「ひさの星」 斎藤 隆介 作 岩崎 ちひろ 絵 岩崎書店 1972年
『ひさの星』に添えて 斎藤 隆介
蛍は、濡れた草の葉にとまって、息をするように微(かす)かに光ったり消えたりします。
とろうと手をふれると、ポロリともろくも水の上に落ちます。
天の蛍―――、星は、青白くまたたき息づきますが落ちるようなことはなく、
人々はその輝きをふり仰ぎます。
ひさは、蛍のようにかそけくしずかな少女でした。
そのひさがどうして水に落ちて流され、そして天の星になったか―――、それがこのお話です。
小さいもの、弱いもの、仲間たちは、自分の命を捨てても守らなければならない!
と声高く叫んでその道をつき進む人は立派です。
しかし、黙ってその道を歩いてゆく人もいます。
ひとにほめられたりしたら頬を赤くするのです。
そういう人たちが、私には星のように輝いて見えます。
声高く叫ぶ人の声がかれ、歩くのをやめる時も、この人たちは黙って歩き続けます。
時には死に向かってさえも。
今は声高く叫ばなければならぬ時かもしれません。
しかしその人たちの心のシンに、星のように黙って輝くやさしさが、本当の強さの核となって、
更にその歩みを続けさせてほしいと私は願います。
その、ほんとうの強さのシンとなる星のしずくのようなやさしさを、
岩崎ちひろさんはひさの姿を通して見事に描いて下さいました。
この「星の絵本」が、日本中の少年少女の手にとられ、胸に輝くことを願ってやみません。
『ひさの星』に添えて 斎藤 隆介
蛍は、濡れた草の葉にとまって、息をするように微(かす)かに光ったり消えたりします。
とろうと手をふれると、ポロリともろくも水の上に落ちます。
天の蛍―――、星は、青白くまたたき息づきますが落ちるようなことはなく、
人々はその輝きをふり仰ぎます。
ひさは、蛍のようにかそけくしずかな少女でした。
そのひさがどうして水に落ちて流され、そして天の星になったか―――、それがこのお話です。
小さいもの、弱いもの、仲間たちは、自分の命を捨てても守らなければならない!
と声高く叫んでその道をつき進む人は立派です。
しかし、黙ってその道を歩いてゆく人もいます。
ひとにほめられたりしたら頬を赤くするのです。
そういう人たちが、私には星のように輝いて見えます。
声高く叫ぶ人の声がかれ、歩くのをやめる時も、この人たちは黙って歩き続けます。
時には死に向かってさえも。
今は声高く叫ばなければならぬ時かもしれません。
しかしその人たちの心のシンに、星のように黙って輝くやさしさが、本当の強さの核となって、
更にその歩みを続けさせてほしいと私は願います。
その、ほんとうの強さのシンとなる星のしずくのようなやさしさを、
岩崎ちひろさんはひさの姿を通して見事に描いて下さいました。
この「星の絵本」が、日本中の少年少女の手にとられ、胸に輝くことを願ってやみません。