「イギリスの朝食は世界一」 一部引用編集簡略版
イギリス料理はまずいという定評があるが、そんなことはない。イギリスの朝食といったら世界一だ。朝食があまりにも充実していておいしいので、日に三回、朝食を摂りたくなる。
一流ホテルに泊まると、朝昼夜のメニューのなかで朝食の献立が食欲をもっともそそられる。スモークサーモン、ハドック(北大西洋のたら)、キッパー(にしん)といった魚から、グリルド・ハム、ステーキ、ラム(子羊)のキドニー(腎臓)や、レバー(肝臓)などの肉、卵料理、マッシュルームをはじめとする温野菜料理といったように、盛りだくさんだ。さまざまな種類のホットケーキが載っている。
フランスをはじめとして、ヨーロッパ大陸のパンと苦いコーヒーだけという朝食は、英語圏で「コンティネンタル・ブレクファスト」(大陸の朝食)と呼ばれているが、安楽な眠りを中断して、ベッドから起きあがる褒美にはとうていならない。朝食はイギリスの厨房がもっとも輝くときだ。
歴代の首相の中には、在任中に官邸や、自宅で優雅なブレクファスト・パーティを催したが、ワインも供されて、昼頃に終わった。
イギリス料理もそう悪いものではない。素材の味を生かしているから、日本料理に似ている。きゅうりのサンドイッチといったら、サンドイッチを生んだ国だけあって、天下一品だ。フランス料理は大陸の代表的な料理だが、イギリスは島国だから新鮮な魚介類が豊富に手に入るのに対して、大陸では素材が痛んでいるのを隠して、ごまかさなければならないので、ソースが発達した。
朝食こそは、イギリスを訪れる楽しみの一つである。
参考:加瀬英明著「イギリス 衰亡しない伝統国家」
加瀬英明氏は「ブリタニカ国際大百科事典」初代編集長