民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

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「声の道場」 山村 庸子

2014年02月24日 00時27分11秒 | 日本語について
 「声の道場」 日本の声があぶない  山村 庸子 著  一世出版  2010年(平成22年)

 <謡(うたい)を習いに来る人たち> P-16

 謡や仕舞を教えさせて頂くようになって十五年を越しますが、この頃お稽古を始められる方たちの
雰囲気が変わってきました。

 以前は趣味として、または能を観るためにという方がほとんどでした。
そういう方たちはもちろん稽古が面白くなり熱心に来て下さっています。
が、最近みえる方は、ちょっと違うのです。
何かなさっていることがあり、そのために謡を稽古したいという、目的がはっきりしている方が
多いのです。

 中でも演劇をしている方が多く、「すぐ喉を痛めてしまう」とか、「広い劇場で声が通らない」とか。
「声を作るために声楽のボイストレーニングに行ってみたけれど、セリフを言う時に違和感がある。
日本語の発声には何かいい修練の方法があるのではないか」という方も。
また、語りや朗読を本格的になさっている方もみえました。

 その中のプロとしても活躍中の方に、「素晴らしいお声・表現力だし、お忙しいのにわざわざ
お稽古にいらっしゃらなくても」と私が言った時のお話です。
「いろいろな分野の役者さんたちが出演する演劇公演があり、それを観に行った時の事。
広いホールの三階席にいて、はっきりセリフが聞こえたのは能・狂言の役者さんたちだった。
とくに現代演劇の方たちのセリフはよく聞き取れなかった。
同じ公演にもう一度行き、その時は前列の舞台際で観ていたところ、驚いたことに三階席で聞き取れ
なかった声が今度は大き過ぎて聴きづらく、能・狂言の方の声は三階席と同じように聞こえた」

 そういう経験から、「日本の言葉を語る上で、より良い発声を求めるならば謡を稽古するのが
いいのではないか」と思ったそうです。

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