勝手にお喋りーSanctuaryー

マニアックな趣味のお喋りを勝手につらつらと語っていますー聖域と言うより、隠れ家ー

野球界には収まらなかった男

2006-06-06 | TVや舞台やスポーツのお喋り
新庄選手(日本ハム・34)がまたやってくれた。
6日、札幌ドームで、地上50メートルから守備位置に舞い降りたのだ。
ドームの天井からつるされた、ミラーボールのゴンドラに乗って。
写真はこちら

引退を決意した新庄選手にとって、グランドはもう自由な遊び場なのかもしれない。
もともと枠にはまるのが大嫌いな性格で、たいした勝算もないのにメジャーリーガーになってみたり、規格外ユニフォームで王監督にお目玉を食らったりしてる。
(ちなみにこのハイネックアンダーシャツ、長嶋さんも着ていたんだが)

私は彼が阪神で鮮烈なデビューを飾った頃からのファンだった。
当時サードを守っていたオマリー選手が怪我で休んだ時、自分の代理として新庄選手を推薦した。
ドラフト下位で入団した無名の選手が大抜擢され、見事に期待に応えた。
オマリー復帰後はセンターにコンバートされ、レギュラーの座をつかんだ。

新庄選手はまさに「記録より記憶」型の代表だ。
敬遠ボールをサヨナラホームランしたり、野村監督の指示でピッチャーに挑戦したり。
逆にその類稀な身体能力をまったく生かしきれなかった彼に、歯がゆい思いをした人も少なくないだろう。

新庄選手は彼なりに努力したのだろう。
だがそれはイチロー選手には遠く及ばない努力だったと思う。
彼はそれほど野球を好きではないのだろう。
監督の指示がすべての野球には、もっとも向いていない自由指向型の人間だったことが原因だったような気がする。

私には個人的に忘れられない一つの思い出がある。
デビューした年、横浜スタジアム3塁側最前列席で見ていたときの事。
ゲーム前には両チームの肩慣らしの為に「ボール回し」と言うのが行われる。
私はサードベースのすぐ前で、熱心にグランドを見つめていた。

サードにはオマリー。
バッターボックス近くに立った守備コーチがセンターに向かって高いフライを打ち上げる。
ほぼ定位置でこのボールをキャッチしたセンターの新庄は、決まりどおりサードへ送球。

野球を知っている人ならわかると思うが、送球されるボールはやや山なりの放物線を描いて飛ぶものだ。
だが新庄の送球は違った。
地を這うようなストレートボールなのだ。
今にも地面にぶつかりそうになりながら、猛スピードのボールは計ったようにオマリーのグローブに吸い込まれる。

「ヒュ~」とオマリーが外国人特有の口笛を吹く。
彼はそのままグローブを私の方に見せてくれた。
新庄の送球したボールは、オマリーのグローブの中で今も激しくスピンしている。
その摩擦熱で、グローブから白い煙が上がっているのだ。

その日、新庄は私の中で英雄になった。
Comments (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする