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Dearフランキー 君は最高の友

2006-05-26 | 映画のお喋り
 『Dearフランキー』 2004年 イギリス映画
   監督:ショーナ・オーバック
   出演:ジェラルド・バトラー、エミリー・モーティマー、ジャック・マケルホーン

ちょっとおバカな映画ばかり観てきたが、ようやく素直に感動できる映画に出会った。
シングルマザー、DV、障害と、モチーフは暗くなることばかり。
下手をすると子供を中心に据えて、泣かせに来る映画?と思われがちだが、無理に泣かせようと言うあざとさはない。
健気で、温かくて、優しい。
そんなエピソードの積み重ねだけで泣ける人なら泣くだろう。

まずロケーションが最高だ。
スコットランドの港町の、ちょっと淋しげな町と美しい自然が程よく溶け合っている。
これだけで映画をじっくり見ようという気持ちが整って来た。

「今度引越しするなら死んだ方が増しだ、とおばあちゃんは言った」
9歳の少年、フランキー(ジャック・マケルホーン)のモノローグからの入り。
引越し荷物を積んだ車を運転しているのはお母さんのリジー(エミリー・モーティマー)。
母と祖母と少年は、何故たびたび引越しをしなければならないのか。
後に重要なファクターとなる疑問が自然と沸いてくる。

フランキーは難聴だ。
声は出るらしいが、喋ることはなく、相手の唇の動きを読み、ジェスチャーで意思を伝える。(母親との会話は無論手話)
だが母親にこの障害のある子を、決して甘やかしてる様子はない。
引っ越してきたばかりの町なのに、ひとりでお使いにやらせる。
後にこの店の女主人マリーが、一家に深い関わりを持つようになる。

フランキーの父親は船員で、唯一のつながりは手紙のやり取り。
だがこの手紙を受け取るのは母親で、返事を出すのも無論彼女だ。
おばあちゃんが毎日新聞の死亡記事で確認しているところを見ると、死んだのでもない。
かと言って、普通の離婚でもない。
母親がたびたび引越しをする理由こそ、フランキーに告げられない父親の暗い秘密なのだ。

障害があっても、引っ越してばかりでも、フランキーは環境に溶け込もうとする。
リッキーと言う友達も出来て、パパはACCRA号と言う船に乗ってるんだと話す。
船名は母のリジーが切手に書いてあったものを勝手に使ったものだ。
だが偶然にもそのACCRA号がグラスゴーに帰港すると言うことをリッキーから聞かされる。

フランキーの願いは、一度でいいから父親と逢うこと。
だからこれは彼にとって、決して逃すことの出来ないチャンスだ。
今度こそパパが自分の元を訪ねてきてくれることを信じ、フランキーはリッキーとの賭けに乗る。

フランキーからの手紙でそのことを知ったリジーは、息子の願いに胸が張り裂けそうな思いを味わった。
彼女は船員バーに「過去も未来も名前もない男」を探しに行くが、娼婦に間違われ、絶望に打ちひしがれる。
そこに偶然通りかかったマリー(フランキーがお使いに行った店の主人で、リジーの雇い主)が事情を聞いて、ある男を紹介する。
切羽詰ったリジーはこの男を金で雇い、「一日だけのパパ」を務めてもらうことにした。

ここから映画は本筋に入る。
名前も知らない、何処の誰だかもわからない男。
だが彼はリジーから渡された手紙の束をきちんと読み、フランキーを理解し、事情もすべて飲み込んでいる。
彼はフランキーを外に連れ出し、二人きりの休日が始まる。

彼(ジェラルド・バトラー)は理想的な父親だ。
文句の付け所がないことに、逆に文句を言いたいほどだ。
何気ないやり取りだけど、画面いっぱいに暖かい空気が流れる。
これといった事件も起きないのに、ずっと二人の様子を見守りたい気持ちにさせる。

この頃、リジーにはとんでもない事件が持ちあがっていた。
そしてついに父親の暗い秘密が暴かれる。
まだ若く魅力があるのに、再婚もせず、年老いた母と障害のある息子の世話をし、逃げ回っているためにロクな仕事にも就けないリジー。
フランキーはもちろんだが、このリジーにも幸せになってほしいと思わせる。

映画は終盤で二つのサプライズを用意する。
このサプライズがご都合主義ではなく、実に自然に用意されているから、見ているほうは心地よい流れに身を任せられる。

結末はハッピーエンド?
どうかそれは映画を見て、自分の感性で確かめて欲しい。

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