遊びをせんとや

人生総決算!のつもりで過去・現在のことなどを書きます
といっても肩肘はらずに 楽しく面白く書きたいと思います

伊庭心猿~心猿の俳句から・・・

2024年04月10日 | 人物
 我が部屋の窗から見える桜がほぼ満開~前景・背景共に目障りだが・・・

昨日 心猿の「絵入り東京ごよみ」の中の「風塵抄」を紹介した
面白く読んだので 今日は彼の俳句を紹介する
句はすべて「心猿句抄やかなぐさ」に拠った
やかなぐさ」とは聞きなれない言葉 心猿自身が「あとがき」でこう書く
(以下 要約記述)

~私は「や」「かな」の切字を入れないと句を作れない
そういう自分を憐れんで題名を名付けた
私の最初の雅号は 師・富田木歩が名付けてくれた宇田川芥子(けし)
現在は 申年生まれであることから 猪場心猿と改めた~

心猿の作品はどこか飄逸な面がある 「来訪者のモデル」もそうだった
俳句にもそんな風味や言葉の面白い組み合わせが感じられる
それでは 数多い句の中から私が惹かれた15余句を紹介

・雛の匣しかと抱へて川蒸汽 ・・・心猿には妹がいたようだ(後述) 
・眞間川のぬるむも待たで果てにけり ・・・愛犬の死を悼んだ句
・青すだれせめてかゝげん仮の宿 ・・・心猿は一時期放浪の時代を過ごした
・病む妹の寢顏うつくし走馬灯
・香水やすこし醉ひたる京言葉

・かつしかは都の果てやはたゝ神 ・・・はたた神はカミナリのこと
・蚊ばしらや吉原ちかき路地住ひ ・・・どこに住んでいた時だろう?
・色町のあまりひそかや金魚賣 ・・・同上
・コスモスに朝餉あかるき二人かな ・・・妻か妹か?
・名月や妹が髮とく竹の縁 ・・・竹の縁側は旅の宿だろうか?

・あてもなく驛に出にけり天の川 ・・・ただ今 放浪中? 天の川がいい
宿の膳はやすぎて秋の暑さかな ・・・中山道より伊勢路への旅の途中の句
萩桔梗をんなばかりの湯治かな ・・・同上
・遠く來て山落葉踏む一人かな ・・・以下も漂泊中の句だろう
しぐるゝや十年おなじ鳥羽の宿
新築の遊女屋みゆる冬田かな   ~句紹介終わり


さて 心猿に妹があることは 佐藤春夫「わが妹の記」を読んで知った
といっても長編小説なので まだ摘まみ読み状態
これは猪場心猿が主人公の小説で 彼は江原邁(すすむ)の名で登場する
あらすじをおおまかに書くと以下のとおり

~江原は和歌山で「南紀芸術」を作った
終刊後 江原は 行方知らずの妹を探して行きあたりばったりの旅を続ける
父母の話・無理心中の女・・偏奇館先生(荷風)・妻との出会・妹との出会い等・・・を重ねて東京へ戻る~

「わが妹の記」は1935/S10年に九州新聞に連載された(刊行は1941/S16年)
ここに江原こと心猿が荷風と出会っているが これは小説だからだろう
心猿こと木場が白井を通じて荷風と初めて出会ったのは1938/S13年のこと
その後
1941/S16年 荷風が贋作を知り2人の出入り禁止
1946/S21年 荷風「来訪者」発表
1947/S22年 木場貞「来訪者のモデル」を雑誌「真間」に発表 
と続く

心猿をモデルに ほぼ同時期に佐藤春夫と荷風が小説を出したのはなぜか?
贋作や「四畳半・・・」の話は多いが その疑問に答えてくれる情報は未だ無い!

今日はここまで それでは明日またお会いしましょう
[Rosey]