子音
6. 子音字 --- 子音(σύμφωνο 複 σύμφωνα)は,次のように単独または2個組の子音字によって表される。
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a. χ, γ --- 舌の奥の部分と上あごの間で出す無声摩擦音が [x] 音で,ドイツの音楽家 Bach の ch の音に近似する。これが χ の基本的な発音であるが,母音 [i] または [e] の前では摩擦音を出す位置が舌先に移動して [ç] という音になる。これは,日本語の「ヒ」「ヒェ」に近い音である。γ は χ と同様の口の形で出す有声摩擦音である。日本語のガ行の子音 [g] との違いに注意すること。また,直後に母音 [i] または [e] が来ると,χ の場合と同様に摩擦音が変化して γι, γε が日本語の「イ」「イェ」に近い音として発音されるようになる。[i], [je] とは区別しなければならないが,特に語頭では区別しにくい。
b. φ, β --- それぞれ英語の f, v に相当する。下唇と上の歯の間で摩擦音を出す。
c. θ, δ --- θ は英語の theater の th に,δ は英語の that の th に相当する音。舌の先端と上の歯の間で摩擦音を出す。
d. σ --- 日本語のサ行の子音に相当する。ただし σι は日本語の「シ」ではなく,「スィ」と言う気持ちで発音する。
e. ζ, τζ --- ζ は σ を有声にしたもので,舌先を歯茎につけずに発音する(英語の zoo の z 音)。τζ は τσ を有声にしたもので「ツ」の口の形のまま有声で発音する(英語の buds の ds 音)。英語の jump の j の音にならないように注意する。
f. εκ と σ で始まる語から構成される複合語 εκστρατεία, εκσυγχρονισμός などは,κσ を ξ と書かない。
7. σ は,有声子音の直前では通常 [z] と発音する。ただし,λ の直前では通常 [s] と発音する: καλεσμένος [kalezménos], σβήνω [zvíno], Ισραήλ [izraíl], ισλαμισμός [islamizmós]
8. 語中の γγ, γκ, γχ は,それぞれ [ŋg], [ŋg], [ŋx] のように,鼻音 [ŋ] を加えて発音する。鼻音とは,日本語の「タンゴ」の「ン」の部分の音である: αγγίζω [aŋgízo], ανάγκη [anáŋgi], άγχος [áŋxos]
a. 語中の γκτ は [ŋkt] と発音され,時に [k] が脱落する: ελεγκτικός [eleŋktikós], Ουάσιγκτον [wásiŋton]
b. 語中の γγ は,通常 [ŋg],すなわち,語中の γκ と同様に発音される。ただし,γ で始まる語から形成された複合語は [ŋγ] と発音されることもある: συγγραφέας [siŋγraféas], έγγαμος [éŋγamos] < εν + γάμος
c. 外来語の中には,語中の γκ を単独の [g] で発音するものもある: μπαγκέτα [bagéta]
d. 文語体の名詞語尾に現れる γξ も [ŋgs] のように鼻音化して発音される: φάλαγξ [fálaŋgs]
9. 語中の μπ, ντ は,それぞれ [mb], [nd] と発音される: έμπορος [émboros], πέντε [pénde]
a. 語中の μπτ は [mpt] と発音され,しばしば [p] が脱落する: Πέμπτη [pém(p)ti]
b. 外来語においては,語中の μπ が [b] あるいは [mp] と,語中の ντ が [d] あるいは [nt] と発音されることもある: ταμπού [tabú], σαμπουάν [sampwán], τζούντο [tzúdo]
10. αυ, ευ は,母音および有声子音の前で [av], [ev] と発音され,無声子音の前で [af], [ef] と発音される: αύριο [ávrio], παύω [pávo], αυτός [aftós], δουλεύω [ðulévo], εύκολος [éfkolos]
a. αύ, εύ は,α, ε の上にアクセントを置いて発音されるが,アクセント記号は υ の上に記される。これは,本来 αυ, ευ が二重母音 [au], [eu] であったという歴史的経緯によるものである。
b. β, φ の直前の αυ, ευ の υ は発音されない: Εύβοια [évia], εύφορος [éforos]
11. 同一の子音字2個の組み合わせのうち κκ, ππ, ββ, ττ, σσ, μμ, νν, λλ は,単独の子音字 κ, π, β, τ, σ, μ, ν, λ とまったく同様に発音される。
a. たとえば,ήττα と ήτα ([íta]),τόνος と τόννος ([tónos]),κόμμα と κώμα ([kóma]),πολύ と πολλοί ([polí])は,発音の上からは区別できない。κόμμα を「コンマ」,τόννος を「トンノス」と読まないように注意すること。
出典