Akatsuki庵

日々と向き合って

名物裂と古渡り更紗

2019年11月21日 00時11分48秒 | 美術館・博物館etc.

☆静嘉堂文庫美術館 サイト
『名物裂と古渡り更紗』 ※12月15日(日)まで

静嘉堂で染織展をかけるのは初めてのことだという。ちょっと意外。
でも、どの美術展でも頻繁にかかる企画ではないからなぁ。むしろ、わりと最近のことではなかろうか。

五島美術館が同じテーマで展覧会をしてからちょうど10年(2009年11月)→こちら
間隔としてはちょうどいい頃合いか。

先週、朝日新聞の夕刊に割引券つきの広告が掲載された。


ちゃっかり切り取って持参した。1,000円が800円になった。

入ってすぐに、撮影OKのエリアがあった。

 
もとは大阪の藤田家にあったという大ぶりの油滴天目茶碗。重要文化財なのに、撮影OKなんて太っ腹。

スマホをバックにしまって、展示室内へ。まずは国宝の曜変天目(稲葉天目)が展示されていた。
この春にも見物しにここへ来たっけ。1年のうちで2度もお目にかかるなんて、改元の年ならでは?

でも、今回の主役は曜変天目茶碗を護る仕覆が主役。2つあって、どちらも金襴。
まぁ、いつもは尼ケ崎台が一緒に展示されることの方が多いけど、仕覆も何度か拝見したことがる。
改めて見ると、紺地二重唐草文金地金襴仕覆。裂地としては最高位の格式で、豪華だなぁ。
もう一つ白地雲文金襴もきっと匹敵する格なのだろう。

振り返ると、表に遭った油滴天目茶碗の仕覆。こちらは初めて拝見する。
黄地段替わり幾何学文金銀入錦仕覆。すいぶんと複雑でめずらしい文様だ。

名物裂はたくさん種類があって、同じ名称でも文様銘でも平気で柄や色合いがけっこー異なったり、
文様の大きさや違っていたりと見分けるのが難しいけど、基本的な文様パターンさえ覚えておけば
あとは裂地の名称が“まんま”なので、名称みただけでだいたい察しがつく。←あとから目録見た時に文様の記憶が浮かびやすい。

茶碗は以上の2点のみで、あとは前半が茶入と茶器が21点で本体と仕覆、挽家や箱を包む御袋が合わせて展示してあった。
後半は煎茶器と仕覆。煎茶道具の方はことごとく更紗という構成。

茶入の方は仕覆より、付属物を包む裂地の方に興味がいってしまう。
仕覆は中国(元代が少し、ほとんど明代のもの)ものが多く、間道で若干インドのもの。
織りもほとんど金襴か緞子。 素材はほとんど絹製を思われる。

でも挽家の袋は圧倒的に木綿。産地はインド製。文様は縞とか間道。たまーにビロードもあり。
だけど、その縦の文様のバリエーションや種類が細かくて、粋で凝っていて。
それなのに、展示リストには付属物については記載なし。仕方ないからリストの余白にメモをとった。

途中、休憩用の椅子のところに小冊子があって、こちらには写真入りで付属物の裂地もちゃんと記載あったので、
帰りに売店で350円で購入した。(展示品全部が紹介されているわけではないけど、展示リストのメモとったのでちゃんと振り返れる)

印象に残ったのは、中興名物の瀬戸芋子茶入(古瀬戸)銘「雨宿」を収納する春慶塗りっぽい竹の挽家。
前面に色蒔絵で桔梗が描かれている。かわいい。蓋は竹の節を利用していた。その凹凸がいかにも竹~でいい。

茶入の形によっても、合わせる仕覆って変わるんだろうなぁと思わせたのが瀬戸大海茶入(真中古・大覚寺手) 銘「玉村」。
仕覆は3つあったけど、緋色の間道織留仕覆。赤は膨張色だと聞いたことがある。たっぷりデブの仕覆をさらに恰幅よく見せる効果あり?

逆に背高ノッポの丹波雛鶴茶入。仕覆は片身替わりで紺色っぽい紹鴎間道(ほとんど紺の無地にしか見えない)と糸屋風通。
ちなみに、点前座では客付に風通の側を見せるように荘ったのだとか。
拝見に出されて、あら!って感じかしらん。

中興名物の瀬戸肩衝茶入(破風窯・凡手) 銘「玉津島」には大燈金襴仕覆と他3つの仕覆。
大燈金襴は9年前、京博で身分の高いお坊さん(高僧)が中国の留学から持ち帰った袈裟の柄で見たなぁ。
「名物裂って、袈裟からきてるの~」って、驚いたっけ。→こちら

だから、富田金襴や二重蔓牡丹文もそうだけど、本歌が高僧の袈裟なのは「格式が高い」とインプットされたんだっけ。
「宗雪裂」で作った仕覆もあって、小冊子には「名称の由来は不明」とある。
ただ、根津美術館で「江戸の茶の湯」を鑑賞した際に、川上不白が「宗雪」も名乗ったことを知った。
もしかして、関係あるのかな?

でもさ、展示の脇に「白地の大燈金襴は左側のケース」にちょいビックリ。

どれどれ~。と、中興名物 瀬戸肩衝茶入(金華山、大津手) 銘「白露」に注目。
おっ。確かに、よくある大燈金襴の色違い。文様は一緒だ。
これも袈裟から? てか、白地に紫ってだけで軽やかに見えて袈裟にはちょっと~って気がする。

大燈金襴の仕覆はもう一つあって、これも瀬戸肩衝茶入(金華山、生海鼠手) 銘「岩藤」。
こちらは挽家袋と内箱の袋も展示してあった。挽家袋は阿蘭陀木綿、内箱袋は算木崩し文木綿(インド)だって。どちらも17世紀

箱の袋といえば、中興名物の高取大海茶入の内箱を入れる袋の裂地がステキ。石畳段織天鵞絨(ビロード)

利休の在判がある黒塗大棗も格が高いということからか、茶地大牡丹文金襴仕覆、白地二重蔓金襴仕覆とあと一つ(聞いたことない文様)。
さらに緋色の無地の仕覆もあって、「なぜリストに紹介されていないの?」と思っていたら、御物袋だった。その名も朱縮緬。(←そのまんま)
さらには内箱を包む「箱畳紙(はこたとう)」もあり、これは袋状ではなく起こし図風?(組み立て式っていうのか?)
白地萌黄地縞唐桟。裏地は鹿革だって。

そういえば、挽家の袋が革製のもあったなぁ。

不昧公が原羊遊斎に30個作らせたうちの一つ、菊蒔絵大棗の仕覆も初めて見た。奈良金襴(萌黄地蜀江文金襴)

根来の金輪寺茶器も清水裂で作った仕覆がついていた。(京都の清水寺から出た裂地って書いてあった)

前半の茶入で神経使ってしまって、後半の古渡り更紗にきたら疲れちゃった。
更紗はよいけれど、煎茶器のちまちま~と仕覆になっているのをみると、ちょっと疲れる。

この夏、九博ですごーく大きい生地の更紗をみたからなぁ。
煎茶用の更紗はそういった用途に使うよう、日本から注文して取り寄せた反物かもしれないな、と思った。

最近、ちょいちょい見かける裂地展、難しいけど、奥が深くて面白い。

※静嘉堂文庫美術館バックナンバーリスト
2019年5月 『日本刀の華 備前刀
2016年3月 『茶の湯の美、煎茶の美』
2015年12月 『金銀の系譜-宗達・光琳・抱一をめぐる美の世界-』
2013年2月 『受け継がれる東洋の至宝 曜変・油滴天目 -茶道具名品展-』
2011年4月 『日本陶磁名品展』
2010年2月 茶道具名品展『国宝・曜変天目と付藻茄子』
2008.12月 『岩崎家の古伊万里-華麗なる色絵磁器の世界』 2008年2月 『茶碗の美-国宝 曜変天目と名物茶碗-』


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