リベラルくずれの繰り言

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沖縄県民投票:市町村の反抗には「下には下がある」でいこう

2019-01-24 | 政治
普天間飛行場の辺野古移設をめぐる県民投票で、安倍首相に近い保守系の市町村の首長が実施しないと言っている。「上が決めたのに下が従わなくていいのか」と言いたくなるが、それは政府方針に抵抗している沖縄県も同じことで、上がおかしなことを押し付けようとした場合に現場が抵抗するのを一概に否定すべきではない。
だが、今回の場合、自民党の宮崎政久衆院議員が「県民投票条例への対応について」と題した資料などを市町村議員を対象にした勉強会で配布して、投票事務予算の否決を呼びかけていた(琉球新報)と聞くと、もともと県民投票に懐疑的だった私でも、自民党にしてやられたという気がして面白くない。
だがそうした市町村で「投票する権利を奪わないで」という有権者の声もあるようだ(朝日新聞2019-1-24)。選択肢を自民党の要望を一部取り入れて3択にすることで打開しようという動きもあるようだが、県民投票に後ろ向きな首長のおひざ元で有権者たちが声を挙げれば、さすがに無視できないのではないだろうか。

ただ気になるのは、そうした自治体では、長年基地問題を抱えてきた沖縄であってなお、自民党や安倍首相に近い人たちが選挙で勝って、首長の座や議会を握っているということだ。沖縄の有権者はなぜ自民党に投票するのだろう。
もし、そうした自治体の沖縄県民が(助成金などで不利な扱いをすると政府に脅されたからであったとしても)自民党の基地政策を受け入れて自民党を勝たせたのであれば、反対派のアピール色の強い県民投票「不実施」も、そうした自治体の有権者の民意ということになるのだろう。
その一方、選挙では政策ごとに投票することはできないから、基地問題では自民党の政策は認められないけれども、経済を考えて自民党に投票した、という人が多いのであれば、ここは県民投票不実施に抗議する運動を起こすべきだ。

政府に抵抗する沖縄県にその傘下の市町村が歯向かうのであれば、そのさらに下の草の根の有権者の声を盛り上げてそうした市町村に届けてはどうか。

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追記:
5市の市長が県民投票ボイコットの意向を示していた問題で、急遽全県実施の見通しが立った。県側が選択肢を2択から3択にすることで譲歩したのが受け入れられたのだが、朝日新聞2019-1-26によれば、選択肢の表現をめぐって抵抗していた自民党も、5市町が市民から抗議を受けて窮地に立たされていることを指摘されて折れたらしい。市民からは連日、抗議の電話やファクスがあったといい、上記で書いたことがまさに現実になっていた。
それにしても、選択肢をめぐる自民党の主張は背後の意図が見え見えで興味深い。県側が譲歩して合意された選択肢は「賛成」「反対」「どちらでもない」だが、これに対して自民党が提示していたのは「普天間飛行場移設のための辺野古埋め立ては、やむをえない」「普天間飛行場移設のための辺野古埋め立ては、反対」「どちらとも言えない」の3択案だった。「普天間飛行場移設のため」であることを強調し、「賛成」でなく「やむをえない」とすることでハードルを下げようとしているのが明らかだ。(一方、そもそも県民投票自体が「反対」の多さをアピールしようとする意図が見え見えなので、どっちもどっちであるような気もするのだが。)

追記2:憲法学者の木村草田氏は、県民投票が全県で実施されることになったことについて、沖縄弁護士会の会長声明(1月11日)が契機になったと評価している(朝日新聞2019-2-3)。会長声明は、実施拒否は県民から県の意思決定に参加する機会を奪うものであり許されないこと、住んでいる場所により投票権の有無が左右されるのは法の下の平等の観点から「極めて不合理」、つまり憲法違反である疑いがあることを指摘していた。

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