片手だけを満たして憩っている方が、両手にいっぱい持って、なお忙しく気苦労しているよりもよい。 (伝道の書第四章第六節)
ここでも、本当の幸福がどこにあるかを語っている。しかしまた、これは内向きの、退廃にも通じる心組みにもなりかねない。
ただ、分を弁えて節度を守り、その中に、心穏やかに生きることに、作者のコヘレトは、幸福を見出している。
これは、単に個人について言えるばかりではなく、国民や民族についても言えることである。他人といつも同じことをしていなければ、心休まらない経済大国で、しかも、サラ金のコマーシャルがたえず流され、その中に多くの多重債務者を生み、また年間に三万に及ぶ自殺者を生んでいる社会が幸福であるかどうか。