2015年公開、ももクロ主演映画『幕が上がる』の主題歌です。
歌詞の中に「何億光年の孤独」ってありますよね?ちょうど杏果のソロ・パートですけど(笑)。
これは、谷川俊太郎さんの詩、「二十億光年の孤独」からのインスパイアですね。
この映画、ただのアイドル映画だと思っている方もおられるかも知れませんが、それは違います。
これは「青春映画」として非常にレベルの高い映画です。
べつにね、ももクロのことなんか知らなくったっていいんです。実際この映画の論評には、「ももクロのことは知らないが、映画は素晴らしい!」という意味の論評が多いんです。そう、一つの映画として
完成度が高い。
この映画の何が優れているかって、色々あるけどその一つとして挙げられるのが
「孤独感」
ではないでしょうか。
舞台は静岡県の県立高校。その高校の弱小演劇部の部員たちを、ももクロメンバーが演じているのですが、
メンバー同士の仲は良いんだけど、だけどそれぞれ、悩みだったり不満だったり、色々なことを抱えていて、それぞれに「孤独」を感じている。
演劇部が全国大会を目指すことになっちゃって、その出し物の脚本を書くことになってしまった、演劇部部長さおり(百田夏菜子)の苦悩、孤独。
演劇部の花と言われたゆっこ(玉井詩織)でしたが、演劇強豪校から転校してきて、演劇部に入部した中西さん(有安杏果)に嫉妬してしまう。さらには親友だと思っていたさおりが、中西さんの才能に惹かれていく様子を見て内心穏やかではなくなる。
中西さんは中西さんで、転校するに至った原因があって、そのことを悩んでいたりするわけです。
このゆっこと中西さんとの微妙な関係性。でもこのままじゃいけないと、お互いに歩み寄っていって仲良しになっていく。この辺の展開とか、「青春」だなあと、
思いますねえ。
この、人が抱える孤独感を、詩というかたちで表現されたのが、谷川俊太郎氏の「二十億光年の孤独」です。
国語の授業で、国語教師役の志賀廣太郎さんが朗読した「二十億光年の孤独」。これがさおりの書く「銀河鉄道の夜」の台本に生かされることになり、
劇中劇「銀河鉄道の夜」を通して、「孤独」というテーマがより明確になっていきます。
この映画最大のハイライト・シーンは、百田夏菜子演じる高橋さおりと、有安杏果演じる中西悦子が、夜、無人の駅のホームで語り合うシーン。
中西「高橋さん、それでも人は一人だよ。宇宙でたった一人だよ」
さおり「でも、ここにいるのは二人だよ」
この二人の会話に、この映画のテーマが凝縮されています。
人は常に「一人」。でも
「独り」ではないんだよ。
劇中劇「銀河鉄道の夜」の、ジョバンニとカンパネルラの関係性にも、この「孤独」というテーマが見事に描かれています。ジョバンニとカンパネルラの関係性もまた
「一人」だけど
「独り」じゃない。
監督は本広克行。映画『踊る大捜査線』シリーズで大ヒットを飛ばした監督ですが、最近公開された室井さんの奴、散々な酷評されてますね。ちょっと可哀そうになるくらいに。
まあ、最近はどうなのか知りませんが、少なくともこの『幕が上がる』では、素晴らしい演出をされています。ある意味『踊る……』以上の
監督最高傑作ではないかとすら
思えます。
アイドル映画だなんて偏見は一度捨てて、是非にも御覧になることを、ツヨクツヨク
おススメいたします。
岡田斗司夫が映画『幕が上がる』を大絶賛。
映画『幕が上がる』予告編
谷川俊太郎さんのご冥福をお祈りいたします。