民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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冒頭を暗唱しなさい 橋本 治

2015年01月07日 00時11分02秒 | 古典
 「ハシモト式 古典入門」 橋本 治 1948年生まれ  ごま書房 1997年

 冒頭を暗唱しなさい P-229(文庫)

 この本で、「内容紹介」を無視して、原文の書き出しだけをできるかぎりあげるようにしたのは、「この古典はこういう文体で書かれているのか」ということを知ってもらいたいためと、もう一つ、「この古典はこうふうに始まっているのか」を知ってもらいたいためです。

 今ではあんまりはやらなくなりましたが、昔は「古典の勉強」というと、まず「暗唱」でした。冒頭の部分を覚えて暗唱するんですね。古典という「昔のもの」とつきあうのなら、「昔のつきあい方」は有効です。だから私は、「暗唱」をおすすめします。それをしてほしいがために、「冒頭」を並べたんです。ただ、この本に並べたのは「冒頭のさらに冒頭」ですから、その先を知りたかったら、本屋さんか図書館で「現物」に当たるしかありません。どうぞ、それをやってください。もうあなたは、「冒頭の冒頭」を知っているのです。全然知らないものに当たったら身がまえますが、でもあなたは「全然知らない」というわけじゃないんです。「ちょっと知っていることの先はどうなっているのかな?」と、ほんのちょっとのぞくつもりで見てください。「知識」なんかどうでもいいんです。そうやって、「慣れる」ということをするのです。
 泳ぎをマスターするのにまず必要なのは、「水に入ること」です。古典の冒頭とは、その「水」なんです。