安倍首相は選挙演説でやめろコールを浴びたことがトラウマになって先の参院選では遊説日程を完全には公開しなかった。ヤジから隠れるような安倍首相もみっともないが、2017年にも書いたように、組織的なヤジで演説を妨害するのはやはりよくないと思う。
菅直人元首相のヤジに対する神対応について読んだ(朝日新聞2019-7-26「声」欄)。国政選挙ではない演説だったそうだが、中年男性が近寄って「あんたが政権与党の時は…」と大声でヤジりはじめたところ、菅氏は「その件については後で説明しますから、まず話を聞いてください」と言って演説を続けて、後段になって本当に男性の批判への回答もしたという。
菅氏の場合、ヤジが一人で、内容も具体的だったからこその対応であって、仮に右翼が組織的な罵倒で妨害したら同じような対応はできなかっただろう。だから過剰警備で演説に臨む最近の安倍首相のやり方と単純に比較はできない。遊説日程を完全に公開しないという対策は理解できないでもない。
だが警察の警備については疑問が残る。
7月15日、札幌市で安倍首相の演説中に「安倍やめろ、帰れ」と連呼し、別の場所の女性は「増税反対」と叫んだところ、いずれも警察官数人に取り囲まれ、身体をつかまれて後方に連れていかれた。北海道警は当初、「トラブル防止と、公職選挙法の『選挙の自由妨害』違反になるおそれがある事案について、警察官が声かけした」と説明していたのだが、「声かけ」ではなく、有無を言わさず後方に連れていかれた、という記事を当初読んだように思う(朝日新聞2019-7-17)。さらに公職選挙法違反については疑問の声もあり、道警は「事実確認中」に説明を後退させて、「個別の法律ではなく、トラブル防止のため、現場の警官の判断で動いている」と説明を変更したそうだ(朝日新聞2019-7-18)。
私は反安倍だが、こういう場合、逆に菅元首相の演説に右翼に「菅、帰れ」と連呼されたら、と考えてみる。「連呼」はやはりよくないような気もするが、「声かけ」ではなく、いきなり体をつかまれて後方に連れていかれる、というのはちょっと異常ではないか。「増税反対」と一回叫んだだけとなればなおさらだ。
「トラブル防止」は仕方ないが、単発のヤジで警察が飛んでくるというのもやはり異常だと思う。
追記:朝日新聞2019-8-21にヤジを飛ばしたとたんに排除された男性(31)、女性(24)が取り上げられていた。女性は警官に引っ張られる際、「法律犯してないのにヤバくない?」と周囲に聞こえるように話したが、みな傍観するばかりだったという。その後、1時間ほど複数の警官につきまとわれ、「(私たちに)権力なんかないよ(笑)」、「(あなたと)ウィンウィンの関係になりたい」、「ジュース買ってあげる」などと言われたそうだ。なんだか気持ち悪い。
追記2:参院選での安倍首相の演説の様子の詳しい様子が朝日新聞2019-8-28夕刊にあった。首相の演説会場の多くでは「安倍総理を支持します」といったボードを持った人が最前列に並び、「持ってくれませんか」とボードを配る場面もあったという。そうして前のほうは支持者で固めるため、ヤジが飛ぶのはいつも後方からになる。東京のJR中野駅前では「安倍やめろ」コールが起きたのだが、ボードを持った支持者たちがその前に立ちふさがってボードを高く掲げたという。東京のJR秋葉原駅前では、首相到着前に、大きな黒い風船で「安倍やめろ」と書いた幕を掲げようとしたが、風船は次々と割られてもみ合いになったという。
記事に指摘されるまでもなく「演説が聞こえなくなるようなコール」はやはりよくない。警察による排除と違って、支持者たちがボードで反対派の視界を封じるのは違法とまでは言いにくい。こうまでやっきになって反対派の動きを封じ込めようとするのは、やはり「テレビ写り」を考えてのことだろう。テレビやSNSが断片的な映像を伝えて、それが大きなインパクトを与えるとなると、やはりカメラの前から異分子は排斥しなければ気が済まなくなるのだろう。これも、ぱっと見の印象が拡散してしまうSNS時代の負の側面だ。
追記3:埼玉県知事選では柴山昌彦・文科相の応援演説の最中に大学入試改革への反対を叫んだ大学生を警察官が取り囲んで遠ざけた(朝日新聞2019-8-28)。大学生は入試改革で混乱している大学生を代弁し、特に英語の民間試験の活用を懸念して国会議員に署名を提出する活動に加わったが、文科省が動かないので大臣に直接訴えようとしたのだという。たしかに英語での民間試験の利用は制度作りがずさんで実施が迫っているのに未定部分が多く、学校行事の日程を組むにも支障が出ていると先日の新聞にあった(今みつからなかったが参考までにAERA.dot)。もちろん知事選の応援演説の場でそれをぶつけるというのは筋違いな気がしなくもないが、やはり警官が排除するというのはやりすぎではないか。
菅直人元首相のヤジに対する神対応について読んだ(朝日新聞2019-7-26「声」欄)。国政選挙ではない演説だったそうだが、中年男性が近寄って「あんたが政権与党の時は…」と大声でヤジりはじめたところ、菅氏は「その件については後で説明しますから、まず話を聞いてください」と言って演説を続けて、後段になって本当に男性の批判への回答もしたという。
菅氏の場合、ヤジが一人で、内容も具体的だったからこその対応であって、仮に右翼が組織的な罵倒で妨害したら同じような対応はできなかっただろう。だから過剰警備で演説に臨む最近の安倍首相のやり方と単純に比較はできない。遊説日程を完全に公開しないという対策は理解できないでもない。
だが警察の警備については疑問が残る。
7月15日、札幌市で安倍首相の演説中に「安倍やめろ、帰れ」と連呼し、別の場所の女性は「増税反対」と叫んだところ、いずれも警察官数人に取り囲まれ、身体をつかまれて後方に連れていかれた。北海道警は当初、「トラブル防止と、公職選挙法の『選挙の自由妨害』違反になるおそれがある事案について、警察官が声かけした」と説明していたのだが、「声かけ」ではなく、有無を言わさず後方に連れていかれた、という記事を当初読んだように思う(朝日新聞2019-7-17)。さらに公職選挙法違反については疑問の声もあり、道警は「事実確認中」に説明を後退させて、「個別の法律ではなく、トラブル防止のため、現場の警官の判断で動いている」と説明を変更したそうだ(朝日新聞2019-7-18)。
私は反安倍だが、こういう場合、逆に菅元首相の演説に右翼に「菅、帰れ」と連呼されたら、と考えてみる。「連呼」はやはりよくないような気もするが、「声かけ」ではなく、いきなり体をつかまれて後方に連れていかれる、というのはちょっと異常ではないか。「増税反対」と一回叫んだだけとなればなおさらだ。
「トラブル防止」は仕方ないが、単発のヤジで警察が飛んでくるというのもやはり異常だと思う。
追記:朝日新聞2019-8-21にヤジを飛ばしたとたんに排除された男性(31)、女性(24)が取り上げられていた。女性は警官に引っ張られる際、「法律犯してないのにヤバくない?」と周囲に聞こえるように話したが、みな傍観するばかりだったという。その後、1時間ほど複数の警官につきまとわれ、「(私たちに)権力なんかないよ(笑)」、「(あなたと)ウィンウィンの関係になりたい」、「ジュース買ってあげる」などと言われたそうだ。なんだか気持ち悪い。
追記2:参院選での安倍首相の演説の様子の詳しい様子が朝日新聞2019-8-28夕刊にあった。首相の演説会場の多くでは「安倍総理を支持します」といったボードを持った人が最前列に並び、「持ってくれませんか」とボードを配る場面もあったという。そうして前のほうは支持者で固めるため、ヤジが飛ぶのはいつも後方からになる。東京のJR中野駅前では「安倍やめろ」コールが起きたのだが、ボードを持った支持者たちがその前に立ちふさがってボードを高く掲げたという。東京のJR秋葉原駅前では、首相到着前に、大きな黒い風船で「安倍やめろ」と書いた幕を掲げようとしたが、風船は次々と割られてもみ合いになったという。
記事に指摘されるまでもなく「演説が聞こえなくなるようなコール」はやはりよくない。警察による排除と違って、支持者たちがボードで反対派の視界を封じるのは違法とまでは言いにくい。こうまでやっきになって反対派の動きを封じ込めようとするのは、やはり「テレビ写り」を考えてのことだろう。テレビやSNSが断片的な映像を伝えて、それが大きなインパクトを与えるとなると、やはりカメラの前から異分子は排斥しなければ気が済まなくなるのだろう。これも、ぱっと見の印象が拡散してしまうSNS時代の負の側面だ。
追記3:埼玉県知事選では柴山昌彦・文科相の応援演説の最中に大学入試改革への反対を叫んだ大学生を警察官が取り囲んで遠ざけた(朝日新聞2019-8-28)。大学生は入試改革で混乱している大学生を代弁し、特に英語の民間試験の活用を懸念して国会議員に署名を提出する活動に加わったが、文科省が動かないので大臣に直接訴えようとしたのだという。たしかに英語での民間試験の利用は制度作りがずさんで実施が迫っているのに未定部分が多く、学校行事の日程を組むにも支障が出ていると先日の新聞にあった(今みつからなかったが参考までにAERA.dot)。もちろん知事選の応援演説の場でそれをぶつけるというのは筋違いな気がしなくもないが、やはり警官が排除するというのはやりすぎではないか。