2000年公開かあ、24年前、撮影はおそらく1999年だろうから、もう25年も前の映画だ。月日が経つのは本当に速い。
寺尾聡演じる浪人。剣の腕は立つし、性格はとても優しい。いつも春風駘蕩として、陽だまりのような温かさと、春風のような爽やかさを持つ侍、なのですが
なぜかいつも、トラブルに巻き込まれる。その腕を見込まれて仕官しても、すぐダメになる。生活が安定せず、貧乏な放浪暮らしが続く不運。
試合をすればまず負けることはない。しかし負けた相手に対しても優しく気遣ってしまう。
この優しさが相手の不興を買う。恨まれる。結果
トラブルが起きる。
こんなことの繰り返し。それでもこの人は、
その性格が曲がることはなく、相変わらず他人のこと、それが武士であろうと庶民であろうと関係なく、優しく気遣う。
この人が出会った某藩のお殿様。三船史郎(三船敏郎さんの御子息)が演じるお殿様とは妙に気が合い、今度こそは上手く行くかと思えたのだが……。
主人公を演じる寺尾聡さんがとても良い。その佇まい、歩き方、所作等が完璧で、普段は優しい目をしているのに、刀を抜いて構えると、その目つきがとても厳しいものに変わり、全身から発する「気」まで変わってしまう見事さ。
寺尾さんはこの映画のために、剣術の先生について稽古を重ねたそうで、その動きにはまったく無駄がなく、「本物」にしか見えない。
素晴らしいです。
三船史郎さんはプロの役者さんではないので、演技は下手ですが、その豪快さは三船敏郎さん譲りで、演技よりもその「人物」で選ばれたのでしょうね。
吉岡秀隆さんも出ているのですが、この方はどう見ても、武士にはみえないんだよなあ(笑)。まあでも、こんな武士がいても良いかな。
それと、主人公の奥方を演じた宮崎美子さんがとても良かった!この奥方のセリフ
「人は何をしたかではなく、何のためにしたか」が大事だというセリフ。
すべてのことに通じるセリフとは言い難く、あまり安易に使うべきセリフではないけれど、人の在り方、優しさ、情というものは、とても大事な、考慮すべきことだな
とは思いますね。
そうそう、最近話題の山口馬木也さんも出てます。セリフもほとんどなく、殿の後に控えている近習役でひっそりと出演されています。この頃から今に至るまで全然変わっていない印象。この時点ですでに、「山口馬木也」は出来上がってます。
黒澤明監督の遺稿を基に制作された本作。晩年の黒澤監督が描きたかった「爽やかな」時代劇を、黒澤監督の弟子にあたる小泉堯史監督が映画化した作品。
良い時代劇です。おススメ。