Akatsuki庵

後活(アトカツ)中!

「酒飯論って?」からの道のりは長かった~

2018年10月25日 11時19分45秒 | 美術館・博物館etc.
★茶道資料館 サイト
 秋季特別展『酒飯論絵巻-ようこそ中世日本の宴の席へ-』 ※10月6日(土)~12月4日(火) 展示リスト

私が「酒飯論」に出会ったのは、茶道文化検定の公式テキストを通してのことだった。

「懐石」の項目で、歴史を紹介する文章の中で2度ほど登場していったっけ、、、

どういう書物かわからなかったので、頭に入ることなく、
当然のことながら、本番の検定試験で出題されても答えようがなく、何度も失敗した。

で、丸暗記~

丸暗記する!と割り切ると、意味もわからず覚えてしまうのだから、おそろしい。
てか、気持ち悪い。

ということで、茶道資料館リニューアル後の展覧会が「酒飯論」だと知って、
「おぉ! あれかぁ!」と思った。

やっと、丸暗記だけではなく、その本質を知ることができる!と楽しみに資料館へ行った。
(今回の京都旅行はココの日程を軸に計画を立てたくらいだ)

さて、酒飯論とは、なんぞや?

正しくは「酒飯論絵巻」というらしい。

1階の第一展示室はその絵巻がじっくり鑑賞できる。

室町時代に成立し、飲食する姿や調理する場面が描かれていて、中世の風習を知る資料だそうな。
そして、江戸時代になって多くの写本が作られたそうな。

原本みたくなっているのが、狩野元信筆(と伝えられる)ものということで、「へぇ~」という感じ。
狩野派といえば、花鳥風月画という印象が強いので、こういう俗っぽいものも手がけていたのが意外といえば意外。

さて、資料というから難しいものかと思いきや、ストーリーみたいなものがあって、大衆的。

4巻からなる巻物には3人の典型的な人物が出てくる。

第1巻はその3人が語り合っている。

1人目は酒好きの男、2人目は下戸だけど御飯好きな僧侶、3人目はお酒も御飯も両方ほどほどに楽しむ男。

そして、それぞれの男が楽しむ様が第2巻、第3巻、第4巻に紹介されている。

第2巻は酒宴。
ちょっと、エグイ。
御機嫌さんで大きな盃を傾ける男の隣で、飲み過ぎでバテバテの男がいる。

脇に半裸で踊る男や、鼓や笛、手拍子をはやし立てて宴会を盛り上げる輩たち。

中央にはお酒をついで回る稚児。
彼の持っている燗鍋は現在でも神前挙式の三三九度で出てくるものと同じ形状の物。

なるほど、あれはこの頃からあるものなのねぇ。

と思いつつ、視線を移していくと、介抱されながら部屋を出て行く者や庭に吐いてしまう者。

悪酔いする人たちは今も昔も同じだなぁ。

第3巻は好飯の会。

朱色の脚付のお膳に朱色の椀が載っている。飯椀に山盛りに盛られた御飯は置いといて、
懐石膳や椀の原点がそこにあるように思える。

飯椀に汁椀、向付には小さい椀が3つ。隣には二の膳あり。

台所から持ち出される飯器は現代のものとけっこう近い形状だし、八寸の原点らしく魚を持った器も。

台所には長板にのった風炉釜を前に喫茶の準備をする人も。お茶を挽く僧侶も描かれていた。

好飯な方はお茶もお好きだったようで。

第4巻はお酒も御飯もそこそこの方々による、和やかな宴会。(平和だ~)

お膳の上の食器の構成は第3巻とだいたい同じだし、燗鍋も第2巻と同じもの。

という感じで構成されている。

ほー。そういうものだったのかなぁ。

と、入口で解説パネルを見て予習した上で、展示を見た。
(いつもと進路が逆だった)

まずは酒飯論以前の絵巻物。

南北朝期から室町物語絵巻があったり、室町時代末期の酒茶論には3人の酒好きの男が描かれている。
もともとこういう素地がある上に成立したのだろう。

そして、酒飯論絵巻。
どれが原本かははっきりしないけれど、ほぼ原本だろうと考えられているのが、狩野元信筆と伝わる文化庁所蔵のもの。

それの写しが江戸時代にいくつかあるらしく、いずれも狩野派系統のもの。

最初、真ん中に茶臼が展示されていて、その絵が4枚脇に並んでいたから、「何のことかなー」と思ったら、
それぞれの写本で茶臼のデザインが少しずつ違うということだった。

私が訪れた時は第二巻が文化庁、第三巻が三時知恩時、第4巻が群馬県立博物館と分けて展示されていた。

写しの中にもお約束ごとはあるようで、四季も四巻の中で表現されているのも面白い。

第二巻は春。酒宴の会場の脇に生えている草花で表現されている。

第三巻は夏。ご飯のおかずを調理する台所に夏野菜の瓜や茄子が描かれている。

第四巻は秋。お茶と一緒に出されるのかなぁ。柿や栗、秋の恵みが描かれていた。

そういう感じで絵巻物としても楽しめた。

絵巻物という楽しむ要素ゆえか、第二巻の吐しゃ物が消されているものも。

酒飯論は狩野派系統以外にも土佐派系統もあって、そちらも展示されていたのだけど、そちらには吐しゃ物が描かれていたしね。
写しがいろいろあるのも興味深かった。

絵巻物の間にちょこちょこと特別展示品もあって、玄々斎の消息「物相の」や樽香合もよかった。

2階の第二展示室は中世日本で使用された宴会の食器関係。

三々九度で登場するお酒を入れる二口の器は「長柄銚子」というらしい。初めて知った。

大きい燗鍋みたいのものも「堤子」というらしい。

玄々斎好の8代宗哲の難波蒔絵盃が今と同じ。


一番興味深かったのは、茶懐石および菓子の再現レプリカ。

四つ椀形式になって、手前左は飯椀、手前右は汁椀、向こう左(坪椀)は鮒膾(なます)、向こう右(平椀)は鮑をスライスしたものが盛られてあった。

松屋会記(久好茶会記)の平成18年8月9日の会記を再現したもので、堺市博物館(さかい利晶の杜 千利休茶の湯館)所蔵。

脇にはお菓子。手前が「しいたけ」。向こう側に「ふのやき」と「小餅」。

美味しそう~。てか、贅沢。でも、栄養バランスが。。。(って、これだけじゃないと思うけど)

こういう視覚で表現されていると、四つ椀形式も頭にすんなり入ってくる。
(これも茶道文化検定の穴埋めで失敗しまくったっけ)

桃山時代の朱塗四重椀もよかった。食べ終わったら、重ねることができる。泉仙の鉄鉢料理と同じだナ。

吉野絵懐石道具は江戸時代のもの。蓋つきの四つ椀に丸盆、飯器、杓子、湯桶がそろっていた。
四つ椀は江戸時代前期までだそうだけど、他は現代と同じ形式で今でも使えそうな感じ。

今日庵文庫所蔵の「今日庵好菓子」もよかった。江戸時代後期から明治時代初期のものらしいけど、花びら餅もしっかり描かれていた。

2階を見ていたら、また1階の絵巻を見直したくなって、再度見直した。

そして、やっと呈茶席へ。

今回、リニューアルされたのは呈茶席かなぁ。

お菓子が酒まんじゅうだったのはちょっとビックリした。

だけど、「酒飯論」に因んで選ばれたお菓子と言われれば、ナットク。

つい、いつものクセで係の方に点前座の道具組を尋ねてしまったけれど、
入り口にちゃんと会記の掲示してあった

しかもサイトでも閲覧できるようになっていた。こちら

その代わり(?) 呈茶席も撮影禁止になっていた。

というわけで、今回はしっかり1時間以上滞在してしまった。

★次回の展覧会情報
 新春展『旅する茶道具』(併設展 「茶道具にみる松竹梅」)
 ※2019年1月7日(月)~3月31日(日) 前期:1月7日(月)~2月3日(日) 後期:2月28日(木)~3月31日(日)

★茶道資料館バックナンバーリスト
2018年5月 『むしあげ 岡山に花開いた京の焼物』
2018年1月 『茶の湯釜とその周辺-裏千家歴代の好み物』
2017年10月 『仏教儀礼と茶 ―仙薬からはじまった―』
2017年1月 新春展『描かれた茶の湯』
2016年10月 秋季特別展『私の一碗 -六十五碗それぞれの想い-』 
2016年5月 春季展『文様ことはじめ―茶道具の文様と意匠―』
2015年5月 春季展『錦絵にみる茶の湯 -今日庵文庫所蔵 明治期の作品を中心に』(前期) ※感想まとめず 
2015年3月 新春展『茶箱を楽しむ』 併設展『季節の取り合わせ』3期 
2015年2月 新春展『茶箱を楽しむ』2期 併設展『季節の取り合わせ』 
2014年11月 開館35周年秋季特別展『茶の湯の名碗』
2014年7月 夏季展『茶道入門 抹茶を知ろう、茶道具を知ろう』
2014年5月 春季特別展『光悦・等伯ゆかりの寺 本法寺の名宝』
2014年2月 新春展『新春を寿ぐ―酒の器―』 併設展『新春の茶道具』
2013年11月 秋季特別展『佐賀県立九州陶磁文化館名品展『華やぎの九州陶磁』
2013年9月 特別展『少庵四百年忌記念 千少庵』
2013年4月 春季特別展『永青文庫所蔵 香道具展』 併設展『入門 茶の湯と香道具』
2013年1月 新春展『大松コレクション名品選 -近代絵画と茶道具-』
2012年11月 秋季特別展「-茶会記に見る茶道具-姫路藩主酒井宗雅の茶と交遊」(後期)
2012年10月 秋季特別展「-茶会記に見る茶道具-姫路藩主酒井宗雅の茶と交遊」
2012年8月 「京三条せともの屋町」
2012年5月 「四季の画賛と待合のしつらえ」
2012年2月 新春展「新春の取り合わせ」
2011年10月 肥後松井家の名品「武家と茶」
2011年8月「鵬雲斎千玄室の茶」(後期)
2011年5月「鵬雲斎千玄室の茶」(前期)
2011年2月「近代茶道の先駆者 玄々斎と又日庵 」
2010年11月「東京国立博物館蔵 広田不孤斎コレクション 茶の湯の名品」
2010年9月「千家茶道の継承 裏千家十三代 圓能斎鉄中宗室」
2010年5月「茶書にみる茶の湯の歴史」
2009年11月「わび茶の誕生-珠光から利休まで-」
2009年3月「春に笑む
2008年10月「鎌倉時代の喫茶文化」
2008年8月「涼を求めて 染付磁器の魅力」
2007年11月「千宗旦」

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2 コメント

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Re:酒饅頭 (akatsukian)
2018-10-29 18:43:22
ふくろうさん

事前に会記を見ずに、席中で酒饅頭が出された時は
まず「え?」と思ったし、ガッカリした気持ちもありました。←季節のお菓子を期待していたので

酒饅頭と酒飯論が頭の中ではスンナリ繋がらないんですよね。

まして、ふのやきだったら~

銀杏の焼印入ったのではなく、利休さん時代の再現ふのやきだったら、うれしいかも~
返信する
酒饅頭 (ふくろう)
2018-10-25 15:51:08
前もって呈茶席がわかるのも嬉しいようなつまらないような^^;「酒饅頭」は微妙です、でもなくなったら麩の焼きと書いてあって、それは悲しいような(>_<)けっこう主菓子も楽しみに行く私としては・・・
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