地位を失い、フランスやイギリスはさらに弱体化しています。その結果、世界の資金の行き場として、アメリカが唯一無二の存在となりつつあります。この「アメリカ1強」の状況は、しっかりと把握しておくべき重要なポイントです。
独仏の弱体化は中国への依存しすぎにある
フランスのバルニエ内閣が崩壊という事態は、ドイツでも同様で、トランプ氏が11月5日に選挙で勝利した流れが間接的に反映されていると言えるでしょう。アメリカが「CO2削減を絶対視する政策を取らない」という姿勢を示す中で、CO2削減に固執してきたフランスとドイツの連立内閣が次々と崩壊しているのです。
トランプ氏がウクライナ戦争の和平を訴える一方で、独仏の内閣は「ウクライナ戦争を推進する」と明言していました。同時に、CO2削減政策を掲げた両内閣が崩壊した点も注目に値します。この政策では、ガソリン車やディーゼル車を廃止し、全面的なEV化を推進する方針が採られてきましたが、その結果、ドイツの自動車産業は深刻な打撃を受けています。現在、ドイツの自動車産業は大規模な危機に直面していると言えるでしょう。
この問題の背景には2つの要因があります。1つ目は、ドイツがロシアからのエネルギー供給、特に天然ガスに過度に依存しようとしたことです。ノルドストリームを通じた安定供給を期待していましたが、ウクライナ戦争の勃発によりそれが不可能となり、大きな打撃を受けました。この点については、ある程度の同情の余地があります。
しかし、2つ目の要因は明らかに戦略的な誤りです。それは、中国に対する過剰な依存です。ドイツは中国を製造業の中心地として利用すると同時に、14億人の巨大市場として楽観視してきました。安価なロシアのエネルギーを使って製品を生産し、それを中国で販売するという構図を描いていたのです。この戦略は結果的に失敗に終わりました。
ロシアとの関係については、ウクライナ問題が解決し、ロシアとヨーロッパが再び友好的な関係を築けるようになれば、ノルドストリーム1や2が再稼働し、天然ガスの安定供給が可能になるかもしれません。これは、トランプ氏も望むところでしょう。
一方、中国については共産党独裁体制が続いているため、非常にリスクの高いパートナーと言わざるを得ません。フォルクスワーゲンをはじめとするドイツ企業が中国依存を深めすぎた結果、抜け出せない状況に陥っているのは明らかな戦略的失敗です。この点は、日本企業にも警鐘を鳴らすべきでしょう。
CO2削減政策は経済を圧迫し、さらにウクライナ戦争の影響でコストが増大しています。このような中で、フランスやドイツの連立内閣は、右派であれ左派であれ、グローバリスト的な性格を持ち続けています。その結果、経済と政治の両面で行き詰まり、崩壊が続いているのです。