2度目のフィリピンは、やはり混乱に満ちている。
あちこちにゴミが散らかった道路、真っ黒なススを吐き出すジプニー、渋滞、青く濁ったゴミだらけの川、新聞や水を売り歩く子ども達・・・。
そういえば去年も、この光景に慣れるまで3週間ほどかかったっけ。
そして3週間を経て私は、確かにこの国を好きだと思えるようになった。
ということは、結局私は1年間を経て振り出しに戻り、再び “異国に来た抵抗感” を味わっているだけなのかもしれない。どの国に行ったって始めに味わう、ちょっとした “におい“ の違いを。
それにしたって・・・。
・・・いや、やっぱりそれは違う。
きっと私は前回、逆に3週間を経て感覚がマヒしてしまっていたに違いない。
この国のいいところを見ようと努力もしたし、ここで得た友達に感銘も受けた。
結果的に私はこの国を好きだと思い込み、いろんなことを考え、思いを馳せ、帰国した後もずっとここに戻って来たいような “気” がしていただけなんだ。
だとすれば、今回感じている “抵抗感” は本物なんだろうか。
私は明らかに、この国に対して「嫌気」が差している。
・・・そう言い切っていいだろうか。
「嫌気」の原因はいくつか思い当たる。
まず何より街に溢れ返るゴミ。そしてそこから漂う生ゴミ臭い悪臭。
そして同じく溢れ返るおびただしい人の数。
どこから湧き出るのか疑いたくなるほどの人間が、東京のロボットチックなそれとは違って、実に生々しく、暑苦しく覆い被さってくる。
“私ゃこの国とその国民を軽蔑するよ・・・。”
なんとなく、そんな言葉が沸き上がった。
街がこれほど汚いのは、政府とそれを支持している国民の根本的な価値観が影響しているに違いない。たとえゴミが落ちていようと、フィリピン人は基本的に自分のこと以外は気にしないんだ、きっと・・・。
そして更にそうやって街行く人を眺めていると、誰もがそうした類いのモラルに欠ける人種に思えて余計に腹が立ってくるのだった。
だけど・・・と、まだ真新しいガイドブックを開く。
『フィリピンがアメリカから独立したのは1946年。
その後独裁政権が続いて、ようやく民主的な政権が誕生したのが1986年。』
つまり、今の国家が成立してからまだ20年余りしか経っていない “赤ちゃん” 国じゃないか。
・・・・・そりゃ仕方ないか、な。
ふとタクシー運転手が話していたことを思い出した。
「フィリピンの政府はひどいよ。見てごらんよ、道路脇に立っている電灯。何百か何千か建てたあとに、予算がないからって電球は入ってないんだ。こんなバカバカしい金の使い方があるか?」
友人が話していたことも思い出した。
「何より深刻な問題は政治の汚職だよ。テレビや新聞のジャーナリストだって、政府に都合の悪いことを指摘しようもんなら殺されるんだ。実際そういった事件が数年前に起きているからね。だから誰も政府に歯向かえないんだよ。」
そして最近知り合った大学の先生は、こんなことを話していた。
「フィリピン人は本当はあまり英語を話したがらないのよ。特に活動家と呼ばれる人たちはね、アメリカへの強い反発があるの。親米家と反米家にきっぱり分かれてるのよ。」
スペインに長く植民地化された後アメリカに占領された、複雑な歴史を持つフィリピン。
ようやく民主国家が成立して20年、今もまだ右往左往しながら、けれど激しい世界経済の波に立ち向かわなければいけない。
その焦りのせいなのか、フィリピン政府はここ数年、国民に外国での出稼ぎを奨励し外貨収入を勧めている。
「医者でさえ、国内で働くより海外で出稼ぎをした方が収入がいいんです。」
マニラで働く日本人のユキさんが言った。
「海外では医者の免許は使えないから、看護士の資格を取り直して出稼ぎに出る。そして実際には、現地の看護士よりずっと低レベルの雑用をさせられることになるんです。それでも国内で医者をするより稼ぎがいいなんて、皮肉以外の何でもないですよね。」
貴重な人材がみるみる国外に流れ出る中、 一体誰がこの国の秩序を正すことができるんだろう?
・・・本当に “軽蔑” すべきは、一体何なんだろう?
日本に最も近い東南アジアの国・フィリピンの未来が、日本に全く関係ないなんてことは決してない。
この国が少しでも早く大人になるためにはどうすべきなのか―。
放っておきたいけど放ってはおけない、難しい問題なんだと思う。
あちこちにゴミが散らかった道路、真っ黒なススを吐き出すジプニー、渋滞、青く濁ったゴミだらけの川、新聞や水を売り歩く子ども達・・・。
そういえば去年も、この光景に慣れるまで3週間ほどかかったっけ。
そして3週間を経て私は、確かにこの国を好きだと思えるようになった。
ということは、結局私は1年間を経て振り出しに戻り、再び “異国に来た抵抗感” を味わっているだけなのかもしれない。どの国に行ったって始めに味わう、ちょっとした “におい“ の違いを。
それにしたって・・・。
・・・いや、やっぱりそれは違う。
きっと私は前回、逆に3週間を経て感覚がマヒしてしまっていたに違いない。
この国のいいところを見ようと努力もしたし、ここで得た友達に感銘も受けた。
結果的に私はこの国を好きだと思い込み、いろんなことを考え、思いを馳せ、帰国した後もずっとここに戻って来たいような “気” がしていただけなんだ。
だとすれば、今回感じている “抵抗感” は本物なんだろうか。
私は明らかに、この国に対して「嫌気」が差している。
・・・そう言い切っていいだろうか。
「嫌気」の原因はいくつか思い当たる。
まず何より街に溢れ返るゴミ。そしてそこから漂う生ゴミ臭い悪臭。
そして同じく溢れ返るおびただしい人の数。
どこから湧き出るのか疑いたくなるほどの人間が、東京のロボットチックなそれとは違って、実に生々しく、暑苦しく覆い被さってくる。
“私ゃこの国とその国民を軽蔑するよ・・・。”
なんとなく、そんな言葉が沸き上がった。
街がこれほど汚いのは、政府とそれを支持している国民の根本的な価値観が影響しているに違いない。たとえゴミが落ちていようと、フィリピン人は基本的に自分のこと以外は気にしないんだ、きっと・・・。
そして更にそうやって街行く人を眺めていると、誰もがそうした類いのモラルに欠ける人種に思えて余計に腹が立ってくるのだった。
だけど・・・と、まだ真新しいガイドブックを開く。
『フィリピンがアメリカから独立したのは1946年。
その後独裁政権が続いて、ようやく民主的な政権が誕生したのが1986年。』
つまり、今の国家が成立してからまだ20年余りしか経っていない “赤ちゃん” 国じゃないか。
・・・・・そりゃ仕方ないか、な。
ふとタクシー運転手が話していたことを思い出した。
「フィリピンの政府はひどいよ。見てごらんよ、道路脇に立っている電灯。何百か何千か建てたあとに、予算がないからって電球は入ってないんだ。こんなバカバカしい金の使い方があるか?」
友人が話していたことも思い出した。
「何より深刻な問題は政治の汚職だよ。テレビや新聞のジャーナリストだって、政府に都合の悪いことを指摘しようもんなら殺されるんだ。実際そういった事件が数年前に起きているからね。だから誰も政府に歯向かえないんだよ。」
そして最近知り合った大学の先生は、こんなことを話していた。
「フィリピン人は本当はあまり英語を話したがらないのよ。特に活動家と呼ばれる人たちはね、アメリカへの強い反発があるの。親米家と反米家にきっぱり分かれてるのよ。」
スペインに長く植民地化された後アメリカに占領された、複雑な歴史を持つフィリピン。
ようやく民主国家が成立して20年、今もまだ右往左往しながら、けれど激しい世界経済の波に立ち向かわなければいけない。
その焦りのせいなのか、フィリピン政府はここ数年、国民に外国での出稼ぎを奨励し外貨収入を勧めている。
「医者でさえ、国内で働くより海外で出稼ぎをした方が収入がいいんです。」
マニラで働く日本人のユキさんが言った。
「海外では医者の免許は使えないから、看護士の資格を取り直して出稼ぎに出る。そして実際には、現地の看護士よりずっと低レベルの雑用をさせられることになるんです。それでも国内で医者をするより稼ぎがいいなんて、皮肉以外の何でもないですよね。」
貴重な人材がみるみる国外に流れ出る中、 一体誰がこの国の秩序を正すことができるんだろう?
・・・本当に “軽蔑” すべきは、一体何なんだろう?
日本に最も近い東南アジアの国・フィリピンの未来が、日本に全く関係ないなんてことは決してない。
この国が少しでも早く大人になるためにはどうすべきなのか―。
放っておきたいけど放ってはおけない、難しい問題なんだと思う。
それはアメリカとわが祖国日本です。UNDER THE TABLEを思いのままにやり続けた両国でしょう。20数年もマルコス政権を金で権力を振るわせた両国にあると思う。第二次大戦前は紛れもなく裕福な国だったんだから。日本なんかよりずっと発展していたんだ。蔑視する前に反省したほうがいいよ。そんな事いっているうちにわが祖国はアジアの国々の発展を横目でみながら寂しく廃っていくだけだよ。ゴミの中で暮らす力強さなんて今の日本には微塵も無い。私はフィリピンに行くごとにエネルギーを感じてますけどね。(もう20年見続けてます)
ちなみに老後はフィリピンのある島でのんびり暮らす計画でいます。あまり発展しないで今のままでいてほしい。今、日本で暮らしていて、ほしい物は何でもあるけど唯一「希望」だけが無い。こんな国よりいいと思いますよ。
ただ、今現在のフィリピンの人たちが、発展を望んでいないとは思えません。もちろん「発展」の仕方が問題ですが、今のような一極集中=ほんの一部の地域(地区)のみの発展の仕方はおかしい。社会の根底にいる多くの人たちの生活水準を上げることは、国としての絶対的な責任です。
そこを日本やアメリカ政府が「反省」だけじゃなく「支援」するべきだし、フィリピン政府も汚職ばっかりしてないでちゃんと身を正すべきだし、私たち一般の日本人だってきちんと理解をするべきです。
日本にプラス面とマイナス面があるように、フィリピンにもプラスとマイナスがあります。その両面を見据えた上で、マイナス面を改善していくことがその国に住む者の課題なのだと思うのです。
老後にフィリピンに移住される際には、今の日本とは違う「発展」もしくは少なからずの「底上げ」にご尽力されることを期待いたします。