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「穏やかな死に医療はいらない」 その4 萬田 緑平 

2016年01月17日 00時13分31秒 | 健康・老いについて
 「穏やかな死に医療はいらない」 その4 萬田 緑平  朝日新聞出版 2013年

 治療とは「戦争」である P-28

 前略

 どこまで戦ったほうがよいのか、どこまでが勝てる戦いで、どこからが負け戦なのか、その線引きは非常に曖昧で難かしいものです。病気の性質にもよりますし、患者さん自身の体調や性格にもよります。
 でも僕の感覚で言わせてもらうなら治療の効果より苦痛が上回ったら、撤退したほうがいい。治療を続ければ続けるほどつらくなってきたときには、病院から逃げましょう。受けている治療が身体に効果をもたらしているとき、それほど大きな苦痛は生じないものです。しかし、やがて治療の効果は少なくなり、苦痛が増えていきます。最終的にはただ苦痛をもたらすだけのものになります。

 治療をやめるのは不安かもしれません。何しろ病院医師は「戦いのプロ」。王様(患者)から「戦いをやめたい」と言われることは、彼らにとって「敗北」を意味します。だから病院医師は患者さんやご家族に「治療しないともっと苦しくなりますよ」「ここで治療をやめたら早く死にますよ」と言ったりします。それで怖くなって苦しいだけの治療を続けてしまう患者さんはたくさんいます。
 でも、ほとんどの医師は「治療をやめたらどうなるのか」なんて知らないのです。(中略)病院医師たちはその治療を受けた人がどうなったのかは知っていますが、受けなかった人ややめた人がどうなったのかは知りません。

 たしかに、治療をやめたら死んでしまうかもしれません。でも、苦しい治療を続けたところで、助かるわけではないのに、病院はなかなか治療をやめさせてくれません。だから病院を出るのです。

 萬田 緑平(まんだ りょくへい)
1964年生まれ。群馬大学医学部卒業。群馬大学付属病院第一外科に所属し、外科医として手術、抗がん剤治療、胃ろう造設などを行うなかで終末ケアに関心を持つ。2008年、医師3人、看護師7人から成る「緩和ケア診療所・いっぽ」の医師となり、「自宅で最後まで幸せに生き抜くお手伝い」を続けている。

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