壁・旅芝居殺人事件―日本推理作家協会賞受賞作全集〈46〉 (双葉文庫) 価格:¥ 420(税込) 発売日:1998-11 |
皆川博子氏は、大好きな作家です。
大作『死の泉』もいいのですが、私が一番好きな本は、地味ですがこれ。
『薔薇忌』も、思い入れがあります。
が!この方の作品の中には、猫好きにとっては非常に痛い描写がいくつかあるのです。
私は基本的にはフィクションと現実は分けられる方で、猫が虐待されたりするシーンがあっても、もちろん気持ちはよくないですが、全く読めないということはありません。(それに、なぜかそういうシーンを書く作家って、猫好きが多いのだ^_^;)
でも、そんな私でもこの方の、ある作品の描写は、ダメでした。優れている、ということなのでしょうが、衝撃が半端じゃないのです。
例えば、『悦楽園』という短編集の冒頭の作品で、(猫好きの方でそういう描写がNGの場合は、この後2行ほど飛ばして下さい)主人公が狂ったように走る猫を見て不思議に思ってよく目を凝らすと、“耳が切られているのだ”と気づくシーン。
思わず、膝に抱いていた猫の耳を押さえたほどの迫力でした。(猫はのんきに、“何?何かな?”というようにむしろ嬉しそうに私を見上げました)
でも、私が本当にダメだと思ったのは、『愛と髑髏と』という短編集に収められた一編。
“マゾヒストの猫”という表現が出てきたら、猫好きの方は注意した方がいいです。もしかすると、“これのどこが?たいしたことないじゃない”と思う人もいるかも。描写はごくさりげなく、語り口は優しいくらい。でも、私は軽くトラウマになりました。
好きな作品集としてあげた『旅芝居殺人事件』も『薔薇忌』も、よく考えたら哀切かつ残酷な話が多いのですよね……。
でも、どうしても惹きつけられる、不思議な苦い美酒のような作家でもあります。