リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

本人が否定するセクハラ等の処分はどうあるべきか

2018-04-28 | 一般
セクハラ発言を繰り返したとされる財務省の福田淳一事務次官の処分が決まり,退職金が5319万円から5178万円に減額された(ただし処分はセクハラだけではなく,国家公務員法で規定されている行政への信用を失墜させる行為も加味されている).財務省は,調査の上でセクハラ行為があったと認定して処分を決めたが,本人はセクハラ行為を否定しており,裁判に訴える意向を表明している.いわゆる「推定無罪」は刑事事件に適用されるものであり,法的には今回のケースは対象外だが,本人が否定している容疑での処分がどうあるべきか,先日のブログであれこれ書いた.
今日の朝刊に参考になる記事があった(朝日新聞2018-4-28).
企業の危機管理業務を手がけるコンサルティング会社の代表によれば,今回のような場合,今の企業の一般的な対応は,まず即座に自宅待機を命じ,弁護士に聴取を依頼して72時間くらいで調査を完了するというものだそうだ.だとすると,本人が否定しているからといって自宅待機もさせずに野放しにした点,週刊新潮が疑惑を報じてから処分決定まで15日もかかり,その間,麻生財務相らの調査に後ろ向きだった点はやはり問題だ.与党の公明党も「遅きに失した」と批判している.(麻生氏が「相手の人が出てこなきゃいかん」と言うなど被害女性の心情を踏みにじるような発言をしたことも問題だが,今回のテーマからは外れる.)
一方,処分を決めるに当たって,財務省は福田氏から明確な反証が示されていないことも考慮したというが,これについては,「適正な調査をせずに処分していいという悪い前例にもなりかねない.もっと財務省が主体的に本人や被害者側から話を聞く努力をして,きちんとした事実認定をした上で処分を出すべきだった」との批判もある(元検事).私の感覚では,今回は録音という証拠もあったことから,「72時間」という民間での上記の相場も考えれば,比較的短時間の調査で処分を決めたこと自体は妥当という気がする.
一方,元検事の言葉からは財務省の調査が不十分だとの認識がうかがえる.上記のコンサルティング会社の人も「(たった)これだけの内容」と形容している.動きが鈍かった財務省が批判の高まりに応えて一転,処分を決めたことに対し,財務省は「新しい情報が財務省として取れないと思ったので,調査を打ち切り,今ある情報のかぎりで処分を下すと判断した」というが,連休前に幕引きを急いでいるようで批判もある.だが私にはたしかにこれ以上なにをすべきかよくわからない.コンサルティング会社代表や元検事の方に,本人が否定し,被害者が名乗り出づらい今回のような事件について,どういう調査をすべきなのか,ノウハウを取材してほしい.(麻生財務相の辞任を求める声については,たしかに「名乗り出ろ」は政治家としてどうかとは思うが,政治的な思惑が感じられて,心情的には同感でも,理性的に賛同しづらい.)しいていえば,福田氏本人にセクハラの事実を認めて頭を下げてほしいところだが,福田氏本人が出版社に対して裁判に訴えると公言しているので,とりあえずそれを待ってもいいように思う.もし訴訟の動きがなければ,その時点で,いいかげん認めて謝罪しなさいと促す,という流れが妥当なのではないか.(大衆はそのころには忘れている,というのを当てにされているような気もするが.)

セクハラだけでなく,さまざまな不祥事だとか,論文捏造だとか,必ずしも本人が「罪状」を認めていなくても,処分されている事例がいろいろあるような気がする.過去の事例についてまとめた解説記事がほしい.

追記:上記では,本人が否定している案件でこれ以上調査のしようがないという財務省の言い分と同様に,もっと調査しろという批判はよくわからないと書いた.朝日新聞社説(2018-4-29)は矢野官房長がいう「先進的組織に生まれ変わる」というのを口先だけで終わらせないためには事実の解明が欠かせないと述べており,そのとおりだとは思う.だが,やはりどういう調査をするべきなのかはよくわからない.社説は,問題発覚後の麻生財務相や財務省の対応(「被害者出てこい」のような態度をとったり「福田氏ははめられたという話がある」という発言をしたりしてきたのに,今度は「被害者保護」を口実に調査打ち切りを決めるなど)も批判しており,それは正しいと思うが,事実解明とは直接関係ない.

処分の発表に対し,被害女性が所属するテレビ朝日は引き続き詳細な調査をするよう求めているというが,たしかに録音があった1回だけでなく,1年半ほど前から複数回取材し,そのたびにセクハラ行為があったというから,その点についての確認が求められる.
だが,やはり本人が否定しており,1対1であったとすれば目撃者もいないだろうから,具体的な調査となると,先日書いたように,福田前事務次官の日ごろの言動に関する証言集めくらいしか思いつかない.やはり上記のコンサルティング会社に,こうした事案の調査の進め方についてのノウハウを聞きたい.

追記2(本人が否定する疑惑での処分の例):「#Me Too」運動が高まった2017年,ノーベル文学賞を選考するスウェーデン・アカデミーに関係する文化界の重鎮の男性からレイプなどを受けたとして,女性18人が大衆紙に証言し,その後受賞者情報漏洩などの疑惑も浮上した.男性は疑惑を否定しているが,アカデミーは男性との関係を断った.「終身」であるアカデミー会員の辞任が相次ぎ,2018年のノーベル文学賞の発表を見送ることが決まった.(朝日新聞2018-5-5同22面


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