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佐々木俊尚著『時間とテクノロジー』読後のメモ:これからの哲学とは、心身を伴う会話の輪

2022-01-03 00:09:52 | 基本的なコト

 

佐々木俊尚著『時間とテクノロジー』
メディア研究者の佐々木俊尚氏は、
「因果の物語」から「共時の物語」としての人間の意識・意図された表現としての、’新しい哲学’の必要性を説く。それは、環境の中での変化を自己組織化し続ける生命が、刺激を二次化して肥大させた身体・神経組織と外部環境の関わりを、電子自体への還元・再編として、ゴールも終末もない状態のときの哲学を求めている。
ルネッサンス以後、意図的観察による、’確率’’べき数’‘機械’論での科学の結果は、他者の真理:因果の必然に頼れなくなった。
身体・神経組織と外界とは、電子のデジタル・クラウドで、摩擦・空間に偏在している状態でしかない。
認知・脳・行動科学の境界は、意識されないセンシング・データの集積により超えられて、物理・化学的なリアルと人間のリアリティの多層構造に。
脳内がすでにデジタル・ネットワークのスクランブル・交差点。


その刺激のフロー状態の纏まりである個体自体が、外部に占有するモノの所有と交換の市場社会も、二つの方向で分裂を始めている

一方では、その市場メディア:通貨が、生存の可能性を拡げるためのモノの生成・消費から、消費拡大を自己木低下し、人間の生存を超えた欲望と不安にそって、すべての生存要素:水・空気にまで価格付けし、希少価値を拡大し、市場膨張を続けてゆく。
他方、個人を取り巻く社会も、近世・近代・ポスト近代と、モノと意味が分かれ始め、対象とするモノの背景・意味の組み合わせが自由になり、対象との関わりが希薄になってきところに、デジタル化・ネットワーク化が進んだ。
意味を生む刺激自体が、センシング・デジタル・ネットワークにより生成・編集され、VR:仮想現実・AR:拡張現実へと、クラウド空間に偏在し、刺激が刺激を生み続ける社会となった。

此処は、因果で整合することも、確率で予測することも、べき数として突発を止めることも、機械的なアルゴリズムで覆うことができない社会。
限界ある資源を消費する収穫逓減から、限界無く差異を作り続ける収穫逓増の社会。

此処に、溢れる差異を偏在化させて意味化する個体・個人の行為規範:哲学が必要とされることになった。
放置すれば、溢れる刺激のエントロピーが高まり、昨日も明日も変わらない世界が来る。

ここは、複雑系の中での自己組織化されたもの(生命)が、相互に応答し合う価値化することで、エントロピーを制御する共振・共鳴社会。
媒介するメディア・居場所に関わらず、刺激の応答・共振・共鳴が、コミュニケーション密度を上げる。
社会とはコミュニケーションの経過であり、ウチへの凝縮とソトとの境界での相互作用が共振であり、増幅が共鳴であり、エントロピーを低減して、さらなる相互作用の差異をつくりだす。


因果をつなぐ応答が対話だとすれば、共振は会話。
共鳴にまで至り、周りを引き込み伝搬すれば、イベント。
多様化が進み・混沌へと近づく今は、先ず、身の回りの共振から。
リアルがデジタル空間へ接続しはじめている今は、
身辺での会話を、周りに漏らし、伝搬し合ってゆくことで、グローバルな時代での心身ローカルな共振の場を持てることになる。

『まち・ひと・サロン』と名付ける、心身を伴う会話支援の社会基盤づくりは、コロナ禍の制御棒では停められない生命の呼応を維持する舞台なのです。


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