明智光秀に関係する系図(以下、明智系図)は学会レベルでは「明智系図はどれも信頼できない」(高柳光寿氏)として全く研究されず、一方、歴史愛好家の間では諸説があって混乱した状況です。ところが、歴史雑誌などではそれらしい系図がよく書かれています。どうも光秀の系図にも通説(俗説)が存在しているようです。
そこで、明智系図の範囲を土岐明智氏の系図ととらえて、光秀が書かれていないものも捜査対象として総ざらいして捜査してみました。捜査の結果見えてきたものを何回かに分けて報告します。第1回目は明智系図の分類とそこから見えてくる「明智軍記汚染」の実態です。
二つの観点から分類してみました。一つは土岐明智氏の祖を誰とするかです。これは二種類に大別できます。もう一つは光秀が書かれているかどうか、さらに光秀の子まで書かれているかどうかです。それを一覧表にすると下記のようになります。
A 頼基・頼重系
初代美濃守護土岐頼貞の子・頼基、その子・頼重が祖
A1 尊卑分脈・土岐系図(光秀・子なし)
A2 寛永諸家系図伝・土岐系図(光秀・子なし)
A3 寛政重修諸家譜・土岐系図(光秀・子なし)
A4 系図纂要・土岐上野沼田系図(光秀・子なし)
A5 続群書類従・明智系図(光秀・子あり)
A6 続群書類従・土岐系図1(光秀あり・子なし)
B 頼清・頼兼系
初代美濃守護土岐頼貞の子・頼清、その子・頼兼が祖
B1 続群書類従・土岐系図3(光秀・子なし)
B2 系図纂要・明智系図(光秀・子あり)
B3 熊本安国寺蔵・三宅系図(光秀・子あり)
B4 明智氏一族宮城家相伝(光秀あり・子なし、光俊の子あり)
B5 土佐諸家系図・土岐系図(光秀・子あり)
一見してわかるのはB系に光秀や子の記載されたものが多いことです。それもそのはずで、この系統は永禄六年(1693)刊行の悪名高い軍記物『明智軍記』の記述をもとにして組み立てられたものなのです。そのことは記述内容が『明智軍記』と類似していることから裏付けられますが、B5土佐諸家系図には「明智軍記を見て書いた」と明記されています。ここにも「明智軍記汚染」が広まっていました。その詳細については次回書くことにします。
>>>つづく:明智軍記汚染の実態へ
***************************************
『本能寺の変 四二七年目の真実』のあらすじはこちらをご覧ください。
また、読者の書評はこちらです。
>>>トップページ
>>>『本能寺の変 四二七年目の真実』出版の思い
【参考ページ】
残念ながら本能寺の変研究は未だに豊臣秀吉神話、高柳光寿神話の闇の中に彷徨っているようです。「軍記物依存症の三面記事史観」とでもいうべき状況です。下記のページもご覧ください。
★ 本能寺の変の定説は打破された!
★ 本能寺の変四国説を嗤う
★ SEが歴史を捜査したら本能寺の変が解けた
★ 土岐氏とは何だ!
★ 土岐氏を知らずして本能寺の変は語れない
★ 長宗我部氏を知らずして本能寺の変は語れない
★ 初公開!明智光秀家中法度
そこで、明智系図の範囲を土岐明智氏の系図ととらえて、光秀が書かれていないものも捜査対象として総ざらいして捜査してみました。捜査の結果見えてきたものを何回かに分けて報告します。第1回目は明智系図の分類とそこから見えてくる「明智軍記汚染」の実態です。
二つの観点から分類してみました。一つは土岐明智氏の祖を誰とするかです。これは二種類に大別できます。もう一つは光秀が書かれているかどうか、さらに光秀の子まで書かれているかどうかです。それを一覧表にすると下記のようになります。
A 頼基・頼重系
初代美濃守護土岐頼貞の子・頼基、その子・頼重が祖
A1 尊卑分脈・土岐系図(光秀・子なし)
A2 寛永諸家系図伝・土岐系図(光秀・子なし)
A3 寛政重修諸家譜・土岐系図(光秀・子なし)
A4 系図纂要・土岐上野沼田系図(光秀・子なし)
A5 続群書類従・明智系図(光秀・子あり)
A6 続群書類従・土岐系図1(光秀あり・子なし)
B 頼清・頼兼系
初代美濃守護土岐頼貞の子・頼清、その子・頼兼が祖
B1 続群書類従・土岐系図3(光秀・子なし)
B2 系図纂要・明智系図(光秀・子あり)
B3 熊本安国寺蔵・三宅系図(光秀・子あり)
B4 明智氏一族宮城家相伝(光秀あり・子なし、光俊の子あり)
B5 土佐諸家系図・土岐系図(光秀・子あり)
一見してわかるのはB系に光秀や子の記載されたものが多いことです。それもそのはずで、この系統は永禄六年(1693)刊行の悪名高い軍記物『明智軍記』の記述をもとにして組み立てられたものなのです。そのことは記述内容が『明智軍記』と類似していることから裏付けられますが、B5土佐諸家系図には「明智軍記を見て書いた」と明記されています。ここにも「明智軍記汚染」が広まっていました。その詳細については次回書くことにします。
>>>つづく:明智軍記汚染の実態へ
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残念ながら本能寺の変研究は未だに豊臣秀吉神話、高柳光寿神話の闇の中に彷徨っているようです。「軍記物依存症の三面記事史観」とでもいうべき状況です。下記のページもご覧ください。
★ 本能寺の変の定説は打破された!
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