リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

人口増のための禁じ手2策

2017-09-03 | 一般
少子化による社会の担い手の減少を防ぐために,子育て支援や男女問わず労働者の生活安定など,正攻法の対策が必要なのは言うまでもない.移民の利用なども論じられており,否定はしないが,私には貧困国の存在を前提にした先進国の身勝手と感じられる.
発想の転換として,「結婚と出産の分離」「出産と子育ての分離」という禁じ手がある.断っておくが,私もこれらに問題があることは承知しており,単純に推奨するわけではない.議論のきっかけになればと思う.

まず「結婚と出産の分離」.日本では結婚しないと出産しないという傾向が強く,それが少子化の一因になっていることはよく指摘される.たしかに女性が産みたいと思って適切なパートナーがいたとしても,結婚にまでは踏み切れないケースは多いと思う(その一因は賃金水準が低く生活が成り立たないということなので,ここでも正攻法の対策は必要だ).これに対し,出生率が回復したフランスなどでは,結婚しないで出産するのが当たり前だという.もっとも,それもシングルマザーが普通に生活できる環境が整っていることが前提だ.もちろん,いくら環境が整ったからといって,「結婚しないでいいから出産を」というのは声を大にしては言いにくい.昨今,「できちゃった婚」が増えていると聞くが,とりあえずは妥当な落着点だとは思う.(ネガティブな語感を避けて最近は「おめでた婚」というそうだ.)

次の「出産と子育ての分離」.世の中,育てる自信がないからと妊娠・出産をためらっているカップルは多いだろう.育てるのは社会が責任をもつ,という態勢があれば産む人はいるはずだ.
「育てるのは社会でやるからとにかく産んで」というのはもちろん暴論だ.実は私はひところ,だめな親に育てられるよりは施設で育ったほうが子供は幸せと思っていた時期もあるが,ある時新聞で,(毎晩一緒に寝てくれるなどする)特定の保護者との愛着をもつことが成長の上で重要と読んで考えを改めた.孤児などについても,施設よりは里親で,というのが世界的な潮流だという.「生まれた子供は親から引き離されて管理された環境で育てられる」というSFもありそうだが(ちょっと違うが竹宮恵子『地球へ』など),それが目指すべき方向だとは私も思っていない.
だが現に,産んだ子を捨ててしまう事例が4年間に58人もいたことを朝刊で知った(朝日新聞).そういう現実がある以上,とりあえず「赤ちゃんポスト」のような受け皿は拡充してもいいと思う.

「結婚と出産の分離」,「出産と子育ての分離」はいずれも社会的なモラルの破壊につながるようでは困るが,この辺に現状打破の糸口はないだろうか.

追記:朝日新聞の上記と同じ連載の9月5日の記事には,ネット上で赤ちゃんを斡旋する情報に希望者が殺到していることが紹介されている.あとになって養子縁組された子や引き取った親が不幸にならないよう安易な縁組は慎むべきだし,人身売買のようにならないことも必要だが,ただ反発するのではなく,問題点をどうやって克服していくかという前向きな観点から議論したい.

追記2:上記連載の最終回(朝日新聞9月9日)にアメリカではもっと公に取り組んでいることが紹介されていた.育てられない赤ちゃんを匿名で預けることができる「赤ちゃん安全保護法」が1999年のテキサス州を皮切りに全国に広がっているとのこと.州によって詳細は違うのかもしれないが「No Shame, No Blame, No Names」(恥じることなく,非難されず,匿名で)が共通のスローガンになっているという.

追記3:「匿名での「内密出産」検討 赤ちゃんポストの慈恵病院」(朝日新聞12月15日)の記事が目を引いた.ドイツでは母親が相談機関に実名で登録した上で医療機関で匿名で出産する「内密出産」の制度が2013年にできたそうだ.

追記4:「結婚と出産の分離」がなされている欧米と同じように子育て支援にばかり目を向けていたことが日本の少子化対策失敗の一因だと、山田昌弘『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか? 結婚・出産が回避される本当の原因』(光文社新書)が喝破しているという(朝日新聞2020-8-1)。同書は欧米式の「結婚と出産の分離」を勧めるのではなく、結婚支援こそが必要と指摘しており、目からうろこだった。また、上記で私は労働者の生活安定が必要なことは当然の前提として書いていたが、同書によれば、経済的理由から結婚・子育てを断念する傾向を把握できなかったことをもう一つの失敗要因と指摘している。行政がそんな自明のことを把握できていなかったとは驚いた(もっとも、政府が非正規雇用拡大、弱者切り捨ての立場を取り続けていて、仮に把握していたとしても打つ手は限られていただろうが)。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 権力の源泉:人事権は司法を... | トップ | 原発が北朝鮮のミサイルの標... »
最新の画像もっと見る

一般」カテゴリの最新記事