アジアはでっかい子宮だと思う。

~牧野佳奈子の人生日記~

プランテーションとマーガリン

2008-03-15 | ボルネオの旅(-2009年)
日本を飛び立って約7時間半後、飛行機がマレー半島に近づいてきた頃にその光景は広がる。
目下、一面のプランテーション。

まるで大仏様の頭のように均一な緑色のボコボコか、もしくはこれからそうなろうとしている、まだ露な剥き出しの大地。

プランテーションには2種類ある。
「天然ゴム」か「油ヤシ」。
いずれも濃い緑が生い茂る豊かな森のように見えるけれど、実際にはそれらの樹脂や果実を大量生産する巨大農園だ。元々あった森林を破壊し、例えば50年前日本が山に杉や檜ばかりを植えたように、マレーシアではゴムと油ヤシが広大な大地を埋め尽くしている。

出迎えてくれたマレーシア大学大学院の友達、アンソニー君が言った。

「この辺りは元々森林だったんだけど、今ではこの有り様だよ。空港にまでプランテーションがあるんだ。おかげでマレーシア本島に原生林はほとんど残ってない。熱帯雨林に棲む貴重な動植物や絶滅危惧種が、どんどん減っているんだ。」


7年前、大学生の頃に熱帯雨林の研究のためこの地を訪れた。
熱帯雨林、つまり「森」という場所には、とにかくいろんな種類の樹や草や虫や動物が棲んでいる。そこに足を踏み入れると、驚くほどにうるさい虫の声。サワサワと葉が重なり響く風の音。そのどれひとつもが同じではない。一体どれほどの種類の生物が潜んでいるんだろうと、背筋がゾクッとさえする。

アンソニー君は続けた。

「ゴムと油ヤシの農園は安全だよ。本当に安全だ。だけど製造に関しては分からない。恐らく・・、特にパーム油の製造は環境に相当な影響を与えていると思う。なぜなら油ヤシは大量の化学肥料を必要とするからね。」

森から有用な木材を取り出し、木材供給の機能を失った森を一気にプランテーションに変える。その機能も失った土地が、最後に住宅地に変えられるのだという。

「経済的には、森を農園に変えれば利益が上がる。森はお金に姿を変えることで僕たちの経済を支えていて、そこには大きな価値があるんだ。だけど僕たちは、本来の森がもつ生物学的な価値や多様性の価値にも目を向けなきゃいけない。そこにはたくさんの動物や希少生物、更にはまだ人間に発見されていない生物だっているんだよ。もし僕らがお金の価値しか考えなかったら、それらは全部なくなってしまうんだ。僕らはお金を得ることはできる、でもお金にならない価値は、失えば永遠に取り返せないんだ。」


天然ゴムと油ヤシに関して、マレーシアは世界最大の生産国。
特に日本はそのほとんどをマレーシアから輸入している。
用途は、8割がマーガリン、マヨネーズ、調理用油など。(http://www.jccu.coop/eco/siryo/eco_060531_01.htmより)

全てはギブ&テイクで成り立っている。私たちが毎日お金を出して買い物をするように、日本国も多くのものや資源を他国から輸入し、そして資源を売る側の国々は、常に何かを犠牲にすることで自国の経済を成り立たせている。その代償が、いつか買う側にも訪れるかもしれないことを伏せて。


インターネットの情報によれば、つい3~4年前から「持続可能なパーム油生産」のための組織間での合意がされているらしい。それがどこまで効力をもって機能しているのか私は知らないが、どうか、せめて今在るプランテーションが環境にこれ以上の負荷をかけることなく管理されていくことを望むしかない。

「途上国が、森林の価値をもっと認識すべきなんだ。例えば希少生物が生息する地域は開発を避けるとか、保護と開発をどうバランスつけていくかを真剣に考えるべきだ。先進国は、金を出す代わりに欲しいものを提供しろと言うだけだろ?誰がそれ以上のことを気にかける?・・・そうだね、確かに買う側が商品の背景を知って、場合によっては買うことを検討することも大切かもしれないけどね。」


日本のニュースに上がることはほとんどない、未だに続くプランテーションの拡大。
そのやり方が、国際的にも草の根的にも、とにかくしっかりと監視されていってほしい。

売る側がやるべきことと、買う側がやるべきこと。
とりあえず明日スーパーに行ったら、マーガリンコーナーの前で立ち止まって商品を見比べてみようと思う。

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