リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

規制緩和で高層ビルばかりの街になっていいのか

2019-07-26 | 一般
日本の都市はどこも似たり寄ったりでごみごみしている。ヨーロッパなどでは街並みを保存するために建築・改築などに制限を設けることがあると聞くが、日本ではそうした街並みを考えた都市計画がなく、ディベロッパーの儲けのために狭小敷地にビルを建てたり、高層化が進んだりしてしまっている。
景観論争というと京都の高さ規制が有名だが、外国人観光客の急増でホテル建設が相次ぎ、さらに市は規制緩和の方針を打ち出したという(京都新聞2018-11-16)。(つい先日、それを嘆く京都市民の投書を朝日新聞紙上で読んだように思う。)
そして今、東京の明治神宮外苑地区で高さ制限が緩和されて高層ビルが次々に建ちつつあるそうだ(朝日新聞2019-7-25)。1970年の都条例で決められた制限は高さ15メートルだったが、オリンピック招致を機に一気に80メートルまで緩和された。さらに、地区外だが近くに170メートル級のビルが建っているという理由で地区内の一部で同程度の高層化も容認されてしまった。
制限の対象は高さだけではない。容積率(敷地面積に対する延べ床面積の割合)にも制限があるが、これも緩和される傾向がある(asahi.com)。しかも、容積率というのは売買できる(「空中権」という)。だから地権者が自分のビルは高層化する意思がなくても、近隣の高層化を望む地権者に売ることができる。たとえば東京駅はそのようにして保存工事の費用を賄った(朝日新聞2014-11-21)。容積率の制限のため高さ制限めいっぱいの高層化ができない場合でも、このようにして次々に高層ビルが建つ。
しかも、オフィスビルならまだしも、再開発でタワーマンションが建つような場合、50年後にどうなるのか不安がある。今から50年前に建てられた団地などでは建て直しが問題になりながらも実現にこぎつけた事例は少ないと聞く。実現できた事例は、容積率に余裕があったから階数を増やして戸数を増やし、それを新規住民に売ることで、少ない住民負担で建て直しができる、という事例がほとんどだと思う。どんなマンションでも修繕積立金はあるのだが、そこまで賄える積み立てをしている例はほとんど皆無ではないか。

技術の進歩で高層ビルが簡単に建てられるようになった。高さ制限や容積率を緩和すればそれは地権者にとっては、よりフロア数の多いビルを建てたり、空中権を売ったりすることでもうける大きなボーナスになる。ディベロッパーも潤う。だがその代償として高層ビルが無造作に建ち、空も見えない街になる。
経済活性化のために規制緩和が叫ばれているが、緩和して大企業に儲けさせればいいというものではないと思うのだが。

追記:東京都練馬区は、2020年12月に石神井公園駅周辺の商業地区での、原則35メートルまでという高さ制限を緩め、2000平方メートル以上の敷地があれば100メートルでもいいことにした。これを主導したのは前川区長だという(朝日新聞2021-8-19夕刊)。練馬区では都市インフラ、特に都市計画道路の整備が「致命的に遅れて」いるとの認識があり、道路計画とともに駅周辺の再開発促進を盛り込み、野村不動産や前田建設工業が関与する「準備組合」に2億5千万円の補助金を出したという。35mの高さ制限の地区にいきなり100mのタワマンが林立。そんなことが区長の考え方ひとつで決まってしまっていいのだろうか。まさかそれで私腹をこやしてはいないのだろうが、だとしても不動産会社と建設会社ばかりがもうかる再開発の仕組みが不思議でならない。



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