陽だまりのねごと

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晴れ ときどき アスペルガー  今村 志穂

2009-11-13 06:59:31 | 
晴れ ときどき アスペルガー
今村 志穂
講談社

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図書館の小説のところで見つけた。
作者に聞き覚えなし。「アスペルガー」に反応して借りた。
夫と息子がアスペルガーである著者の実体験を基に書かれた小説とのこと。
どの部分がフィクションであるか線引きはよく分からない。
終わりに横須賀市療育相談センター 小児精神科医の広瀬宏之先生との対談がある。
そこでマイナス面ばかり書いたとある。なるほど暗い。
親の育て方が悪いと言われた時代に子育てをした私にとってはかなり私の実体験とも被った。
私の場合、ほぼ30年前、アスペルガーなど自閉症専門医も知らない時代の話である。
すっかり読みつつ思い出してきた。

   はじめから乳を吸わない。どうしても泣きやまない。
   新米母の私は第一子を抱いて何度も一緒に泣いた。
   もっと情けないことに保母として在籍して育児休暇中。
   しかも0歳児を産むまで担当していたのだ。
   人様の子供をみていた身でどうしてこう上手くいかないのか?
   自分が責められてしかたがなかった。
   結局、復職して間なしに、
   人に預けて働くには不安の大きい息子をしっかり育てたいと退職した。
   一生の仕事と思っていた。
   当時、はしりの育児休暇が取れる恵まれた労働環境だった。
   人生の最初の挫折要因は息子だったかもしれない。
   
小説はアスペルガーと分かって重たい雲が晴れたようなさぁ~これからと言う含みで話は終わっている。

アスペルガーの特徴も千差万別と言われているから、本書の特徴と我が子と被らない所もいっぱいあった。
どちらかと言うと小説の二人は軽めの障害であるかもしれない。

一番興味惹いたのは障害の兄と健常の弟のからみだった。
兄のストレスのはけ口に弟が使われ、兄に虐げられる弟がだんだん暗くなる場面があった。
多くの成人発達障害者はいじめにあって大人になっていった。
まさに弟の姿が息子の成育の影とオーバーラップした。
健常者であれば成人してまで、そのいじめシーンを微に入り細に入り思いだすことはないのだろうか?
この弟は兄がいじめなくなれば、実になかったかのように明るくなってきている。
どうも息子を見ていると何度でも昨日の事の様に怒りが再燃し、大きな影が払拭されたり薄れる気配はない。

小説と言いながら障害の説明部分が多い。
小説としては酔えない。
メジャーでない障害。どうしても説明が要るんだろうが、私小説としても酔えない。
文学的香りから遠くなる。

ただ共感は出来る。
小説の語り手は母であり、母目線であるからそこも近い。
私は手を挙げることは禁じていたから、それだけはなかったが、
四歳で自閉症と診断されるまで、
そして医師の言う知的障害が現れないと分かった時期から再び
『なぜ出来ない?』と息子を追い詰めた事実は消せない。

   マイナス体験は後に残る

今更遅い。耳の痛い言葉だ。

発達障害支援法、支援教育はこのブログ開設より新しい。
これからきっと良くなってゆく。生きやすくなってゆくと信じたい。

小説で語られていない謎がひとつある。
アスペルガーの夫のどういう部分に惹かれて結婚したのか?
心が通いあったから結婚したのでは?
現在結婚願望が強い息子の母としてはそこの部分がものすごく気になった。
女性がアスペルガーで結婚されている話は時に聞くが、
男性が当事者である場合、独身者ばかりが目につく気がしている。