民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「知らざあ言って聞かせやしょう」 はじめに その5

2017年02月10日 00時11分14秒 | 伝統芸能(歌舞伎など)
 「知らざあ言って聞かせやしょう」 心に響く歌舞伎の名せりふ 赤坂 治績 新潮新書 2003年

 はじめに その5

 『鈴ヶ森』はいま一幕物としても上演されますが、もともと幡随院長兵衛物(権八小紫物)の一場面の名前です。同じような場面は、現代も上演される作品で言えば、桜田治助の『幡随院長兵衛精進俎板(俎板の長兵衛』にも、鶴屋南北の『浮世塚比翼稲妻(稲妻草紙)』にも出てきます。延享期(18世紀半ば)に初演され、名場面の一つになったのです。
 江戸時代は、台本(「台帳)という」も含めて、古くても良いものは再利用しました。歌舞伎は現代劇でしたから、新作の上演が原則で、出演俳優に合わせて毎回台本を書き改めましたが、前に上演して好評だった場面は再利用したのです。「雉子も啼かずば・・・」というせりふも、この場面を含んだ作品が上演される度に使われたので、いつの間にか諺になっていまったと思われます。