問わず語りの...

流れに任せて

映画『十一人の賊軍』

2024-11-13 04:02:13 | 時代劇

 

 

思った通りでした。私は白石一彌監督が

 

 

苦手だ。

 

 

 

やりたいことはわかるんですよ。戦争というのは悲惨なもので、綺麗な、「正しい」戦争などはない。

 

 

新政府軍であろうと奥羽越列藩同盟であろうと、大義名分はともかく、どちらの側もまずは「勝つ」ことを目的としているのだから、そのためならば

 

 

酷い事も理不尽なことも

 

卑怯なこと悪辣なこと、それらすべて

 

 

「勝つ」ということのためならば、正当化される。

 

 

それが戦というもの。

 

 

だから、戦いにカタルシスはない。ひたすら悲惨で残酷な戦いが描かれ続ける。

 

 

それはいいんです。そういう意図をもって演出しているのだろうから。まあ、

 

 

それはいい。

 

 

でもねえ、それはそれとして、映画全体が、どうにも盛り上がりに欠ける。

 

 

展開が平板で、一言で言えば

 

 

面白くない。

 

 

そう、私としては単純に

 

 

「面白くない」の一言で終わってしまう。

 

 

申し訳ないけど、他に言いようのない映画でした。

 

 

砦を守る「決死隊」の面々の、一人一人のキャラが全然立っていない。面白味がない。

 

 

山田孝之にしてもただの卑怯者で、まるで感情移入できない。なんであんなキャラにしたのか、さっぱり理解できない。

 

 

阿部サダヲが演じた新発田藩家老は、最後まで「本音」が見えずイライラする。藩を戦禍に巻き込まないため、若き藩主を守るため、相当非道なことをやりまくるわけだけど、それにしても本当はどのような想いだったのかということが、最後まで見えないまま。

 

まあ、最後に娘さんが自害している姿を見て、「仕方がなかったのだ、許してくれ」と泣き崩れるところで、ようやく感情の迸りが見れるのだけれど、そこに致るまでの感情がまるで見えない。やっぱりイライラする。

 

なんであんな演出にしたのだろう。私にはやはり理解できない。

 

 

白石監督と言えば「残酷」描写が有名らしいけど、私には「見せすぎ」のように感じましたね。

 

斬り合いで指が飛ぶわ、爆弾が爆発して肉片が飛び散るわ、やたらと生首がごろごろ出てくるわ、確かに残酷っちゃ残酷なんですが

 

 

見せすぎると、かえって残酷には見えなくなるものだと思う。

 

 

こういうのは、見せるところと見せないところ、押しと引きのバランスが大事なんです。このバランスがより残酷さを増すことに繋がり、悲惨さを増すことに繋がると

 

 

私は思う。

 

 

まあ、私の好みと言ってしまえばそれまでですが、何事も見せすぎやり過ぎはよくない。かえって面白くなくなる。

 

 

つまらなくなる。

 

 

観客には、実際に見せるより想像させた方が面白味は増すものです。想像させる演出力って、とても大事なんじゃないかな。

 

 

少なくとも私は、そう思う。

 

 

 

一番納得がいかなかったのは「官軍」という言葉の使い方です。

 

 

薩長が自らを「官軍」と称するのは納得できる。それはそうだろうと思う。自分たちは朝廷を奉ずる「天皇の軍隊」なのだから、誇りをもって自らを「官軍」と称するだろう。

 

 

新発田藩の者らが、薩長を「官軍」と呼ぶのもまあ理解できる。新発田藩は列藩同盟側のフリをしながら、実は薩長の側につくつもりなのだから。

 

薩長の側につくことで、新発田藩もまた「天皇の軍隊」となることができる。これぞ武士の誉れ。だから、薩長を「官軍」と称しているのはまだわかる。

 

 

 

しかし、長岡藩の者らまで、薩長を「官軍」と呼んでいるのは、どうにも合点がいかない。

 

 

長岡藩は完全に列藩同盟側です。そんな彼らが敵である薩長を「官軍」と呼ぶということは

 

 

自らを「賊軍」だと称するのと同じということになってしまいます。

 

 

列藩同盟側が自らを「賊軍」と称するわけがなく、ということはつまり、薩長を「官軍」と呼ぶわけがないんです。

 

 

そうでしょ?

 

 

呼ぶとすれば「薩長の奴バラ!」とか、せめて「新政府軍」ぐらいにしておいて欲しかったですね。

 

 

 

 

 

エンタテインメント映画なんだから、わかりやすくという意見もあるでしょう。私だって何もかも史実通りにするべきだとは思わない。エンタテインメントなんだから、多少の誇張や架空の話は合って当然。基本は

 

「面白ければ」

 

 

それでいい、とは思う。

 

 

 

でもエンタテインメントだからこそ、細かいところのリアリティって、大事だと私は思うんです。そういうところを大事にしない時代劇って

 

 

「面白くない」のです。

 

 

こうした、リアリティを大切にしない姿勢こそ、時代劇衰退の原因の一つだと、私は思っています。

 

 

その点、『侍タイムスリッパー』は、そうした細かいところのリアリティをとても大事にしており、それがあの映画を面白くしている重要な要因の一つだと思う。

 

 

自主映画であれだけのことを出来ているのに、大メジャー映画がこれか……。

 

 

なんですかね、時代劇に対する「愛」の違い、ですかね。

 

 

『碁盤斬り』は悪くなかったんだけどなあ…。

 

 

なんとも残念。

 

 

 

唯一、仲野太賀くんは頑張っていたと思う。あの殺陣は相当練習したのでしょうね。一生懸命練習した跡が伺える殺陣でした。

 

 

その頑張りは、賞賛したいと思います。

 

 

ただ、映画としては一言

 

 

「つまらない」

 

 

以上です。

コメント
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